表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は最新でお前はかつての俺なわけで ~心春な日々~  作者: 功野 涼し
8月 ~夏休み~

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/165

妹になるわけで

 我が家のリビングに集まり4人で自己紹介をする。


「予定では約1ヶ月間、うちに滞在することになった夕華ちゃん。トラ、一応言っておくけど夕華ちゃんに変なことしたらダメよ」


 優しく言ってはいるが、母さんの少し殺気のこもった注意に、激しく頷くトラ。すまない、昔の俺のせいで苦労かけるな……。


「夕華です。短い間ですが、よろしくお願いします。お母様、トリャさま」


 夕華が母さんとトラに挨拶を終え、俺の方へ寄ってくると、手を組み祈りのポーズをとる。


 この子、これ好きだな。


「こはりゅお姉ちゃん、よろしくお願いします」


「う、うん、よろちくでしゅ」


 夕華が微笑む。


 一般的なアンドロイドより表情を豊かにと、全身の運動機能より、表情筋と表現に力を入れたと説明を受けたが、微笑んでいる表情は、人と遜色ない。技術の進歩を感じてしまう。


 なぜにお姉ちゃんと呼ばれているかというと、少し前に皆の呼び方を決めよう、そう話し合ったときに、俺たちを見てトラが何気なく言った「姉妹みたい」って言葉に、夕華が反応し「お姉ちゃん」と呼ばせたら嬉しそうに見えたので、


「こはりゅお姉ちゃん」


 と呼ぶようになったわけである。


「おにいたん」と呼ばれる夢は潰えたが、ここにきてまさかの「お姉ちゃん」呼び!


 なんか照れるけど、これはこれで良いかもしれないぞ! ちょっぴりテンション上がったっ!


「夕華、困ったことがあったら、お、お姉ちゃんに任せるでしゅ」


「はい」


 何を任せてくれ、なのかは知らないが胸を張る俺に、素直な返事をしてくれる夕華。


 むむむ、いいなやっぱり! 予想外の形で妹ができたぞ。

 嬉しさが滲み出ているのか、笑みが溢れる俺の顔を見て、母さんが微笑んでいる。

 そんな俺と母さんの顔を見比べ夕華は不思議そうに訪ねる。


「お母様とこはりゅお姉ちゃんは、なんで嬉しそうなのですか?」


「心春ちゃん、妹ができて嬉しそうだなって」

「妹ができたからでしゅ」


 夕華の問いに2人で同時に答えると、それに驚いたのか少しだけ目を大きく開く夕華。表現的に少し分かりにくいのか?


「夕華が来てくれて嬉ちい! 家じょく()になれて嬉しいんでしゅよ」


「かじょく……(変換)……家族」


 俺のその意図は伝わったのか、口角を上げ笑みを見せると頷く。しばらく向かい合って、微笑み合う俺と夕華。


「ところで夕華。さっき、わたちの言葉を変換ちたでしゅよね?」


「はい、こはりゅお姉ちゃんに対応する為、私には『舌足らずキャンセラー』が搭載されています」


「翻訳でなく、キャンセリャーって……」


 俺の舌足らずを変換し会話をスムーズに行う為のもの、つまり俺専用の翻訳機を搭載しているということなのか? 健造さんの拘りを感じる。


「って、『こはりゅ』はなんでキャンシェルしないでしゅ?」


「こはりゅお姉ちゃんから、初めてもらった音だからです」


 そう言って夕華は微笑む。


「初めてもらった音」その表現は夕華の性格をプログラムした人のによるもので、夕華の個性ではない。


 って前の俺なら言っていたけど、制作者の手を離れた瞬間から、それはもう一つの人格であり、個性になるんじゃなかろうかと。今はそう思う。


「ありがとうでしゅ。夕華、改めてよろしくでしゅ」


「はい、よろしくお願いします。こはりゅお姉ちゃん」


 そんな俺らを指を咥えてジーっと見るトラ。


「なんでしゅ? ジロジロ見て」


「心春は、お姉ちゃんとか呼ばれて、いいなあ~って」


 本当に羨ましいって顔で俺を見る。隣にいる母さんの冷たい視線を気にせず俺を見詰める。


 こいつは……


「トリャ、お前は何て呼ばれたいんでしゅか? 自分の考えは自分で言えでしゅ」


「えっ、えっとその……お兄ちゃんって」


 恥ずかしそうに言うトラ。なんかその姿が気持ち悪いけど、その気持ちはよく分かる。


「夕華、トリャをお兄ちゃんと呼んでやってくれましぇんか?」


「はい、分かりました。では、トリャお兄ちゃんと呼ばせていただきます」


 夕華のその言葉に頬赤らめ、嬉しそうに悶えるトラ。


 うむぅ、元我が体ながら気持ち悪い。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