第三章 三度あることは四度ある-8-
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「そいつの方を信じるわけ!?」
だが、ナオの方はそのような沙夜花の態度が気に入らないらしく、眉をひそめて叫ぶ。…もはや、絶叫と言っても過言ではない。「いや……だって霞持君、無駄に正直だから」
一方、ナオの憤慨した様子に気がつかない沙夜花は至ってマイペースな返事を返した。
「何でそんなこと知ってるの!?サヤカとこいつってそういう関係!?」
ナオはついに低俗な皮肉を使い始める。
「ううん。中学の時、いろいろあってね」
しかし、嫌みを込めた冷やかしはあっさりと沙夜花に受け流されてしまい、ナオはいよいよ不機嫌になった。
「嘘ついちゃえば済むことをさあ、バカ正直に言っちゃうの。それで、教師といざこざが多くて、霞持君は密かに有名人だったんだ。だから多分、嘘はついてないって」
「くっ……」
「つーか、だめだよナオ、イライラしてるからって突っかかっちゃ。……変な事あったからといってもさ」沙夜花は意味ありげな表情を作った。
(…?)
秀一は話に付いていけず、一人首を傾げる。
「…サヤカ、そこまで言う?もういいって言ってるでしょ」
「だって『変な事があってから最悪』ってみんなに言ってるじゃない」
「変な事?」
先刻から黙り込んでいた秀一はついに口を開いた。
「そうだっ。みんな、あっちで話さない?」
それをしっかりと耳に入れた沙夜花は、二人に向かってフードコートを指しながら提案する。
飲食コーナーには、ちょうど空席が出来たところだった。
「ナオもお昼食べ直せるし、行こう」
「あっ…ちょっ、…俺は……」
用事がある、すぐに帰らなければならない、と言おうとしたのが、沙夜花は秀一の返事を待たずに唯一空いた席の方へと向かっていく。
「あれ……聞いてる…?」
「あきらめな…。サヤカ、ああいう性格だから」
ナオは相変わらずとげとげしく言った。
だが、すくなくとも彼女は秀一に気を許してくれたようだ。
「…はぁ……」
秀一は、仕方なくナオについて行った。