8 時が経ちました
時は流れ、僕は7歳になりました。
まぁ、とは言っても後数日で8歳になるんだけどね。
実の所、この4年で僕の周辺環境は色々と変化しています。
その中でも、まずは僕の近況から。
日課である魔法の練習は4歳の頃から毎日ずっと続けていたんだけど、未だに一般スキルさえ付いてないんだよね。
一応ステータスは、
ルディーン
Lv0
ジョブ
サブジョブ
一般職
HP :14
MP :36
筋力 :12
知力 :15
敏捷 :10
信仰 :13
体力 :12
精神力 :18
物理攻撃力 : 6
攻撃魔力 :11
治癒魔力 :10
と、キャリーナ姉ちゃんが7歳だった時よりも数値は上回っているんだけど、これはただ単に特に鍛えようとしていなかったキャリーナ姉ちゃんと意識してステータスをあげようと考えてた僕との差でしかないと思うんだ。
だってその証拠に、キャリーナ姉ちゃんは僕より後から魔法の練習を始めたのに、もう一般職の見習い神官を習得しているもの。
ただ、ライトとかの魔法使いの練習はつまらなかったらしくて、早々にやめてしまったから見習い魔法使いはついてない。
マジックミサイルみたいな攻撃魔法も一応教えてみたんだけど、見習い魔法使いがついていない状態では石を投げた方が威力があるって言うくらいしょぼいから、剣や弓の練習を始めているキャリーナ姉ちゃんからするとまるでやる気が起こらないんだってさ。
でも、お姉ちゃんには付いたのに何んで僕に見習い職が付かないんだろう?
始めた時期だけじゃなく、お姉ちゃんより僕の方がどう考えても魔法の練習を頑張っていると思うんだけどなぁ。
……僕、魔法職に向いていないのだろうか?
あと、この4年間で大きく変わった事がある。
それは僕が魔道具を作れるようになったということ。
魔道具っていうのは魔物の体内にある魔石と呼ばれる物を核にして作られる魔法の道具のことで、それらは自分の魔力や魔石から作られる魔道リキッドを燃料にして動くんだ。
因みに、この魔道具作成は魔法が使えればそれ程難しい事じゃなくて、作り方の本を読んで勉強すれば大体の人が作る事ができるようになるみたい。
その証拠にキャリーナ姉ちゃんでも作れたからね。
それでその製作に必要な魔石なんだけど、倒した魔物の強さによって手に入る大きさが変わるらしくて、例えば弱い魔物の代表みたいなホーンラビットからも取れることは取れるけど米粒くらいの大きさだから、そんな物を核にしても実用的な道具を作る事はできないんだよね。
だからある程度の大きさがないと魔道具の核にはならないし、またその大きさで作れる魔道具の性能も大きく変わるんだ。
例えばお湯を沸かす魔道具を作ろうと思った場合、おなべで湯を沸かしたり料理を作ったりする程度の魔道コンロなら12レベルの戦士ジョブを持っている人が一人で何とか倒せる程度の魔物から取れる魔石を加工したものでも作れるけど、お風呂の湯を沸かすほどの魔道ボイラーを作ろうと思うと18レベルくらいの冒険者がPTを組んで倒さないといけないような魔物から取れる魔石を使わないとできないと言う具合にね。
だからホーンラビットのような弱い魔物から取れる魔石は簡単なおもちゃか、魔道リキッドの材料にするくらいしか使い道がないんだ。
でもまぁ魔道リキッドがないと魔力を操れない人が魔道具を使えなくなっちゃうから、そんな小さな魔石でもかなりの需要があるんだけどね。
で、僕が作った魔道具だけど、それほど大それたものは作ってない。それはそうだよね、だって大きな魔石は高くて手に入らないもの。
そんな僕が最初に作ったのは、風が無くても回り続ける風車。
何故こんなものを作ったのかと言うと村の図書館に置いてあった魔道具作成の本に作り方が書いてあったのと魔物から取れたそのままの魔石でも回転などの動作系は問題なく作れること、それにホーンラビット程度の魔石でも作る事が出来るくらい簡単なものだったからなんだ。
