第四章 店員は語る?-4-
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厳が玄関のドアを開けると、宅配業者であった。
「宅配です。淡鶴青嵐様宅で間違いありませんね?」
「ええ」
「印鑑、またはサインをお願いします」
厳が返事をすると、宅配業者の青年は荷物に張り付けてある添付表を指さした。
(おかしいですね─…何かを注文した覚えなどないのですが……)
そう思いながらも厳はポケットから印鑑を取り出す。
青年は厳が印鑑を携行していることに若干驚きの様子を見せていたが、厳はそれを無視して捺印した。
「どうぞ」
「あっ、ありがとうございました」
青年はまだ動揺から冷め切らぬ様子で添付表の一番上をはぎ取り、玄関を出ていく。
厳は本日何回目かのため息をついて、届いたばかりの荷物を手にとった。
その包装紙の模様に見覚えがある。
「どこかで…」
厳は先ほどに続いて、自らの記憶に問いかけた。
「げほっ」
その時、怪しげな(?)咳と共に、隣室のドアが開き、青嵐が顔を出す。
「……寝ていなさいと言ったのを覚えてませんか?」
「……げほ…っ…眠れないと言ったのを覚えてないかい」
青嵐はせき込みながらもしっかりと厳に言い返す。
「まったく…これは何なんですか?」
先ほどから何度も思考が空振りし、いらついている厳は、青嵐の必死の抵抗に見向きもせずに自分の問いを投げかけた。
「中身を見ればわかるよ」 そのような中、空気を読み損ねた青嵐はひとり冗談混じりに答える。
「……」
「……!─いや、わかったから。分かったって!!言うってば!!」
手近な椅子で青嵐を亡き者にしようとしていた厳を、青嵐は必死に制止した。
「そうですか。私もちょっと熱くなってしまったようです。すみませんでした」
ちょっとどころじゃないよ、と青嵐は思ったが、それは思っただけで止めておく。
「で、何を注文したんです?」
厳は青嵐を、蛙を睨む蛇のような視線で一瞥した。