第四章 店員は語る?-3-
昨日、一昨日は小説と原稿の修正にお時間をいただきました。……最近、大変ご迷惑をおかけします(^-^; 29日には年度末の慌ただしさが一段落しますので、それまで大目に見てやってください<(_ _)>!!
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来いと言われて素直に尻尾を振って行くような真似はしたくなかったが、霧雨の暗号通信方式を修得しつつあるこの人物を見捨てておくのも気が進まなかった。
(……その上…"例の事件"と来ましたか…)
これはおそらく大学生が玄狗に喰われた事件を指しているのであろう。
初めて姓名を知った人物に、知り合いのような顔をされるのは気味が悪い。
(こちらは向こうを知らないのに、向こうはこちらを知っている……?)
その上、相手はこちらと知り合いであるのかのような態度をとっている。
「暗号技術と私の居場所、この情報をどこで手に入れたのでしょうか…。少し調べてみる必要がありそうですね…」
厳は霜置に行くことにした。
─ただし、正面から行くつもりはさらさらない。要は相手の顔、もしくは素性を拝むことが出来ればよいのである。
「ふ…」
厳は穏やかでない笑みを浮かべた。
そして、現在厳の最大の興味の対象である封筒を、保護するようにテーブルの上に置く。
その時。
(……?)
ほんのわずかだが紅茶の香りが封筒の周辺に漂った。
それは微かすぎるために、嗅覚の鋭い厳でなければ気が付くことがなかったかもしれない。
(…これは…どこかで……?)
頭にはすでに午睡の夢ほどの記憶も残っていなかったが、身体がその香りに馴染んでいるような感覚があった。
(……これは…)
─ピンポーン
だが、厳が思い出しかけたところで玄関のチャイムが鳴る。
もう少しで出せたかもしれない解答は、大気圏のはるか向こうまで飛んでいってしまったようであった。
「はい」
(まったく人が思い出しかけているときに…青嵐並みにタイミングの悪い…) 厳は、表面上は愛想良く答え、内心で悪態をつきながら玄関へ出た。