そうだ、別行動にしよう。
「それでこれから俺たちは何をすればいいんだ? この世界で最強になるにしてあまりにも漠然としすぎてて方法が俺にはわからんが…………」
「そんなの簡単よ。冒険者になればいいの。そこで最強になれば誰も文句は言わないわ」
冒険者ってなんだよ。冒険すればいいのか? それの何が最強なんだ?
「その顔は何も理解できてない顔ね。全く、冒険者って言うのは魔物を倒してお金を稼ぐ人たちのことよ。厳密には魔物を倒す以外にもいろいろやってるはずだけど」
そんなに俺はわかりやすい顔をしていたのだろうか? 無意識だったぞ。もしかして癖とかになってないよな? 昔から陰で笑われてたとかないよな?
「魔物を倒して金が稼げるとかさすがは異世界だな。よしっ、その冒険者ってのやろう。頭使わなくてよさそうだしな」
「何も考えずに冒険者なんてやったらすぐに死ぬわと言いたいところだけど、私がついてるもの」
「女神様を連れて冒険者なんてとんでもないチートだな。それなら俺は戦闘すらしないでいいじゃないか。もはや俺いらなくね?」
うわっ、マジで俺いらないな。自分で言ってて悲しくなってきたぞ。どうしよう、フーリにいいとこ全部取られそう…………いっそこの女神様ここにおいてくか。俺の輝かしいセカンドライフがフーリによって残念なモブライフに大変身してしまう。
「やっぱりいいや。ここからは別行動にしよう。そのほうがお互いきっといいことあるから」
俺の言葉にフーリは信じられないものを見るような表情を浮かべる。
「え? ちょっと、今の会話の流れからどうしたらその結論に至るわけ? 馬鹿なだけじゃなくて思考回路もぶっ飛んでるの?」
「馬鹿でもないし、思考回路もぶっ飛んでない。ただ冷静に判断してそっちの方が俺たち二人のためになるって判断しただけだ。ほら、考えてみろ。俺とフーリが冒険者になるとするだろ。どっちが目立つと思う?」
「それは…………もちろん私よ。女神なんだから」
「だろ? じゃあ、ここでお別れだ」
余計にフーリの表情が変わる。
これは俺にもわかるぞ、確実にお前マジかって思ってるな。うん、マジなんです。
「女神の私をこんなところで一人にするなんてありえないわ。大体、私のほうが目立つからって、別行動にする意味ないでしょ」
「じゃあ、逆の立場になって考えてくれ。せっかく来た異世界でなんで俺はフーリの引き立て役をしなければならないんだ? ほら? 嫌だろそんなの。わかってくれ、俺は強く生きていくから」
「勝手に決めないでよ。いいから、早く街を探しましょう。ここで話してても無意味よ」
まあ、街につくくらいまでなら一緒にいてもいいか。道中でイベントなんて起こらないだろうし。
「わかったよ。街につくまでだぞ。俺は楽しいセカンドライフを送りたいんだからな」
特に返答は聞かずに歩き出す。
幸い、道の上にいるのでよほど謎の場所にでもいない限り街へと通じているだろう。
歩き出して数十分、後ろをついてきていたフーリがごね始めた。
「ちょっと遠すぎない? 私疲れたわ。休憩しましょうよ」
「そうだな、フーリは休憩しててくれ。俺は先に行くから。じゃあな、また会うときがあったらよろしく頼む」
構わずに歩き出そうとした俺の服の裾が掴まれた。
「いま、本気で置いていこうとしなかった? 冗談よね? 私を置いていくなんてそんなことしないわよね?」
「なんでだ? 置いていくに決まってるだろ。フーリを待つ理由がないしな」
「この薄情者!! ひどいわ。私だって女神なのよ。一緒にいたらきっと役に立つわ。連れていった方がお得よ」
うーん、役に立つというより、俺の活躍の場を奪う未来しか見えないんだよな。お互いに馬鹿だから、頭を使うことに関しては五分だろうが、戦闘となるとなぁ…………自分で戦闘系女神様とか言ってたし、絶対強いんだろうな。
「俺よりも目立たないって約束するんなら一緒に行動してもいいぞ」
「そんな約束できるわけないでしょ。故意じゃないにしても目立つことなんて無限にあるわ」
「まあ、そうか。約束はできないか…………わかった。努力するだけで我慢してやる。俺もそこまで鬼じゃないからな」
「本当? それくらいなら私にもできるわ。余裕よ、できるだけ目立たないようにするわ。」
話もまとまったことだし、歩き出そうとするとまたフーリに服の裾をつかまれた。
「待って、話は終わったけど私は全然休憩できてない。今からじゃ、すぐにへたばるわよ」
「完全に忘れてた、しょうがないな。それじゃあ、ちょっとだけ休憩していくか」
ひとまず、道のわきに生えている木の木陰に腰を下ろす。
フーリと一緒に行動するとなると、対策を立てておく必要があるな。これから怒るであろうイベントを脳内シュミレーションしておこう。
まずは、冒険者だな…………やばい、魔物と戦うとか言ってたけど、その魔物すら想像できない。魔物ってどんなのだ? お化けか、それとも恐竜的なやつ? やっぱりシュミレーションやめよ。俺の頭じゃ無理だわ。