第二十六話 共同体
百貨店には日が沈む前に到着した。
道中、ひたすら双子が話しかけてきて辟易とした。
宇宙語は本当に理解ができない。
しばらくすると双子は俺に飽きたのか、詩織と三人で話をしていた。
高校生同士、話が弾むようで終始明るい声が響いていた。
大声で騒いでいたときはさすがに菊間に怒られてはいたが。
百貨店に近づくにつれ、知らない人間の匂いがあることに気がついた。
この脳髄に突き刺さる芳しい匂いは、どこから漂っているのだろう。
ふらふらと匂いの元を探していると菊間たちに変な顔をされた。
たしかに百貨店を目前にして、どこかへふらふらと行ってしまったら変な顔のひとつもするか。
言い訳じゃないが、ついて来る女性たちへと説明する。
「なんだか、人の気配というか、匂いがしてな」
「匂いって。恭平お前、犬じゃないんだからさ」
「でもかわたんな手してるし」
「モフりみ深いからワンチャン犬もあるっしょ」
「あー、わかるッスー」
あいかわらず若い子らが何を話しているのかがわからないが、とりあえずは納得してくれたと信じて匂いの元を探す。
だんだんと濃くなっていく匂いを辿っていくと、たくさんの放置車両がある場所へとついた。
そのうちのひとつのワゴン車から、匂いは発せられている。
スモークガラスで中の様子はわかりにくい。
運転席と助手席には何もいない。
後部座席はカーテンがかけられていて見えない。
「これだな。何が出てくるかわからない。少し離れていてくれ」
「あんたたち、私の後ろに来な」
俺から二メートルほど距離を開け菊間が立ち、高校生らをその背に庇ってくれた。
何があっても対処はしてくれるだろう。
スライドドアに手をかける。
鍵がかかっている。
車が揺れた。
話し声が聞こえる。
「……か来た……」
「どうし……開け……」
女の声だ。
人数は二人か。
「おい、俺たちに敵意は無い。後ろには自衛隊員もいる。お前たち、まだ朝にはいなかったな。どうしてここに来た?」
返事は無い。
窓をノックする。
中で人が動いたのか車が揺れた。
「なにこの手……」
「危ないよ。絶対出ちゃダメ……」
「でも……」
腕を見る。
ノックをしたのは毛まみれの方の手だった。やらかしてしまった。
それにしても『危ない』、か。まあ普通はそう思うのだろうな。
中の女たちは出てくる気配がなさそうだ。
「俺たちはそこの百貨店を拠点にしている。避難受け入れもしているから、気が変わったら出てくるといい」
そう言い残し、踵を返す。
五歩も歩かないうちにドアの開く音がした。
濃密で芳醇な匂いと共に、二人の年若い女性が車から降りてきた。
「あ、あの、助けてください……」
「ここにくれば助けてくれるって聞いて……」
誰に聞いたというんだ?
まさか奈津実たちをここへ導いた謎の女か?
「それは誰に聞いたんだ?」
「わ、わかりません」
「顔を見てなくて」
「全身黒い服を着ていてフルフェイスのヘルメットをかぶっている女か?」
「そうです……! その人です!」
「キョーヘイって人を頼りなさいって言ってました」
謎の女は俺のことを知っているのか?
