人生強制終了。
人生とは、唐突に終わるものだ。否、終わって欲しかったんだ。ずっとそりゃもう、ずーっと終わって欲しかった。欲しかったのだけど、理想とかけ離れた人生終了だった。
ずーっと、水害で自分は他界するんだと。自分で自分を殺せないのなら。夢で水害で死ぬ。死んだ夢を。現実でも、意図も容易く川や海で溺れる光景が想像出来るから想像してしまうから、水害じゃない限りは死ねないと。思い込んでいたから、其れが
「てっめえ! 轢き逃げすんじゃねえ!」
交通事故で、自分は死んだらしく自分の体は傍らに居てその前方には車。車には男性が乗っていて車から出ないで窓から顔を覗かせて確認し、ぴくりとも動かないのを見て、慌てた様子で急発進する男性の姿を見てしまった為に、カチンッと頭に来て怒りのままに叫ぶ。
魂だけになっている。所謂霊体。幽霊になったっぽい自分、壬鏡 千衿は天か地獄かどちらかは分からないがその使いが迎えに来ているのにも関わらず、感情のままその車。否、正しくは男性目掛けて行く。
霊体だからか、突風のように早く。車に追い付くことが出来、生きている時よりも思うように体が動いて軽く感動を憶える。しかし、今は浸っている場合ではなく生きていた時も死んでも尚男性が嫌いで憎いと感じている千衿は、何とか仕返ししようと車体を思いっきり叩こうとするもすぽっと勢いよく通り抜け車内に転がりそのまま車の外へと投げ出されそうになり再び轢かれそうになってキツく目を瞑る。
「だから、待つなりと俺云った! 間抜けな猪みたいな事したら駄目! メ!」
轢かれそうに落ちそうになったのを止めたのは、小鬼。小鬼は、千衿より小柄で4歳児の平均身長と同じくらいの身長で頭には鬼の角が小さいながら2本ある。耳はエルフのように尖っていて口から覗かせている八重歯が特徴的で見た目は滅茶苦茶可愛くなったゴブリンだろうか。取り合えず、キーホルダーにしても映えるキュートな容姿をしている。目はくりくりだし、声も見た目通り可愛い。声変わりしていない中性的な声はよく合っていてまるで怖さがない。
寧ろ、マスコットだろうか。等と支えられているのにも関わらず、横目で小鬼を見ながら思っていると、一向に返事が来ないからか痺れを切らした小鬼は再度口を開けて
「おい、聞いてるのか?! 俺の話! それと俺は、暗羅って云う名だ! けして、マスコットではないぞ!」
片手で千衿の体を支えつつぱたぱたとまるで失礼なと云わんばかりに空いている手を動かしキッと千衿を見てはっきりと名乗る暗羅は、千衿がマスコットと思った事を察したのか。ぷくっと頬を膨らませたのち、ぷいっと千衿から顔を逸らして明らかさまに不機嫌な空気を醸し出していた。
「えあ......わりい、わりい! つい、可愛い容姿してっからさ。......暗羅さん、か?」
未だに男口調なのは、千衿の素での口調だからだ。人前ではわりとですます口調だが、さっきの事がありすっかり男口調のままで慌てたように謝ればすくっと暗羅から退いて、車のボンネットの上に座る。
さっきまですり抜けていたのに。今は、すり抜けずに座れることが不思議に感じて首を軽く捻るも、多分暗羅が自分に何かしたのだろうと思い、気にすることはなかったが、改めて暗羅と向き合う形になると、呼び捨てなのも気が引けるしさん付けだと違和感あるしかと云って可愛い容姿に様付けするのも何かと。考えた末に出したのは違和感のあるさん付けだった。