第四章 店員は語る?-7-
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「ここで働いている友人に仕入れてもらったのさ」
青嵐はティーセットを包んでいた包装紙をトントンと叩く。
「あなたという人は……」厳は苦笑した。
「友人さんは、こんな、手に入りにくい品をどうやって……」
「いろいろとね」
青嵐は満足げに微笑した。
「でも、よく見つかりましたね」
厳は、今日初めて機嫌を良くする。
厳が、先ほどの苦笑とは異なり、純粋な笑みを見せたとき。
─…バタンッ……!!
「………!」
「………ん…」
青嵐が急に壁に手をついた。
「青嵐!?」
「…んん?……なんか……めまいが……」
「発作ではないのですか?」
厳は不安げに青嵐の顔をのぞき込んだ。
青嵐は最近原因不明の頭痛に悩まされているのだった。
ひどくなるとその場から動けなくなるほど痛むらしい。
しかし、原因不明ときては対処法も見つからず、ほとほと困り果てているのである。
「うん……違う」
青嵐は厳に応えながら目頭を押さえる。
「そうですか……」
厳は青嵐の額に手を当てた。
「熱が上がっていますね………無理しないでくださいよ……?」
「いや、さっきより具合が良くなった気がしたんだけどな……」
「熱があがると、中途半端に熱があるより楽になった感じがするんですよ」
「そうなのかい…?」
「ええ、体内のウイルスが熱で減るためでしょうね」「そうだったのか……」
「でも、そのついでに身体にもしっかり負担がかかっています。……というわけですから、おとなしく寝ていなさい」
「ふーん…」
青嵐は珍しくも 文句を言わずに布団へ戻る。
「前から気になっていたのですが……貴方はなぜベッドで寝ないんですか?せっかくあるのに……そっちの方が暖かいに決まっています」
「ベッドだと落ちるから」
「そんなに寝相が悪かったんですか……」
「いや…そういうわけではなくて……なんか気分的な問題で…」
(またなにかあったんですね………)
厳は、それ以上突っ込むのをやめ、部屋のカーテンを閉める。
「はいはい、秀一君が戻ってくるまで寝ててくださいね」
「眠れないんだけど」
「地面に対して横になっているだけで構いませんよ」
「『地面に対して』って……そこまで説明しなくても………」
青嵐はぶつぶつ呟いて布団の中に潜っていった。
(やれやれ………)
厳は青嵐の部屋のドアを閉め、ダイニングへと戻る。
「さてと……今夜のことを考えなくてはなりませんね……」
厳は、ゆっくりとティーセットの木箱の蓋を閉じた。