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妖王とその側近。転生と生まれ変わり。

 紗英王(しゃらおう)は、そう云って思念を飛ばすのを止めたのか、(つぶ)っていた片目を開く。


 苦悩していた暗羅に手を差し伸べたのは、常世を統べる(あやかし)の王・紗英様だった。紗英様は、常世の中心にある逢魔城で暮らしている。


 上に立つ者として、民に手を差し伸べるのは当然の事。民が居るから国が栄える。民を苦しめる王は民に殺される。


 一人では、政治は成り立たない。一人では成せない事がこの世の中では多い。信頼と尊敬・畏怖をされなければ上に立つ事も出来ない。


「まあ......現世(うつしよ)は、民に耳を貸さない者が多いらしいが殺されていないだけマシなのだろうな」


 民の声に耳を貸さない限り、民は税金に苦しめられ生活困難・困窮(こんきゅう)し生きづらく殺伐とした社会になるだろう。と現世自体が例え無くなってしまっても常世・天界・地獄には最初だけ影響はするものの今の緩やかな消滅よりは幾分かマシになる。


 いつ消えるか分からない恐怖や不安を(いだ)かなくても済む。


 逆に左右する存在が消滅するので常世に住む妖は、存在が安定する。と紗英様は思う


 ただ、問題はそう。妖が人に生まれ変わったり、人が妖に転生したりする。


 此処での生まれ変わり・転生は同じ意味ではなく前世の記憶がないままが生まれ変わること。転生は前世の記憶があるまま生まれ変わることを差している。


 人から妖になる。人が違う世界に生を成せば前世の記憶を所持したままが多い。


 だから、生まれ変わりと転生を此処では区別して使っている。


「紗英様。此れで全ての民に通達完了しましたね、お疲れ様です」


 わざわざ一人一人に。その妖の存在が消滅しないよう適切な案やヒントを伝えているからかかなりの時間を使った。幾ら時間が妖にあろうとも存在の安定は妖にとっては生死に関わるのだ。


 しかも、その問題は妖固体によって時間の猶予が変わってくるからあまり一個人に割く時間はない。


「ん?嗚呼(あぁ)朱紅(しゅうく)。君も、私の警護とは云え付き合わせて悪いな....休んで構わないぞ」

 

 お疲れ様です。と云ったのは扉を見張っていた朱紅だった。朱紅は鴉天狗と云う種族で紗英様の側近でもある。朱紅は、何時なんどき誰が来ても対応出来るように紗英様の方を振り返ることなく自分の仕事を(まっと)うしている。

 

 しかし、周囲に気を張っていても朱紅の耳は主君の声、言葉を一句たりとも聞き(のが)さないようにしている姿勢は背中越しでも分かった。


「いえ、紗英様。紗英様が休まれるまで、紗英様の側を離れる訳にはいきません」


 本当は紗英様が休んでいる間も側に居ないと。と思ってはいる朱紅は、紗英様が休憩時には一人で過ごしたい。と云われるまで警護をしていた。


 それがなくても、朱紅は紗英様の事になると熱心になる。


 紗英様だけに。決して仕事だから真面目になると云うことではない。


 紗英様の側近になってからと云うもの何時も仮眠だけで完全に寝ることはなく紗英様が云わない限り深い眠りにつくことはなく側近としての業務なら真面目に特に紗英様の身辺の警護は熱心になる。


 だから、こうして(うなが)す言葉を投げ掛けていた紗英様は朱紅の堅くな態度にため息にも似た吐息が出てしまう。 


「......分かった、私部屋(しべや)で休んで来よう。朱紅もその(かん)にちゃんと休め、私は一時間後に戻ってくる」


 本当は、休んでいる時間も()しいが自分が休まなければ朱紅は休まないのだろう。身辺の警護をしなくても私の(もと)に来るのに幾つもの審査をクリアしなければならない。


 しかも、裏口とかはなく一つしかないの入り口を通らないと逢魔城の中には入れない。ただ、飛べる妖怪は別だ。別だが、どちらにしても謁見証を持ってないと入れない。逢魔城に既に居る者は(しるし)(ほどこ)されている王にしか、紗英様にしか施せない印が体の見える位置に施されている。


 施されていない。謁見証がない者は中へ入れない。そのため、紗英様は身辺の警護等必要ないのでは?と思ってしまう。


 たまには不審者の一人や二人来ても構わないが。と何せ一日の大半は書類と睨めっこ。ではないが書類を相手にする毎日だから忙しいのは忙しいが、退屈に感じるから体を動かしたいと云う気持ちがある。


 籠の鳥。というには些か違うが、たまにはそう云う息抜きが欲しい。だから、そう云う意味も含めて身辺の警護は必要としていない。


(そう云ったら、(しゅー)くんが困りそうだ)


 紗英様は、朱紅の言葉に折れた形で休むと伝えるとちゃんと朱紅に休むよう釘を差して謁見部屋から私部屋に向かうため歩き出しながら、心の中で困ったように呟く。


 朱くん。それは朱紅のこと。妖王(ようおう)になる前まで朱紅は血の繋がりこそないものの弟のように接してきた。その時の名残。 


 今も。朱紅のことを一日一回程度だが、朱くんと呼んでいる。


「分かりました。紗英様、ゆっくり休んで下さい......一時間後には起こしに(うかが)いますので」

あとがき


 此処まで読んで頂きありがとうございます!

数ある中で俺の駄作を読んで頂けるなんて嬉しい限りです!


 更新はゆったりですが、これからも良かったら、読んで下さいませ!

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