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93 実は高等技術なんだって



 最初はお父さんが失敗しちゃったけど、それからの狩りはうまく行った。


「魔法って、便利なんだなぁ」


 お父さんがそんな風に言う通り、魔法の射出場所を変えることができるようになったおかげで、あんまり大きな傷をつけなくてもブレードスワローを簡単に狩れるようになったんだよね。


「ところで、ルディーン。お前マジックミサイルって魔法ばかり使ってるけど、その他に使える魔法は無いのか?」


「ううん、あるよ。でも、殆どの魔法がブレードスワローの狩りには向かないんだ」


 これ以外の攻撃魔法は威力が高すぎて獲物が傷だらけになっちゃうし、弱体系の魔法だと目が見えなくなるとか毒を相手の体に入れて弱らせるって魔法もあるけど、目が見えなくなってもその瞬間に飛んで逃げちゃうだろうし、お肉を食べるつもりなんだから毒なんてもってのほかだ。


「一応こんな風に、なるべく傷をつけずに獲物を捕まえるのに向きそうな魔法でスリープって言う相手を寝かせちゃう魔法があるんだけど、これもブレードスワローには使えないんだよね」


「何故だ? 寝てしまったら捕まえるのも簡単だろう?」


「だってさ、その魔法が効いてブレードスワローが寝ちゃったら木から落ちるでしょ。そしたら起きちゃうじゃん。結局逃げられるから、マジックミサイルが一番なんだ」


 もっと高レベルになって麻痺させる雷魔法スタンを覚えたら傷をつけずに生け捕り出来るようになるかもしれないけど、あれは攻撃範囲がマジックミサイルより狭いから使うとなるとサブジョブのレンジャーのレベルをもっと上げないといけないだろうね。



 こんな事をお父さんと話しながら森を歩き回る事2時間。僕たちは合計5匹のブレードスワローを狩る事ができた。


「お土産用に2匹余分に獲れたし、そろそろ帰るか?」


「うん、いいよ」


 元々来る予定がなかったんだから、これ以上居たら村に帰るのが遅くなっちゃうもん。と言う訳で森を出る事になったんだけど、その時思ったんだ。


「ねぇお父さん。このまま手ぶらで帰ったりしたら、おかしいってみんな思わないかなぁ?」


「なるほど。確かに、そう言えばそうだなぁ」


 僕たちが前にこの森に来た時はジャイアントラットとかブレードスワローをいっぱい狩ったよね。それなのに2時間も森に居て何も狩らずに帰ってきたら変だと思うんじゃないかなぁ?


 と言う訳で近くを探知魔法で調べたんだけど、そしたら近くにジャイアントラットと僕がまだ狩った事無いやつだからどんなのか解んないけど、そこそこの強さの魔物が何種類か居る事が解ったんだ。


「どうする? 知らない魔物を狩ってみるか?」


「ううん。あんまり遅くなるとお母さん心配しちゃうし、簡単に狩れるジャイアントラットがいいと思う。それにジャイアントラットは大きいから、持ってたら獲物を狩って帰って来たって感じがするもん」


 と言う訳で、まだしらない魔物は無視してジャイアントラットの元へ。


 いつものようにマジックミサイルで頭を撃ち抜いた後、木に吊るして血抜きをしてから僕たちはそれを持って森を出たんだ。




「本当に助かったわ。ありがとうね、ルディーン君」


「えへへっ」


 ブレードスワローを借りたマジックバッグに入れておいたおかげで何事も無くイーノックカウへ帰ってこれた僕たちは、そのまま冒険者ギルドへ顔を出してルルモアさんに獲って来たよって声をかけたんだ。


「でもさ、最初にお父さんが大きな声を出さなかったらもっと早く獲ってこれたんだよ。それに最初にブレードスワローを見つけた場所の近くには後何匹かいたから、もしかしたらもっといっぱい獲れてたかも」


 この僕の話を聞いて、


「いやいや、こんなに早く5匹も狩ってくる事自体凄い事だから」


 って言いながら笑うルルモアさん。それにお父さんも、自分は悪くないって言うんだよね。


「それは仕方ないだろ。今まではすぐに出てた魔法が、呪文を唱えても出なかったんだから」


 それはそうなんだけど、最初の1匹が逃げちゃった場所の近くには後3匹くらい居たから、あの時お父さんが声を出さなかったら1時間もかからずにこれくらい獲れてたと思うんだ。


