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俺よりも馬鹿かもしれない

「あなた…………起きてたの? もしかしてさっきの独り言も聞いてたり?」


 顔を赤くしながら問いかけてくる。もちろんばっちり聞いているが、素直にそう答えるほど俺も馬鹿じゃない。ここは聞いてなかったふりをするのが得策だ。


「独り言って何のことだ? 俺はちっとも聞いてないぞ。うんうん、俺のことを起こそうとしてたのも知らないしな」


 俺の発言に安心したようで、表情も柔らかいものに戻っている。しっかり見てわかったが、この子とんでもなくかわいいぞ。俺調べ可愛い女の子ランキングのトップすら狙えるかもしれない。


「それならいいの。いきなり、大声出すからびっくりしたじゃない。えーと、確か、英語がどうとか…………ちょっと待って、英語って私の独り言聞いて反応したんでしょ!! それになんで私があなたを起こそうとしたことも知ってるのよ」


 おっと、口を滑らせてしまっていたようだな。俺からしてみればこんなミスは日常茶飯事だ。打開策もきっちり用意してある。


「気のせいじゃないか?」


 何も知らないふりだ。どうだ、俺のキョトンとした表情は。自分の勘違いじゃないかって思ってくるだろ?


「え? 言われてみれば、私の早とちりだったかもしれないわね。ごめんなさい、確信もないのに疑ってしまって…………疑わしきは罰せずよね」


「いいんだよ。別に怒ってないから。そう言えば、さっきの英語間違ってた気がするんだけど、起きろって英語はあんなだったか?」


 そうだよ、何か違和感を覚えると思ったんだ。さてはこの子才能を容姿に全振りしちゃったのか? 人はみな平等だもんな。


「今ので、確信に変わったわ。あなた明らかに聞いてるわよね?」


 なんでだ? 何か証拠でも見つけたのか? いやそんなの無理だ。だってこの子は馬鹿だぞ。一瞬でそんなことわかるはずない。


「気のせいじゃないか?」


 もう一発やっておく。これでまたこの子は騙されるだろう。


「しらばっくれても無駄よ。私の英語が間違ってるっていったわよね。今のは聞き間違いとかじゃないわ。もう、聞いてるなら聞いてたって言いなさいよ。はあ、恥ずかしい…………」


 あ、言ったわ。俺がぼろを出してたからわかったのか。なんだかムキになっていたが普通に考えて俺は何も悪くないよな。もう面倒だしいいか。


「さっきの独り言は一体何だったんだ?」


「直球で聞いてくるわね…………さっきのはあれよ、あなたをどうやって起こしたら私の神々しさが際立つかシュミレーションしてたの」


「それで英語に行きついたのか?」


「悪い? 英語ってかっこいいじゃない。それに頭もよさそうに見えてこない?」


 英語を喋れるってのは俺からしてみれば頭いいかもしれないが、思いっきり間違えてたしな。俺も正しい答えを教えろって言われてもわからないが。


「この状況に全く動じないってあなたはどれほどの経験を積んできたのよ。普通は困惑するって聞いてたけど、それにひどい時はパニックになって話を聞いてくれなかったりとか」


「特にこれと言って自慢できるような経験はしてないぞ? 強いて言うなら、運動会の徒競走は毎回一位だった。ちなみに、紅白リレーの選手にも入ってたな。それがどうかしたのか?」


「呆れたわ。あなたはただの阿保みたいね」


 急に人に阿保とは失礼な奴だ。俺も心の中では馬鹿って言ってたが口には出してないぞ。


「なんでこんなところにいるのかとか、目の前にいる神々しい美少女は誰なのかって疑問に思わないの?」


「ほんとだ、俺はトラックに敷かれたはずじゃ…………どこだよここ」


「そうよ、それが普通の反応なの。私についての感想は? まるで女神様みたいっとかないの?」


 俺が気が付いた時には避けられるような距離じゃなかった。ならば、俺はこの子に助けてもらったのか? それしかありえないな。


「ありがとう。まさか君が命の恩人だとは、心の中で馬鹿とか言って悪かった」


「あなた私のことを馬鹿って言ったわね!? 言っとくけど、私は命の恩人でもなんでもないわよ。見当違いをしているあなたのほうが馬鹿でしょ」


 折角お礼を言ったのになんてやつだ。馬鹿って思ってたのも謝ったのに。


「だから、謝ってるだろ。心の中で馬鹿って言ったこと」


「そんなこと口に出さなくていいのよ。言わなかったら私はあなたに馬鹿って思われてることに気が付かなかったじゃない…………内心馬鹿にされてるのもむかつくわね」


「じゃあ、どうすればよかったんだよ。大体、俺に馬鹿って思われるようなことをしたのが悪いんだろ? そうだ、俺はむしろ被害者だ。全面的に悪いのはお前だ」


 俺の言葉が気に障ったようで、一気に怒気をはらんだ表情へと変化した。


「お前じゃないわよ。私にはフーリって神々しい名前があるの。人間の分際で私をお前呼ばわりなんて許されないわよあなた」


 そこなのか、お前って言ったのがそんなに気にくわなかったのかよ。それなら俺だって言い分があるぞ。


「俺だってあなたじゃねぇよ。辰人って名前があるんだ」


「あ、ごめんなさい。辰人」


 普通に謝るんだ。やっぱり阿保だろこいつ。



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