俺と面識のある女……。
まさか……いや、それはありえないだろう。
頭の中に浮かんだ考えを振り払い、二人の顔を見る。
怯えたように俯く二人は、まだ少女と言っても良いくらいに若かった。
双子より若いか、同じくらいに見える。
俺がジッと見ていると二人は可哀相になるくらいに震えだした。
「恭平は俺だ」
「あ、あの、えっと、助けてください……」
「お願いします」
「ああ、大丈夫だ。心配ない。詳しくは中で話そう。ついて来てくれ」
「は、はい!」
「わかりました」
こういったやり取りをしているときは、さすがの双子も空気を読んで静かだった。
だが、百貨店の入り口へ歩く僅かな間で、二人にペラペラと話しかけてはきゃいきゃいと騒いで菊間に怒られていた。
学習をしないのだろう。
ゾンビ避けとして置いてある熊の頭を見て、全員が息を呑んだのがわかった。
双子に「ほら、モフりてえんだろ。行けよ」と言ったらものすごい勢いで憤っていた。
宇宙語で抗議してきたが半分程度しか理解できない。
どうやら死体じゃダメだったようだ。
まあ死体だろうが構わずに抱きついていたら正気を疑うところだったが。
百貨店入り口のシャッターは閉まっているが、呼び出しがあるので心配は無い。
壁に這わされたロープを軽く引っ張る。
すぐに八階の窓が開き、誰かが顔を出した。
あれは珠子か。
「恭平さーん、おかえりなさーい」
手を振る珠子に同じように手を振り返す。
「ただいまー」
「今、鈴鹿さんが行きましたのでー」
「わかったー」
声を張ってのやり取りとなる。
普通にインターホンがほしくなるな。
糸電話のようなものでできたりしないか?
昔、空飛ぶ城のアニメで見た、空賊船の連絡方法でも良いな。
あの色んなパイプで繋がっているやつ。
そんなことを考えていると入り口のシャッターが開き始めた。
シャッターが開ききると鈴鹿が立っていて、こちらをみて驚いた顔をした。
「また、ずいぶんと可愛らしい子ばっか集めてきたね」
「高校生だ。あまり怒らないでやってくれよ。皆に紹介もしたいし、一度レストランに集まろうか」
「なんで怒る前提なのかはわからないけど集まれば良いんだね。皆を呼んでくる」
「ありがとう、助かる」
百貨店内で思い思いに作業をしている皆の居場所を、鈴鹿は把握しているようだ。
エスカレーターで二階に上っていく鈴鹿を見送り、菊間たちを連れて九階を目指す。
「それじゃあこっちだ。ついて来てくれ」
エレベーターで九階へ行きレストランへ。
既に珠子が全員分の紅茶カップをテーブルに用意している。
上から見て人数を数えたのか。
こういう気配りができるのが珠子の良いところだ。
紅茶の他にもインスタントのコーヒーやココアも用意しているのが心憎い。
レストランのテーブルを四つ使って、ようやく全員が座ることができた。
俺を含めて総勢十五名。
俺以外全員女性だと、どうにも居心地が悪くなるのは仕方が無いことなのか。
ひとりずつ名前を言って自己紹介をしていく。
これだけ居ると覚えるのも大変そうだが、皆で暮らしていくうちに自然と覚えるだろう。
車の中で見つけた女性は、眼鏡をかけたのが遊佐涼子。
金髪がプリンのようになっているのが原田千恵。
共に十六歳の高校一年生だそうだ。
自己紹介を終わらせると、皆が自然と歓談し始めた。
不和を生じさせないためにはコミュニケーションを多くとることが大事だ。
引っ込み思案な女性や人見知りをしていそうな女性へと積極的に話しかける双子の存在が、とてもありがたく感じた。
双子のコミュニケーション能力の高さに少しだけ驚いていたりもする。
物怖じしないのは、こういったときに強みになるな。
自己紹介のときに年齢も言ったのだが、菊間が俺とタメで驚いた。
見た目も若く、敬語が苦手という言動的に二十歳かそこらだと思っていた。
菊間の年齢を聞いて、奈津実と明穂が仲間ができたと喜んでいた。
アラサーと呼ばれる年齢なのは俺たち四人しかいないからな。