「えっと、それはどういう事かな?」


 そんな事を考えてたら、ルルモアさんが急に変な顔をしてこう聞いてきたんだよね。


 でも、それって何の事だろう? よく解んなかった僕は、さっき何を話してたのかを思い出す。


 えっと、確かお父さんが大きな声を出したから時間が掛かったんだって話したんだよね? って事は大きな声を出したら何で時間が掛かるのか聞きたいのかなぁ。


「えっとね。お父さんが大きな声を出したから、ブレードスワローが驚いて逃げちゃったんだよ。でね、その時近くには後何匹かいたんだけど、それもみんな驚いて逃げちゃったんだ。だから時間が掛かったんだよ」


 と言う訳で、僕はお父さんが大きな声を出したら何で時間が掛かるのかをルルモアさんに教えてあげたんだ。


 ところが、僕の説明を聞いてもまだ変な顔をしてるルルモアさん。


 う~ん、今の説明では解らなかったのかなぁ?


 僕はそう思って、どう言ったら解るのかなぁ? って頭をこてんと傾けたんだ。


「ああ、ルディーン君。そうじゃないの。私が聞きたかったのは、どうしてブレードスワローが逃げたかじゃないのよ」


 そしたら、そんな僕の姿にルルモアさんは慌てて何で変な顔をしてたのか教えてくれたんだ。


「さっきカールフェルトさんが、ルディーン君が呪文を唱えてもすぐに魔法が発動しなかったって言ったでしょ? その理由が聞きたかったのよ」


 ああそっか、そう言えばルルモアさんは僕がしゃべった後じゃなくってお父さんがしゃべった後にどう言う事? って聞いたっけ。


 失敗、失敗。


「えっとね、ブレードスワローを狩る時にあんまり傷が付かないように獲ってきてねって言われたでしょ? だから、一番傷が目立たない胸に当たるように魔法の発動場所を調整できるようにしたから、すぐには発動しなかったんだ」


 と言う訳で、今度こそルルモアさんが聞きたかった事を教えてあげたんだよね。


 ところが、何の反応も返ってこないんだ。だからどうしたんだろう? って顔を覗き込んだんだけど……あれ、何でそんなびっくりした顔してるの?


「ルルモアさん、どうしたの? 僕、なんか変なこと言った?」


「へっ、変なことも何も……」


 ルルモアさんはそう言うと、一度心を落ち着かせるように大きく深呼吸。そして震える声でこう言ったんだ。


「攻撃魔法の射出場所変更って、魔法使いの高等技術。それも奥義に近いことなのよ。ルディーン君、君はどうしてそんな使い方を知ってるの?」


 ルルモアさんが言うには、本当なら攻撃魔法の発動場所を変えられるようになるまでには、かなり長い間の練習が必要なんだって。


 帝都の魔法師団に所属する人や、冒険者なら少なくともBランク、普通ならAランク以上のチームに所属する魔法使いくらいしか使えないような高等技術だから、少なくともこのイーノックカウで使える人は居ないそうなんだ。


 そう言えば錬金術ギルドでロルフさんたちが、他のみんなは僕みたいにステータスを開けないって言ってたっけ。


 なら僕と違ってステータス画面で設定を変えるなんて事はできないのに、ちゃんと発動場所を変えられるようになるんだ。


「みんな魔法を使ってるだけで発動場所を変えられるようになるんだね。凄いなぁ」


「えっ? ええ、発動場所を変えられるのは確かに凄い技術よ。私も今まで使える人を数人しか見たこと無いもの」


 そっか、やっぱりBとかAランクの冒険者って凄いんだね。一度でいいからそんな人たちに会ってみたいなぁ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 因みにこの物語の設定にある基準で言うと、ハンスさんは現在Bランク上位の強さを持っています。

 と言うか後少しでAランクにとどきますし、ルディーンの姉のヒルダにいたってはもうAランク下位相当のレベルに到達しています。


 案外身近に居るよ、それくらいの人w


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 流石に100ポイント近くは難しいかもしれませんが、もし応援していただけるのでしたら、下にある評価を入れて頂けると本当にありがたいです。


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