非通知
予備校へと向かっていた、俺のスマホが鳴った。
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―もしもし?
―あのね。
―今から行くから。
―そこにいて。
「はい?」
ガチャ。
非通知電話に出たらこれだよ。
本当に最近の非通知ってやつはさあ…。
あ、またかかってきた。
急いでるのになあ。
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―もしもし?
―今から行くって言ってるじゃないの。
―待ってなさいよ。
「はい?」
ガチャ。
何なんだ、この非通知。
もうでねえぞ。
俺は予備校へと急ぐ。
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でねえぞ?
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しつこいな!!
「もしもし?」
―あと一歩だったのに。
ぐあわぁああああっしゃぁぁぁああああんっ!!!!!!
目の前に、ビルからはがれた看板が、落ちてきた。
飛び散る、看板の部品。
周りから、悲鳴が聞こえる、気がする。
「…へ?ぇッ…?????」
腰が、腰が抜けたっ…。
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「も、もしもし…。」
―待っててって、いったじゃないの。
―渡せなかったわ。
「な、何を…?」
―使ってしまったもの。
「何、を…?」
―次からは、もう出たらだめだよ。
ガチャ。
なんだったんだ?
いったい、なんなんだよぉおおおおお!!!!
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また、非通知だ。
俺は、出るべきなのか、それとも。
俺は立ち止まらず、着信音を無視して予備校へと、向かった。
もうじき、受講時間だ。急がないと。
点滅し始める前に、予備校前の信号を渡り終える。
俺の後ろで、勢いよく車が交差点に入った。
・・・最近は乱暴な運転するやつ、多いから気をつけないとな。
俺は予備校の自動ドアの前に立ち、中に入った。
今日こそ模試の結果を残さねば。
―残念。