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86 大人たちの話し合い

 PVの累計が10万アクセスを超えました!

 これも皆読んで下さっている方々のおかげです。


 また、評価やお気に入りの登録、それにいつも感想や誤字報告をいただき、本当にありがとうございます。


 これからもよろしくお願いします。


 僕とロルフさんたちとの特許についてのお話は終わったんだけど、なんかお父さんとは別のお話があるみたい。


 と言う訳で、僕はちょっとの間大人たちから離れて一人でいる事になったんだ。


 でもそんなに長い間お話をするわけじゃないから、お外には出ちゃだめなんだって。う~ん、となると錬金術ギルドの中を見て回るくらいしかやること無いなぁ。


 だから僕はバーリマンさんが作ったって言うアミュレットや、乾燥してある薬草を見始めたんだ。



 ■



「カールフェルトさん。今回のルディーン君の事なのですが」


「何か問題がありました? 俺はルディーンと違ってこの手の事はさっぱりなもので、何かを聞かれたとしてもお答えできるかどうか」


「いえ、特許の内容には問題はありません。ただ、どうやらルディーン君は錬金術ギルドとは別に、冒険者ギルドでもなにやら新発見をなさっているようでして」


 そう、今ルディーン君の冒険者ギルドカードを調べた所、帝国内の全冒険者ギルドに通達するほどの発見を成しているみたいなのよ。


 そしてその功績で帝国とギルド、両方からの褒賞金と情報提供料として毎年発行される技術教本の売り上げからお金が振り込まれる事になっているみたい。


 ただ、そうなっているらしいのだけど、


「その発見が国に報告されてから一度もルディーン君が冒険者ギルドに行っていない為にその手続きができていないようなのです。ですから、この後冒険者ギルドにも一度寄って貰いたいとの事です」


「ええ、解りました」


 カールフェルトさん曰く、折角この町に来たのだから挨拶のために一度は顔を出すつもりだったみたいね。


 余計な世話を焼いた形にはなったけど、一応通達文として出ているものだからこれは仕方が無いだろう。


 でもルディーン君、一体何を発見したんだろう? 国やギルドから褒賞金が出る事はたまにあるけどその金額の桁が……まぁ魔道回路図の事もあるし、大人が今まで気が付かなかった事に偶然気が付いてそれを無自覚にしゃべってしまったのだろう。


 しかしルディーン君、これから錬金術ギルドから入る特許料とは別にこれだけのお金が入るのね。


 身を持ち崩さないといいんだけど。


「後ですね、今回の魔道回路図についての特許と雲のお菓子製造機の特許により発生するお金ですが、ルディーン君のギルドカードに振り込んでも問題は無いでしょうか? もし問題があるようなら親御さんのギルドカードにルディーン君名義であると記載してある年齢までは預かると言う方法もありますが」


「ああ、その事なら大丈夫です。ルディーンの奴、魔法で獲物を簡単に狩ってしまうからそこそこの金がすでに入っているんですよ。ですから冒険者ギルドに頼んで成人するまでは預金残高を見ることができないようになってますし、一日に使える金額も上限を設定してありますから」


「まぁ、すでに対処していたのですね」


「ええ。先日もブレードスワローを数匹狩ってしまって。あれだけでも子供の小遣いとしては大きすぎますからね」


 ブレードスワロー? ちょっと待って、あれって高ランクの狩人ジョブを持った冒険者でも中々狩れないって話じゃ? それも数匹って。


 あまりの事に言葉を失っていると、


「ふむ、ルディーン君は探知魔法とやらを開発しているそうじゃから見つける事は容易かろう。おまけに狩りは弓ではなく音がしない魔法で行うのだから、その話もうなずけると言うものじゃて」


 横で話を聞いていた伯爵様がそんな事を言い出した。


 探知魔法? 聞いた事も無い魔法だけど、もしかしてそれが先ほどの冒険者ギルドの新発見なのだろうか。


「あれは便利ですよ。うちの村近くの森でも、ルディーンのおかげで狩りがかなり楽にできましたから」


「うむ。わしもルディーン君からやり方を聞いて習得しようと思ったのじゃが、どうにも難しくてのぉ。もしかすると何か習得に条件があるのかもしれんな」


 あら、方法を教えてもらっても習得できないのなら、それが元で褒賞金が出る事は無いわね。


 ならそれとはまた別の事なのかしら? まぁこの手の物は発見者の名前共々後々冒険者ギルドが発表するだろうから、それを待てばいいか。


 ルディーン君を待たせてることだし、話を元に戻そう。


「ロルフさん、この話はこの辺で。では話を戻します。ルディーン君の特許に関してですが、雲のお菓子を作る魔道具に関しては魔道具職人が1台製造するごとにお金が振り込まれます。ですから周りに情報が広まるまでの間はそれ程多くのお金は発生しませんが、このお菓子が帝国全土に広まった場合はかなりの金額になるのでご注意ください」


「それ程ですか?」


「ええ。この雲のお菓子は少量の砂糖からでもそれなりの量が作れますから、貴族が口にするようなお菓子には手が出ないような層でも買うことができますからね。それなりの数が、それもかなり長い間作り続けられると思いますよ。しかし、そんなものは実は大したことではありません」


