第三章 三度あることは四度ある-12-
昨日、わかりにくいため、改訂版の序章を削除しました。……前書きではなくなってしまいましたが、この場を借りてお詫び申し上げます。(^-^;
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…人界が関与しているかもしれない。
そこまで考えたところで、秀一はある事実に思い当たった。
(…確か…青嵐さんが…大学生二人が玄狗に喰われたのは俺が襲われる前日の深夜かもしれないと言っていた……)
青嵐が大学生が玄狗に喰われたという報告を聞いたのは事件から約二十時間後の午後八時頃であった。
事件が起こってから、ずいぶんと時間が経っているように思われるが、何者かが『霧雨』よりも先に動いていたためであるという。
(それで、報告が遅くなったって聞いたから……。)
流れからして、奈穂が 目撃した二人は『先に動いていた何者か』である可能性が高い。
「それじゃ、午前一時頃、そっちに行ってみる」
秀一は結論づけた。厳に断り無しに事を進めてしまい、いささか勝手が過ぎるかもしれないと思いもしたが、そこは事情を話せば何とかなると思う事にした。
「…ありがとう。話、聞いてくれる人、全然いなかったから」
奈穂は安堵したように言った。
「それじゃ、うちの家はここからそんなに遠くないから。0時半にこのスーパーの南門で待ってる」
「わかった」
秀一は承諾した。
「霞持君…ホントに行くの?」
沙夜花は今度は奈穂への気遣い無しに、信じられないといった様子で秀一を見る。
「ああ。俺も前ちょっとした事件に巻き込まれたから…人事とは思えないし……」
『霧雨』のことはあえて言わないでおく。
「……それと、」
秀一は奈穂の方に向き直って言った。
「もう一人、友人を連れて行きたいんだけど、いいかな」
もう一人というのは、むろん厳のことであった。
(一応…居た方がよさそうだし)
「…どっちでも。」
奈穂は頷いた。
(彼女さえいいなら、厳さんに一緒に来て貰おう)
「じゃあ、俺はこれで。」
(急がなきゃ……)
ちょっと(かなり、といってもおかしくはない)機嫌の悪い厳に皮肉を言われるだろう。
秀一は立ち上がると、椅子を元の場所に戻してから自分のバックパックを肩に掛け、足早にフードコートを立ち去った。
(しかし…霧雨に入ってからまだ三日も経っていないのに…。)
どうしてこうもアクシデントに見舞われるのだろうか。
秀一は悲観しかけたが、その寸前に思い直す。
(でも、こういうのは大抵三度目で終わるっていう格言も多いし…)
それに、アクシデント続きがこれで終わればよいのである。
(物事は何回も起こるっていったってよく聞くのは『二度あることは三度ある』…位だしね)
秀一はあまり深く考えずに歩き出す。
「かれ、かなり几帳面なんだね……」
「そうみたい」
あとに残された女子高生二人は、秀一が椅子を元の場所に戻しながら、さりげなくテーブルの上をきれいにしていった事について唖然として語り合った。
─このとき、秀一は『再三再四』という四字熟語があるという事を知らなかった…─。