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第一章 悪夢《ナイトメア》の序幕-7-

 前よりちよーーっとだけ読みやすくなったかもしれません(^-^)ノシ    ………ぜんぜんだめだったらご指導お願いします(^-^;

-7-

 秀一はこの男が「今、掃除中!】などと言ってふてくされてしまうのではないかと懸念したが、男は微笑して答えてくれた。


「そうか…まだ言ってなかったよねぇ」

「はい」

「ここは私たちの滞在場所だよ」

男は器用に破片を掃き取りながら言った。

「滞在場所?」

「そ。私たちはちょっとした理由でここを訪ねてきているんだよ」

ティーカップの破片が綺麗に片付けられた。

「理由……?」

「まあまあ。焦らないでよ…お?」

秀一が入ってきたドアとは反対のドアから長身の男が入ってきた。


「紹介が遅れたね。私は淡鶴青嵐あわずせいらん。彼は私の部下で宮島厳みやじまいつきというんだ」

 青嵐と名乗った男はティーカップの残骸があった場所を足で軽く叩いた。そしてしかめ面をし、もう一度箒を持ってくる。まだ細かい残骸が残っているようであった。すると、戻ってきた男が言う。

「これを使いなさい。そんなものじゃ、地球が消滅しても掃除を終えることはできませんよ」

秀一は、地球が消滅する前に破片の方が消滅するのではないかと思ったが口には出さずにおいた。


 厳と紹介された男は青嵐に掃除機を手渡す。どうやらこれを取りに行っていたようだ。

 青嵐は掃除機の電源を入れて、しぶとく残った破片を念入りに吸い取った。その甲斐あってか、今度は破片を完全に除去する事に成功したらしく、青嵐はもう一度足で叩いてもしかめ面をしなかった。

 代わりに満足げに顔をほころばせ、掃除機を元の場所に戻しに行く。


 その間に秀一は厳に、テーブルに案内された。

 テーブルの上には、所狭しと料理が並んでいる。

「残り物で、冷めてしまってはいますが、お召し上がりください」

「た…食べていいんですか!?」

「はい、どうぞ」

実は、秀一は空腹だった。居残りと襲撃のせいで、夕食と朝食を同時に逃してしまったため、結局一日近く何も食べていなかったのだ。


 それにしても、久しぶりにまともな食事にありつけた、と秀一はしみじみと思った。

 母が亡くなってからは父との二人暮らしであるのだが、寝ても起きても忙しい父は、あまり食事を作ることが出来ないのだ。

 中学生の時までは秀一が作っていたのだが、高校に入学してから急に時間がなくなり、最近は休日以外はコンビニ弁当のオンパレードであった。


「…おいしいです」

秀一は素直に感想を述べた。

「そうですか。私は普段中華しか作らないので、日本料理は初めてですが、喜んでもらってうれしいです」どうやら料理は厳が作ったらしい。

 なぜ中華料理しか作らないのかは謎であるが、たいそうな腕前に違いなかった。


 秀一が食事を終えると、ようやく青嵐が戻ってきた。

「掃除機を戻すのに何時間かかったんです!?」

 すかさず厳が青嵐を叱りつける。その様子を見ていると上司と部下、というよりもまるで親子であった。

「新聞とか、買いに行ってた。」

青嵐の手には山のような新聞がある。その中には今日発売の週刊誌が見られた。青嵐が『新聞とか』と言う理由であろう。

「そうなら行く前に一言告げてから出て行ってください」

 厳はぴしゃりと言い放つ。だが、厳は青嵐が11紙も購入してきたことには触れず、一緒に紙面に目を通し始める。

 秀一は他にすることがなかったので、二人の作業を見守った。


 一通り目を通し終わったところで、青嵐が言う。

「やっぱり、なかっただろう?」

「ええ、ありませんでしたね」

「…何がですか?」

秀一はタイミングを見計らって尋ねた。


「秀一君、霜置という町を知っていますか?」

それなら知っていた。有名な避暑地であるため、一度訪れたことがあったのだ。「そこで、あなたが襲われたのと同じ怪物、正確に言えば魔物ですが、現れたのですよ」

「うん、そこでは大企業の社長の息子と、桑島とかいう代議士の息子二人が殺されてしまった。」

 秀一はあの怪物、いや、魔物の鋭く尖った触手を思い出した。あれで全身をを刺されて死んだのだろう。できれば思い出したくない光景だった。

「あの魔物は触手を人に刺して、体液を吸い取るんだよ。内蔵とかね」

「あとには骨と皮だけが残ります」

 秀一はおぞましい姿になっている自分を想像し、ぞっとした。…この話は聞かなくてもよかったかもしれない。


「現場にはその状態の死体と、彼らの破損した乗用車が残りました。いくら山間部とはいえ、新聞やテレビで報道されるはずでしょう?」

「でも、どれだけテレビとか、インターネットとか新聞とかを調べても霜置町での出来事は取り上げられていないんだ。おかしいだろ?」

 確かにそれは奇妙なことであった。青嵐が新聞を大量に買ってきたのはそういうわけだったのである。


「私たちは仕事の関係上、こういう情報に詳しいけれど、これは極秘の話だからね、」

「あなたは偶然事件に巻き込まれてしまったのでお話しますが、くれぐれも他言しないでくださいね」

二人は、一通り話し終えると、秀一に口止めした。

「はい」

秀一は口の固い方であるので、それは心配ないだろう。

 その様子を見た青嵐が安心したように話を続ける。

「今日のこの様子から判断すると、情報統制を行った犯人は魔物について詳しく知っている上でやったとしか思えない」

 その上。

「社長の息子については、社長夫人のブログに多少記述があったのですが、『息子は事故で死んだ。警察からは、遺体は、状態が悪いので対面させられないと告げられた』という内容でした」

 犯人はマスコミだけでなく警察にも影響力があるということになるのである。

「まだ敵と決まったわけでもないのですが……少なくとも相手は我々の極秘情報を握っています…」

 二人はいつになく真剣になっていた。


 しかし。…疑問が一つ残る。

(青嵐さんと厳さんの『極秘』とか『仕事』とかっていったい何なんだ!?)

 いろいろと頭が混乱し、整理を必要としているようであった…。


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