奈津実たちと同じ運送屋で働いていた深冬は二十二歳、友里なんかは双子と同じ十八歳だ。
香織と直美は鈴鹿と同じ二十一歳。双子に話しかけられて挙動不審になるのは俺と同じ心境だからか。
俺と同じなら、宇宙語がわからないか双子の勢いに引いているかのどちらかだろう。
もしくは両方の可能性もある。
「さて、詳しいルールなんかもあるから皆しっかり覚えてくれ。珠子か鈴鹿に聞けば教えてくれる」
俺に聞いても教えられない。
むしろ俺がルール違反をして怒られる側だ。
前にジャーキーを食べ過ぎたせいで珠子に怒られたのだ。
詳しいルールブックなんかも珠子が作ってくれている。
ほんと珠子には足を向けて寝られないな。
皆の様子を観察していると横から鈴鹿が「そういえば、恭平さ」と話しかけてきた。
「例の人の居場所はわかったの?」
「ああ、アメリカ軍の基地らしい」
「え、あの空母とかあるとこ?」
「そこだ」
まあ鈴鹿の言う空母は、アメリカでゾンビパニックが起きてすぐに帰ったとニュースで報じられていたが。
「明日の朝に出発しようかと思っている」
「そっか。見つかると良いね」
「そうだな」
「ていうか新しい子たち、恭平の腕見ても怖がらないね」
「京子と千恵は怖がっていたぞ」
「いきなりそれ見たら怖がるでしょ。今は平気そうじゃん」
たしかに既に二人は俺に怯えた様子もなく、普通に皆と話している。
「ちょっと、それ貸して」
「ん? 手か?」
「うん。触りたい」
鈴鹿の突然の要望に驚きつつも、言われるがままにテーブルの下から左手を出す。
それを鈴鹿が両手で握ったり撫でたりしながら「私はこれ好きだけどね」と言った。
「ほら、ここ大きいけど肉球になってんの。わかる? これ」
「ああ、やめてくれ。こそばゆい」
「毛もふわふわして気持ちいいし、沈んだ指があたたかいし。これ抱き枕として最高なんだよね」
「お前、だから俺のベッドに入ってくんのか」
「ま、それも理由のひとつかな」
いろいろとまずいから本当にやめてほしい。
撫でたり握ったりする鈴鹿に腕を預けていると、双子の片割れの「あー!」という声が聞こえた。
「鈴鹿さんずりーし! あたしもモフりたいのにー!」
「あたしもー! 独り占めダメっしょ!」
「あ"?」
「あ、なんでもないです」
「すんません」
ドスの効いた鈴鹿の声に、双子は一瞬で沈静化した。
これ、もう双子の面倒は全部鈴鹿に任せたいな。
菊間もそう思ったのか「おぉ、やるな」なんて言っている。
「さて、それじゃあ少しミーティングをしよう」
皆が静かになったタイミングで話を切り出す。
人が増えるにつれて必要となってくるもののリストアップや、優先的にやることなどを話し合う。
我が拠点の台所奉行である珠子が、食糧確保が急務だと述べた。
今あるものだけじゃ、いずれ食べ尽くしてしまう。
畑や田園での生産や、乳を出す牛か山羊、卵を産む鶏などの入手。
肥料や飼葉なども作らなければならないらしい。
正直どこに行けば手に入るのかもわからない。
畑や田んぼをやるのなら、拠点を移すことも考えた方が良いのかもしれない。
必要そうなもの、それらが手に入りそうな場所をリストアップしてもらい、機会があれば探すということで話は終わった。
この拠点での役割も決めておいた方が良いだろう。
皆の得意なこと、やりたいことをリストにまとめ、きちんと仕事を割り振るべきだ。
そんなこんなでミーティングをしていると、割といい時間になってしまった。
まずは夕飯を食べそれから続きを話そう。
新しい人たちの寝床も用意しないといけないな。
「さて、とりあえずはここまでにするか。腹も減っただろうし夕飯にしよう」
「そうだね。じゃあ料理が得意な人はたまちゃんの手伝いをしてあげて。あ、新しく来た人は寝室を作ろうか」
衝立で区切っただけのスペースだが、これがあるとないとじゃ全然違うとのことだ。
自分だけのプライベートスペースがあると、それだけで心に余裕ができるそうだ。
鈴鹿のわかりやすい指示に従い、皆が動きだした。
