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真の女子会開催なわけで ~前祭~

 <8月24日 AM10:30>


 平和卓のククス。全国区のファミレスである。その扉の前で向かい合うのは、珠理亜と楓凛。


 別に一緒に来たわけではない。たまたま出会っただけである。


「こんにちは、えっと、早いんだね」


 先に声を掛けたのは楓凛。


「え、ええ。あなたも早いのですね」


 珠理亜が警戒した感じで答え、話が続けることが出来なかった2人が見つめ合う。


 楓凛の方は色々聞きたいが滲み出ているが、珠理亜はお手伝いさん以外で、年上の女性と接することがなかった為、何を話していいか分からず戸惑っている。


「あっ」


 そんな硬直状態の2人の間に入って来て、声を出したのは來実である。

 下を向いて歩いてきたのか、直前まで気付かなかったみたいで、いつの間にか2人に挟まれている状況に、驚いた表情を見せる。


 來実は慌てて何かを話そうとするが、チラッと楓凛を見て、罰の悪そうな顔をして黙ってしまう。


 女性が3人集まれば、などと言う言葉を覆すこの沈黙。


「あれ? なんで3人とも来てるんです?」


 続け様にやって来た彩葉が、3人に声を掛ける。なんとなく円を作ってしまい、向かい合う格好になる4人。


 このまま黙ったら、心春が来るまで沈黙だと悟った彩葉。


「私は人を待たせるのが嫌いなんで、早く来ましたけど、先輩方もそうなんです?」


「わ、わたくしも、そ、そうですわ」


 彩葉が振った話題に、一早く食い付いたのは珠理亜。若干声が上ずっているのは気のせいなはず。


「私はなんとなくかなぁ。遅れちゃいけないから、早めに出ようと思って出たら、早く着いちゃった」


 凄いことを言っているようで、当たり前のことを言う楓凛。


「お、落ち着かなかった……」


 そうなんだろうなって、誰もが納得出来るほど、ソワソワしている來実。


「そうだ、こはりゅには連絡したんで、11時には来ると思います。


 ここに立っておくのも迷惑なんで、店に入って待ちますか? あ、でもこはりゅ1人で店内歩かせるのも……そうだ、あっちにいって……そう! 先に自己紹介しましょう。

 こはりゅなら多分そう言います。前もそうでしたし」


 彩葉に先導され入り口から離れたスペースで、自己紹介が始まる。なんとなく言い出し彩葉に視線が集まり順番が決まってしまう。


「私は、多生高校(たしょうこうこう)1年! 茶畑(ちゃばたけ) 彩葉(いろは)ですっ! はい、雨宮先輩!」


 彩葉が元気よく自己紹介して指差し指名したのは、珠理亜。慌てるも咳払いを一つして自己紹介を始める。


「わたくしは、多生高校、2年、雨宮(あめみや) 珠理亜(じゅりあ)ですわ。では、來実さん」


「わ、私かっ!? ああ、芦刈(あしかり) 來実(くるみ)だ、です。2年です」


 珠理亜に指名され、慌てふためく來実が自己紹介をする。


 いい流れがきたここで、沈黙が訪れる。


「……この流れで振ってくれないんだ」


 ちょっと拗ねた感じで來実を見る楓凛。


「え、あ、ごめん……なさい。お、お姉さんどうぞ」


「冗談だよ、怒ってないから。私は桜花(おうか)大学、環境・エネルギー工学科1年の院瀬見(いせみ) 楓凛(かりん)です。よろしくね」


 ふふふと笑いながら自己紹介する楓凛にホッとする來実をおいて、食いつくのは珠理亜。


「桜花大学ですの!? まだ創立して間もないですが、アンドロイド工学において日本の最先端をいっている学校だと伺っていますわ!

 わたくしも、進路希望の一つとして見据えている学校ですわ」


「おおっ! こんなところに後輩候補が!」


「そんなに凄い大学なんですか?」


 盛り上がる2人に彩葉が尋ねると、なぜか珠理亜の方が熱く説明し始める。


「創立したばかりなこともあり、設備面でも凄いのはもちろんですのよ。でも注目すべきはアンドロイド工学における分野の細分化。


 アンドロイドの人格形成を考えた上でのプログラミングを組む理工学や、心的ストレスや思考パターンを学ぶ心理学、そしてわたくしが目指す工学部のロボット工学、開発・デザイン科!

 

 この学部ただ作って、開発するだけではないのが凄いのですわよ! 世に生まれたアンドロイドが生涯を全うする為のサポートを目指す、そんな志を持った学びが出来るのですわ!


 これこそ──」


「あー分かんないっ! とにかく凄いってことですね。


 それにしても、へぇ~楓凛さんがねぇー。へぇー、へぇー、頭よくてスタイルもいいときますかぁ。思春期の男の子にはたまんない人物というわけですね。

 ほうほう、なるほど」


 珠理亜の説明を遮り、興味深く楓凛を見る彩葉。その視線に楓凛は身を引き警戒する。


「彩葉ちゃん……頭もそうだけど、スタイルとか関係ないと思うんだけど……」


「いやいや、関係ありますって。私に無いもの沢山持ってるとか、もう嫉妬しか湧かないですもの。ねぇー先輩方?」


 ニシシと笑う彩葉の問いに、珠理亜と來実も頷き、更に警戒を強める楓凛。

 お店の横でワイワイ騒ぐ4人の耳に、聞き慣れた舌足らずが響く。


「4人しょろって、お店の前で何を騒いでるんでしゅ? 迷惑でしゅよ」


 声の主に皆が注目すると、ジャンパースカートにカンカン帽を被った幼女、心春が呆れた顔で4人を見ている。


「わたちは、あちゅくないから平気でしゅけど、4人は炎天下で騒いでたら倒れましゅよ。とっとと中入るでしゅ。


 で、じょち会とやら始めて、すぐ終わらせるんでしゅ!」


 めんどくさそうに扉をくいくいっと指差す心春に従い、4人は店内へと入るのだった。

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