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第二章 働かざる者、食うべからず-5-

-5-

 「寒いから、これを。」

 秀一は青嵐から綺麗に折り畳まれたコートを手渡された。…戸外は大吹雪であった。

「ほんと、寒いですねぇ」

厳が周囲を見回しながら言った。

「こんな大雪の中でも魔物やつらは元気なんだよ…」

青嵐は嘆くように呟いた。そして、弱音を吐き始める。

「あー寒い、もうだめだ」

「しっかりして下さい。行こうと言ったのは誰です?まだ外に出たばかりではありませんか」

すかさず厳が叱りつける。「だって予想以上に寒いんだ……」

「…大丈夫ですか?」

秀一には、今にも青嵐が倒れてしまいそうに見えた。「まあ、青嵐は寒さに弱いんですよ。お坊っちゃまですからね」

「…どういうことだい…」

「その分なら大丈夫ですね。さあ、とっとと歩きましょう」

厳は青嵐を小突き、前進させた。


 都市とはいえ、さほど大きくもない午前六時の町には、土曜日ということもあって人通りが少ない。

 これから二、三時間ほどもすればだんだん交通量も増えてくるはずだ。…それまでには魔物をしとめなければならないのだ。

 まだ降り始めたばかりなのであろう、足下にさほど雪が積もってないのがせめてもの救いだった。


「あれだ…」

 青嵐がうめいた。前方から人が歩いてくるのだが、どこか歩き方がおかしいのであった。

「間違いなく、あれですか?」

「うん、間違いない」

 青嵐が手にした携帯電話が、点滅する光を発している。

 …これは、青嵐が人・魔を識別する識別装置とプログラムを組み込んだ端末で、このようなとき、人か仙界の者か、判別できるようになっているらしい。

「こいつ…人界で人をすでに喰いやがったな…」

 確かに、目の前から歩いてくる玄狗は、一見しただけでは全く人間と区別が付かなかった。

「ただじゃおかないよ…」青嵐は玄狗を睨む。

「厳!」

「はい。…どうぞ」

 青嵐に促され、厳はピストルのような物をコートの内ポケットから取り出した。そして、秀一と青嵐に手渡す。

「ピストル…?」

「中身はいじってありますが、一応本物ですよ。十分注意して下さい。衝撃を加えると暴発しますし。」

「え…」

「あんまり脅かすなよぉ…厳、ちゃんとすればそんなに危なくないんだから。…それに寒いしさぁ…」

青嵐が説得力に欠けた言い方で厳をたしなめた。


 そういっている間に、玄狗が三人の方を向く。どうやら気付かれたようだ。

「奴が…動き始めたよ」

 不自然な動きをしている人物が、錆び付いた金属をこすり合わせるような音を出し始めたのであった。

「……っ」

秀一はその生理的嫌悪感を誘う音に耳をふさいだ。「来る」


 人型が弾けて、原型を失った。…一昨夜と同じように、黒い触手の塊が出現する。


 触手は猛スピードで三人に襲いかかってきた。


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