プライベートスペースは、十畳ほどの広さがガムテープを床に貼ることで区切られている。
女性たちがスケールで長さを計りながらきっちりとやってくれた。
色が違うガムテープのところは通路になっているらしく、そこには家具等は置いてはいけない決まりだ。
俺が何もしなくてもいろいろとやってくれる皆の存在が本当にありがたい。
家具をまとめて置いてある場所へ皆を案内する。
ここから棚やベッドなどの好きな家具を選び、自分のスペースへと運ぶのだ。運ぶのは主に俺だが。
スペースに入るのなら好きなだけ家具を選んでも良い。
ちなみに鈴鹿のスペースはベッドの他にソファとサイドテーブルのみだ。
そして俺のスペースとの間に衝立は無い。
鈴鹿いわく「この方が広くて良いじゃん」だそうだ。
この八階のフロアを将棋盤として見た場合、俺の位置は『1一恭平』となるわけだ。
そして『2一鈴鹿』となって『1二珠子』となる。
「あ、このベッドかわたんなんだけど! あたしこれー!」
「とりまやばたん」
宇宙人二人がまっさきにベッドへと駆け出した。
この二人が率先して動くことにより、他の人が気後れしないのは良いことなのだろう。
うるさいのがなんだが。
「お兄さんの場所どこ?」
「あたし横がいー。秒で腕モフれっし」
双子が鈴鹿と珠子の居場所を狙ってきた。
「そこは私とたまちゃんが既に居んの。あんたらはうるさいからダメ。あっちで女子高生で固まりなよ」
「あはい」
「おけまるです」
鈴鹿の言うことは素直に聞く。
これは良い双子ガードだ。
「うちの穴熊の囲いはかなり強固なようだ」
「穴熊? なにそれ」
「熊なら外いたよねー」
「あれモフれとかねーわ」
将棋の陣形のひとつなんだが、まあ伝わるわけもないか。
若い女子らが将棋に興味を示すはずもない。
そう思っていたが横で聞いていた女子高生の涼子が「穴熊にはまだ足りていない……ならば四間飛車で……」と呟いたのが聞こえた。
将棋を知っているようだし、今度おじさんと手合わせしようか。
というか、意外と鈴鹿がキレずに双子の対応をしていることに軽く驚く。
有無を言わさず平手打ちでもしそうなイメージだったが。
女子高生は総勢六名いる。
愛理と結愛の双子に、詩織と友里が高校三年生組。
車の中で見つけた千恵と涼子が高校一年生組だ。
仲良くしてくれれば良いが。
女性らの手伝いをしていると、それぞれ選ぶ家具に特色があって面白かった。
本棚や机を置く人もいれば、テレビにブルーレイレコーダーと安楽椅子を選ぶ人もいた。
菊間は電動マッサージチェアを自分で運んでいたのを見かけた。
そんなに疲れているのか。
一時間ほどで皆の寝室は完成した。
夕飯はビーフシチューと、あさりのトマトピラフだった。
ビーフシチューの肉は柔らかトロトロで、なんで短時間でこんなに美味いものができるのか珠子に聞いてみた。
「本当は一晩くらい煮込みたかったんですけど。今日は圧力鍋を使ってしまいました」
「使ってもいいんじゃないのか? こんなに美味いんだから」
「味がちょっと違うんですよね。今度作りますので、違いを味わってみてください」
珠子なりのこだわりがあるようだ。
俺がその味の違いに気がつくかどうかはわからないが、楽しみではある。
「やべーよ、恭平。これは美味すぎる」
「なんだ菊間。自衛隊の飯はまずいのか?」
「いや、普通に美味いよ。ただこれ食ったらもう食えなくなるかも」
当たり前のように食べていたが、珠子の料理はそうとうなもののようだ。
見れば双子も女子高生たちも、黙々と一心不乱に料理を口に運んでいた。
というか、全員がそうだった。
珠子は皆の様子を見てにこにこしていた。
美味いということをこれだけ表現されたら笑顔にもなるか。
作った料理を美味いと言ってもらうのは嬉しいものだよな。
珠子はきなこにも手作りの餌を与えていた。
ドッグフードで良いんじゃないかと提案したが、すげなく却下された。
栄養がどうとか、バランスがどうとか、犬にも必要なことなのかね?
