第3話 死者の遺跡 一
ナオが勇者の私部隊から追放されて二か月目。
彼女はロバートの誘いを受け、彼の私部隊に臨時メンバーとして加わり、三つのクエストをこなした。
そして四つ目のとなるクエストで、ナオ達は今、エバンの町から離れた場所に在る、古代遺跡の中にいた。
* * *
「眠りの力よ 我が敵を 夢の腕を以て戒めよ」
ナオの放った魔法を受けたスケルトン・ソルジャー達の動きが止まる。
「今だ!」
「「おう!」」
ロバートの掛け声と共に、彼の仲間達へと向かって行った。
……。
「皆さん怪我は無いですか?」
ナオの問いかけに、彼女の仲間達は首を横に振った。
「大丈夫だ」
「こんなイージーモードで怪我を負ったら、それこそ駆け出し以下っしょ」
倒されたスケルトン・ソルジャーはその姿を消し、代わりに現れた魔石がフロアの至る所に転がっていた。
「しかしナオさんの魔法は凄いですね。ここまで強力なデバフは見たことが無いです。その『眠りの魔法』って特殊系統でしょうか?」
「流石は勇者様と一緒に、っと。……ゴメン」
弓戦士の少女が失言に気付き、慌ててナオに謝罪の言葉を掛けた。
「ううん、大丈夫だよ。ありがとう」
首を振ったナオの動きに合わせて、彼女の長い黒髪も左右に揺れた。
「私も大分吹っ切れたから」
「そっか」
「ナオさん。僕達の私部隊の正式なメンバーになりませんか?」
「えっ?」
魔法使いの少年からの申し出。
「おっ、いいじゃんか。ナオさんの補助魔法が加われば、俺達『嵐の誓い』は無敵になるぜ!」
盗賊の青年が嬉しそうに声を上げる。
ナオは吃驚して周囲をキョロキョロと見渡し、最後に視線が合ったロバートは、コクリと頷いた。
「まあ正直リーダーが連れて来た時は『大丈夫なの?』と思ったわよ。町の入口で幽霊みたいに立っていたのは有名だし、湿っぽい『夕暮れの笛』は毎日丘の上から聞こえて来たし。振られてメソメソしている奴なんて入れたら、ウチらの士気はガタ落ちになるからね」
「あの~、メソメソはしてなかったですよ?」
弓戦士の忌憚のない言葉に、ナオは控えめに抗議の声を上げた。