「うむ、ルディーン君が齎した情報は、そんなはした金とは桁が違う利益を生み出す事じゃろうな」


 そう、彼が齎した魔石の使い方はこの世界全体の魔道具製作を大きく変える事になるでしょうからね。


「今回ルディーン君が齎した二つの情報、複数の魔石を組み込んで一つの魔道具を作るという方法と、一つの大きな魔石で同時に複数の魔道具を動かすことができると言う情報は毎年更新されて再発行される魔道具全集に収録されます。この全集に載せるほどの発見を一つだけでもする事ができれば、たとえ貴族並みの浪費生活を送ったとしても一生お金には困らないと言われているのに、それを彼は二つも齎したのですからね」


 平民の場合、大商店の頭取の家であっても一月に使うお金の平均は金貨120枚ほど。それに対して貴族は一番下の騎士爵でも金貨300枚は必要だと言われている。


 そうは言っても彼らは別に浪費しているからこれ程のお金が掛かっているわけじゃなくて、使用人や家臣に対する給金を払ったり、社交シーズンに行うパーティーなどにお金が必要だからこそ、これだけのお金が必要なんだけどね。


 でも、そんな貴族と同じくらいのお金を使っても問題なく生活ができると言うのだから、魔道具全集に載る様な発見をすると言う事がどれだけ凄い事か解るだろう。


「えっと、二つともですか? でも一つの魔石で複数の魔道具が動かせるのなら、最初の複数の魔石を一つの魔道具に組み込む事が出来るって言う方は意味が無いんじゃないかと俺は思うのですが」


「いえ、そうではありません」


 一つの大きな魔石さえあれば、確かに複数の魔道具を動かせる。でも、場合によってはそうする方が非効率的な場面も出てくるのよね。


「例えば今回の雲のお菓子製造機のように小さな魔石があれば両方動かせると言うのであれば、一つの魔石で動かすほうが効率的でしょう。しかしこれが大きな力を必要とする魔道具となると話は変わってくるのです」


「えっと、一体どういう事でしょう?」


「そうですねぇ、先ほどルディーン君がこの街で見たという複数の魔道コンロとオーブンが付けられた業務用の調理用魔道具を例にしてお話ししますね。多くの食材を一度に調理するには大きな火力が必要な為、この魔道具を作るのにはAランク以上の魔物から獲れる大きな魔石を使用しています。ですがそれ程貴重なものを使わなければならない為に、魔石の値段だけでも金貨千枚を超えてしまうんですよ。そして、今の魔道具の構造ではスイッチを入れると一つのコンロしか使わなかったとしても全てを稼動させた時と同じだけの魔力を消費するので、毎日かなりの量の魔道リキッドを消費しているのです。しかし、ルディーン君が齎した情報を元に魔道具を作った場合はこの状況が大きく変わります」


「うむ。ご子息が齎した情報をこの例に当てはめると、大きな魔石を使っていても魔道回路図が別々であれば、使うものにだけ魔力を送り込めばよくなるから魔道リキッドの消費が抑えられる。じゃがのぉ、これだけじゃと貴重な魔石を使っている事には変わらぬから魔道具本体の値段は変わらぬのじゃよ」


 そう、この方法では魔道リキッド代が節約できるようになると言うだけで、大本の魔道具の値段はそのままだから余程大きなレストランや一流の宿しか導入できないのは変わらないのよね。


 でももう一つの情報、一つの魔道具に複数の魔石を組み込めるのなら話は変わってくるの。


「それに対して一つの魔道具に複数の魔石を組み込めるとなると、二つのコンロとオーブン、それぞれに魔石をあてがって作ればそれ程貴重な魔石を使わなくても、そう、Bランク以下の魔物から取れる魔石でも作れるようになります。ですから一個あたりの魔石の値段が金貨200枚位に抑えられるから金貨400枚以上値が下がるんですよね。ですからむしろこの複数の魔石を一つの魔道具に組み込むアイデアの方が価値は高いと私たちは考えているのですよ」


「それにのぉ、ルディーン君は魔道リキッドを使った誰でも使える雲のお菓子製造機を村においてきたと言っておった。母親でも作れるようにと言っての。これはわしの予想なのじゃが、そちらは一つのスイッチで動くようになっているのではないか?」


「えっ? ええ、出発する前に見せてもらいましたが、確かにそうなってましたね」


「やはりか。ではルディーン君は複数の魔道回路図を制御する回路図も組み込んでいると言う事じゃ。これがあれば魔道具はより簡単に、誰でも使えるようになるじゃろうな」


「伯爵! なるじゃろうなじゃありません。それもかなりの発見じゃないですか! ルディーン君、ちょっと来て」


 私は入り口付近でアミュレットを見ていたルディーン君に急遽声をかけた。その制御回路図の有無を確認する為に。


「なあに? お話、終わったの?」


「いえ、ちょっと教えてもらいたい事があってね」


 そして聞いてみたところ、ルディーン君はあっさりと、


「当たり前じゃないか。それがなかったら魔道具オンチのお母さんじゃ雲のお菓子を作れないし、なによりいろんな魔道具をいっぺんに動かそうと思ったらその回路図が付いてないと困っちゃうもん」


 って言い放ったのよね。


 まったく、この子は。


 その制御回路図がどれだけ凄いものなのか、全然解って無いんだから……。


読んで頂いてありがとうございます。

 

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