俺にはわからない。
知らない人がいたからか隠れていたきなこだが、餌の匂いと珠子の呼びかけにより姿を現した。
「ぎゃあー! モフりみ凄いのキター!!」
「やばたにえんじゃね! かわたん過ぎてつらたんなんだけど!」
双子が叫びながら席を立つと、きなこが体をビクッと強張らせた。
そのまま双子がきなこの方へ行こうとすると、「お二人とも」と背筋がひゅっとする珠子の声が聞こえた。
珠子は目が笑っていない笑顔で双子を見ている。
「お行儀が、悪いですよ?」
「あ、は、はい」
「すみません……」
「座って、食べましょうね?」
「はい、座ります」
「ごめんなさい」
なんと。
鈴鹿以上に双子を押さえるのが上手いのか。
菊間が「やる……」と呟いたのを俺は聞き逃さなかった。
食後のデザートにバニラアイスと、ガトーショコラが出てくると、女性たちから歓声があがった。
冷凍ケーキは、人が増えたときやおめでたいときにしか出さないという謎ルールがあった。
なるほど、と思う。
こうやって美味いものを皆で囲って食べれば、仲間意識も芽生えるというものなのだろう。
俺も食べるべきなのだが甘いものは苦手なので、断ってからレストランを出た。
「うわー、きなこたん待ってってば!」
「どこ!? どこ行ったの!」
レストランの外では双子がデザートも食べずにきなこを探し回っていた。
「お前ら、ケーキとアイスあんぞ。食わないのか?」
「ケーキ!? なにそれ!」
「アイスは何味? あたしマカダミアナッツがすこすこのすこなんだけど」
「知らねえよ。つうかきなこ追い掛け回すなっての。可哀相だろうが」
「だってー、モフらせてくんないからー」
「ガンダで追いつかないとか」
「追い掛け回すから逃げんだよ。可愛がりたいなら怖がらせんじゃねえよ」
「撫でたいんだもんよー!」
「モフりてー!」
「まあ程ほどにしてやれよ。つうかアイス溶けんぞ」
「うえー、やばたんじゃん。愛理戻ろっか」
「でもケーキと混ざってワンチャン美味いんじゃね?」
「それな」
宇宙人たちは大人しくレストランへと戻っていった。
酒の貯蔵庫となっている中華レストランへ行き、酒瓶ひとつとグラスを拝借する。
それから俺の寛ぎスペースである八階のベランダへと向かう。
今日も月は優しい光を注いでいる。
なんとも心地よい。
持ってきたタブレットの地図アプリを開きアメリカ軍の基地までの時間を調べる。
歩いて四時間ほどと出た。
往復八時間かかるとなると、日帰りはキツいか。
この基地には以前フレンドリーシップデーというイベントのときに一度入ったことがある。
俺と美香と義妹の花乃ちゃんの三人で、ひたすら肉を食いビールを飲んだ覚えがある。
ビールがもの凄く安く、どれだけ飲んだのか忘れるくらいには飲んだ。
さんざん飲み食いしたあとに、お土産で大量のトゥインキーを買ったりアンソニーピザを買ったりした。
締めのファンネルケーキは、美味そうに食べる二人を見ているだけで胸焼けがした。
基地というより一つの街のようだったアメリカ軍基地。
その中からマキシーンを見つけることができるのだろうか。
死んでいるとは思わないが、広い基地の中から見つけだすのは至難の業だろう。
そもそも友人がそこに取り残されていて、自衛隊に助けを求める状況とはどのようなものだ?
そこにマキシーンが一人で行ってなんとかなるのか?
アメリカ軍の空母は本国に帰ったが、残った人々もいるだろう。
自衛ができないほどに壊滅的なのか?
情報が不足しすぎている。
行ってみなければ何もわからない。
それこそ、出会った人に腕を見られて、化け物と思われて銃で撃ち殺されてもおかしくないだろう。
どれだけ危険かはわからないが、必ずマキシーンを見つけ出してこの腕について聞き出さなければならない。
そう決意をして、グラスの中身を飲み干した。




