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なんでここに?

 やっと視界が戻ってきた。

 まだ目が微妙に光にやられているが、ひとまず周囲の状況を確認する。360度どこを見ても木ばっかりだ。ということは、ここは森なのか? せめてもの救いは、今俺の立っている場所は整備されている道ということだけだな。

 今、一瞬見覚えのある人影がちらついたけど…………まさか見間違いだよな?


「やっと終わったわ。初めてにしてはスムーズに行けたほうじゃないかしら? この調子でガンガンこなして一人前にならなくちゃ」


 駄目だ、声もしてやがる。あいつどう見てもフーリだよな? なんでついてきてんの? 


「あれ? 何よここ。私、さっきまでは確かにあそこに…………」


 後ろにいる俺のことには気が付いてないみたいだ。声かけたほうがいいかな。さすがに無視していくのも気が引ける。しょうがない、話かけてやるか。


「なんでフーリまでいるんだ? まだここは異世界じゃないのか?」


「へ?」


 俺の声に反応して振り返った。まるでお化けでも見たかのような表情だぞ。俺がいるのはそんなにおかしいことかよ。


「なんでタツトがここに? あれ? さっき確かに転移魔法陣で…………」


「完全に俺のセリフだなそれ」


「いやいや、タツトがまだいるのはおかしいわよ。私が魔法でミスするなんてありえないし」


 うーん、なんでフーリも状況が把握できてないんだよ。めっちゃテンパってるぞ。さっきまでの自信満々な態度はどうしたんだ? 神々しさのかけらすらない。


「俺はちゃんと魔法陣の上に乗ったぞ。それでここに飛ばされたんだ。うん? そういえば、フーリも魔法陣に乗ってなかったか?」


「アアーー―!!! それよ!! タツトが変なこと言うから、私が安全なのを証明するために乗ったんだわ」


 この女神様は、俺を異世界へ飛ばすための魔法陣で自分も飛んできたってわけか。やっぱり馬鹿だ。俺以上だろこんなの。


「よかったな、状況が理解できて。それじゃあな。俺はフーリにもらったスキルで頑張って生きてくから」


「ちょっと待って…………私はどうやって帰ればいいの? あの魔法陣はこっちの世界へ転移する用の物よ。反対は無理」


「え? 帰れないってこと? 女神なのに?」


 俺の言葉にフーリは顔をしかめる。

 どうやら、冗談抜きで帰れないっぽいぞ。


「大体タツトが悪いのよ。あんなこと言わなかったら、今頃私は初仕事を終えた余韻に浸りながらぼぉっとできてたの。私の時間を返して」


「そんな無駄な時間いらないだろ。なんだよぼぉっとするって、さっさと次の仕事に取り掛かれよ」


「いいじゃない。タツトからしたらどうでもいいかもしれないけど、私にとっては重要な時間なの。それよりもどうやって帰ればいいの私。いやよ、折角女神としてまともに働きだしたばかりなのに…………あんまりだわ」


 フーリが馬鹿なのもあるのだろうが、俺にも非はありそうだ。俺がごねていなければフーリは魔法陣に乗ることもなかったことだし。いや、それでも帰る方法がないってなんだよ。


「なにか魔法とか、スキルとかで何とかならないものなのか? 仮にも女神なんだろ?」


「仮には余計よ。私だってそんな便利なもの持ってたらすぐに使って帰ってるわ。ないから困ってるの。私は女神としてのスキルのほとんどが戦闘に振り切ってるの。ここだけの話、あの魔法陣も私じゃなくて裏方に控えてる助手の子の魔法なんだから」


「戦闘系女神様ってことか。強いってのは素直にあこがれるがこの状況では死ぬほどいらんな。誰か助けてくれないのか? フーリが居なくなってることくらいすぐに気が付いてくれるだろ」


 そうだ、我ながらいいことを言ったかもしれない。女神として仕事をしていたんだから、誰かが気が付いてくれうはずだ。


「だといいけど…………私も世界に女神がついていくなんて聞いたことないのよ。たぶん前代未聞の事態よ。帰れても仕事を首になるんじゃ?」


「そんなに厳しいのか神様の世界は。俺なんて何回テストで0点取ったことか。それでも怒られる程度だったぞ」


「すっごくわかるわ。私たちの世界にも学校はあるのよ。毎回、テストの順位が張り出されるたびに絶望したもの。二度とごめんだわ」


「やっぱりフーリも馬鹿だったんだな。なんか同じ匂いがすると思ったんだよ」


 正直、自分よりも下に見ていることは言わない方がいいだろう。


「タツトと一緒にされるのは癪だわ。さすがに私のほうが上の自信があるもの」


「この状況でよくそんなこと言えるな」


 帰れないって困ってるのはどこのどいつだよ。


「タツトも大概だと思うわよ。調子に乗った挙句、逆切れして落ち込んでたところをトラックにひかれるなんて。私でもこんなことはしないわ」


「あれはしょうがないだろ。てかなんでそんなに詳しく知ってるんだよ。プライバシーの侵害だ」


「女神である私にプライバシーなんて物が通用するわけないじゃない。少し考えればわかるでしょ?」


 横暴だ。くそぉ、ずるいぞ。絶対フーリだって馬鹿エピソードの一つや二つはあるはずなんだ。俺ばっかり知られてるなんて不公平にも程がある。


「こんなところでいつまでもグズグズ行ってても仕方ないわ。こうなったら私がタツトの手助けをしてあげるわよ。すぐに助けが来るだろうからそれまでの期間限定だけど」


「女神を連れて、異世界か。一体何をすればいいんだか」


「簡単よ。この世界で最強になればいいの。強ければだれも馬鹿なんて馬鹿にしないわ」


 強ければ馬鹿にされない。なんて天才的な発想だ。そうだ、馬鹿にされないほど強くなればいいんだ。なんかあっさり目標が決まったな。

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