第二章 働かざる者、食うべからず-2-
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─ガチャン、ガガガッ………ドン!!
秀一は騒がしい音に目を覚ました。
「……?」
携帯電話で六時に設定しておいた目覚ましのアラームはまだ鳴っていないので、それ以前ということである。
こんな早朝になんだというのだろう。そう考えながら音を辿ってゆくと、それはどうやら隣室から発せられているらしいことが分かった。
秀一は隣室のドアを開ける。そこには青嵐と厳と、─奇妙な物体があった。
奇妙な物体は球体をした透明なガラスケースに入っているのだが、観察したところ何かの機械に見える。
形状はきわめて不可思議で、どれほど努力しても一言では表現できそうになかった。青嵐と厳はその機械を真剣に見つめている。
その機械はよく見ると ケースの中で複雑に動いており、騒音はそこから発せられていた。
─ガガガッ……ピィィィィイ…………
そうかと思うと、旧世代の映画に出てくるロボットのような音を立て、その不規則運動を急停止させる。
(止まった……?)
しかし、そうではなかった。今度は機械に接続された液晶テレビが、軽い電子音をたてて起動する。
テレビが鈍い光を放ち、はっきりとした像を結ぶまでの間、青嵐と厳はいつの間にか画面のすぐ近くまで移動していた。
数秒後、画面に地図のような物が映し出される。
(なぜ、そんな近くまで………?)
理由はすぐに分かった。
画面に映し出される映像は、約一秒ごとにスライドのように切り替わるのだ。それは、詳細な部分まで表示していた。
一分ほどすると、赤く光る点が映った地図で、切り替わる動作が停止した。
「これは……」
「間違いありませんね」
「おしっ」
青嵐は機械にプリンターを接続し、コピーしてからスライドを凝視するという作業を続けた。
しばらくすると、スライドが終わり、液晶の電源が勝手に切れる。
それを見た青嵐は大きく伸びをした。
「あー…終わったぁ」
そんな青嵐を見ていた厳が秀一に気付いた。
「あれ、早いですね」
「え?はい、目ぇ覚めたんで…」
秀一は、その場にいたのはまずかったか、と一瞬思ったのだが、厳の様子からして見てはいけない光景ではなかったようだ
「まだ六時になっていませんが…」
「ええ、まあ」
正直に言うと不可解な機械のせいで起きてしまったのだが、頼まれたとはいえ居候の身で差し出がましい事をいうのははばかられた。…秀一は、そのあたりに妙に律儀なのである。
「やっぱうるさいよねぇ…」
そう思っていると、青嵐が機械の入った球形のガラスケースをなでながら、秀一の気持ちを代弁してくれた。