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第4話 昔の話 一
木の実を取りに森に向かっていたナオは、大木の木陰に誰か居るのを見つけた。
身体を幹に預け、ただ何処か遠くを見続ける青年。
「お兄さんは何をしているの?」
興味を抱いたナオは、青年に声を掛けた。
「……」
青年はナオを一瞥し、また空へと視線を戻した。
辺境にある山奥の村で育ち、村から出た事のないナオにとって、彼は初めて見た外の人間だった。
麦穂のような黄金の髪。
炎のような紅の瞳。
傍らに立て掛けられている、鞘に納められた剣は、緩やかな弧を描いていた。
「疲れているの?」
「……どうだろな」
疲れ果て、心が擦り切れる寸前だと、簡単に解かる声だった。
それがナオが初めて聞いた、勇者ラルフの声だった。