第四章 店員は語る?-8-
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─バタッ………
「厳さん!遅くなってすみません!!」
秀一は勢いよくドアを開けると、さらにそれを上回る勢いで玄関に飛び込む。
すると、すぐに厳が玄関に顔を出した。
「ええ、確かに遅かったのですが…。……まずは『ただいま』が先ではありませんか?」
「……はい。…っえっと…『ただいま』」
秀一はこのような状況であくまでも礼儀正しさを守ろうとする厳もどうかと思ったが、厳の眼光を浴びてとりあえず従う。
「よろしい。……それで、目的の風邪薬は手に入りましたか?」
「そうでした…」
危うく目的を忘れかけていた秀一は、急いでバックパックから薬局の紙袋を取り出して厳に渡す。
「これです」
「ご苦労様です。…秀一君、しばらく休んでいていいですよ?」
「はい、わかりました」
厳に言われて秀一はリビングへ向かった。
対して、厳はリビングの方と反対にある、キッチンへ向かう。
「……これが風邪薬ですね」
厳はグラスに水を満たし、薬と一緒に青嵐の部屋に運んでいった。
「青嵐、薬ですよ」
「……『お母さん』みたいな言い方はやめてくれないか………?」
青嵐はふとんの塊の中から起きあがると、不平を洩らす。
「そうですか…。……せっかく薬を買ってきてくれた秀一君に文句を言うんですか……。罰当たりな人ですね」
「いや、違うだろ!…明らかに君に言ってるのにどうしてそう聞こえるんだ!?」
「はい、どうぞ」
厳は青嵐を無視すると、青嵐に薬と水を差し出す。
「ほら……やっぱり」
青嵐は薬の包みを開けた。