本を見ながら実験的に作ってみるのは、どんなものだって最初はどう作っていいのか解らないのだから当然だよね。
それで魔道具作りの基礎をある程度知った僕は、そのあとの1年ほどは小さな魔石を使って色々と試行錯誤した。
そしてその苦労の末に作り出した僕の代表的な魔道具が、今ではグランリルの村の殆どの家においてある魔道具、台車式草刈機なんだ。
あっ、とは言っても別に草刈機を開発した訳じゃないよ
この世界にも前から草刈機はあったんだけど、それは開墾をする為の強力な奴で、なおかつ刃がむき出しのものだったから子供の僕に作れるはずも無ければ、もし作れたとしても危ないからと取り上げられたと思う。
でも僕はなんとか草刈機を手に入れたかったんだよね。
と言うのも、グランリルの村での子供の代表的なお手伝いが庭の草むしりだったからなんだ。
あれ、大変なんだよ。
子供の力じゃ根っこまでは抜けないから取ってもすぐに生えてくるし、範囲が広いからあっちへ行ってはしゃがんでむしり、こっちへ行ってはまたしゃがんでむしるって感じで、1時間もやるとへろへろになっちゃう。
だからそれをなんとか楽にできないかなぁと思ったわけだ。
そこで思いついたのが車輪のついた箱の中で刃がくるくる回って草を刈るっていう、台車式草刈機なんだよね。
これなら刃がむき出しじゃないから危なくないし、何かをまわす魔道具は風車で経験済みだったから作り方も解るしね。
それに核になる魔石も山や荒野に生えている太い草や蔓と違って、庭に生えている子供の手でもむしれる程度のやわらかい草を刈るだけだから、それ程大きなものじゃなくてもいい。
そりゃ風車よりは大きいものが必要だけど、お父さんやお母さんが狩った魔物の魔石でも十分だったから、それを一つ貰って作ったんだ。
初めてその草刈機を使った時は感動したよ。だって、もうしゃがまなくてもいいんだもん。
調子に乗ってガラガラと台車を押して回ったから、その後の刈った草を片付けるのが大変だったくらいだ。
ところがそれを作ってからが大変だった。
それを見た大人たちがこれは便利だって言い出して台車を改良、効率よく刈れるように前の方を櫛のようにして草を引っ掛けるようにしたり、台車の取っ手を伸び縮みするようにして大人でも子供でも使えるようにしてしまったんだ。
そしてその台車に魔道具を仕込むのは当然僕の仕事で……変なものを開発すべきじゃないって、あの時は本気で思ったよ。
だって、その魔道具を作るのに毎日MPを使い切るから、村中の家に行き渡るまで魔法の練習ができなかったくらいなんだもん。
まぁ、懲りずにこっそり別の物を作ったりもしてるんだけどね。
回転するものならすぐに作れるから、扇風機とか泡だて器とかを作って家の中だけで使っていたりする。
特に泡だて器はお母さんに大好評なんだけど、絶対に他の人に見せてはダメって言ってあるんだ。
知られたら最後、間違いなく草刈機の二の舞になるからね。
僕はまだ回転を利用した魔道具くらいしか作れないけど、何時かはいろいろな物を作りたいなぁなんて考えているんだ。
魔道具って要するに魔法を魔石の力を使って誰でも使えるようにした道具ってことだろうから、将来町へ行って大きな図書館で魔道具の作り方の上級編みたいな物を読むことができたら、冷やす魔法で冷蔵庫やクーラーとか作れたらいいなぁなんて思うんだ。
あっ、でもクーラーは風と氷の魔法がいるからなぁ。もしかしたら複数の魔法を一つの魔道具で使う事はできないかも。
その場合の事も、今から考えておかないといけないね。
ああ、夢が膨らむなぁ。
読んで頂いてありがとうございます。
少しずつ、ブックマークが増えていくのが見るのが楽しみな今日この頃です。
もし気に入ってもらえたら、続きを書くモチベーションになるので入れてもらえるとありがたいです。