784 すっごい魔法を使えるわけじゃないのか
ギルドマスターのお爺さんが、ゴブリンをやっつけるのを手伝って欲しいって言ったもんだから僕はすっごくびっくりしたんだ。
「えっ! 僕、ゴブリンをやっつけに行っていいの?」
「ダメに決まってるだろ」
でもね、お父さんはやっぱりダメって言うんだもん。
それにギルドマスターのお爺さんにも、こう言って怒ったんだ。
「ギルマス。こんな小さな子供を巻き込む気か? 何より、シーラが許すはずないだろう」
「いやいや、最後まで話を聞け。別にルディーン君を戦いに駆り出そうという訳じゃない」
そしたらギルドマスターのお爺さんは大慌てで違うよって。
でも、さっき僕に手伝って欲しいって言ったよね?
だから僕もお父さんもよく解んなくって、頭をこてんって倒したんだ。
「さっきルディーンの魔法の力を借りたいと言っていただろ。それはつまり、ルディーンにゴブリン退治を手伝わせるってことじゃないのか?」
「あー、手伝ってもらうのは間違いないが、それは戦闘とは違う所での話なのだ」
ゴブリンをやっつける手伝いなのに、僕は戦わないの?
何度聞いてもギルドマスターのお爺さんが何を言ってるのか解んなくって、僕はルルモアさんの方を見たんだよ。
だってルルモアさんは冒険者ギルドの受付をしてるもん。
ギルドマスターのお爺さんとは僕たちよりもずっと長く一緒にいるから、きっと何を言ってるのか解ってると思ったんだ。
でもね、
「えっと、それはもしかしてルディーン君の治癒魔法を期待しているのですか? それなら私も反対です」
「ルルモアよ。見当違いのことを言って場を混乱させるではない」
ルルモアさんもよく解ってなかったみたいで、逆にギルドマスターのお爺さんに怒られちゃったんだ。
「まったく。解るように説明をするから、まずはわしに話す間を与えぬか」
「ああ、そう言えばそうですね」
お父さんもルルモアさんも、ちゃんと教えてもらえればギルドマスターのお爺さんが何を言ってるか解るでしょ。
だから二人とも黙ってお話を聞くことにしたんだ。
「わしがルディーン君の魔法の力を借りようと思ったのは、今回の件で知恵を借りに言った相手の提案なのだ」
「相談相手と言うと、フランセン様ですか?」
「うむ。それと錬金術ギルドのバーリマン様だ」
ギルドマスターのお爺さんはね、ロルフさんが今日もきっといるだろうと思って錬金術ギルドに行ったそうなんだよ。
そしたらバーリマンさんも一緒にいたから、二人に相談したんだってさ。
「なるほど。あの二人ならルディーンが魔法を使えることを知っているな。でも、ルディーンをゴブリン退治に関わらせるなんて提案をよくあの二人がしたな」
「この提案を頂けた条件が、ルディーン君を戦場に決して近づかせないというものだったからな」
ロルフさんたち、僕がゴブリンをやっつけに行くの反対なんだって。
でも僕、ニコラさんたちを助けた時に魔法でやっつけたことあるんだよ。
だから大丈夫なのにって言ったんだけど、ロルフさんたちはそのことを当然知ってるけどダメって言ったんだよってギルドマスターのお爺さんは教えてくれたんだ。
「フランセン老からしたらかわいい孫のような存在だからな。森での遭遇戦ならともかく、集落を攻略する凄惨な戦いになど行かせたくないと思うのは当然だ」
「シーラが反対しているのと同じ理由だな。あっ、もちろん俺も同じ理由で反対してるんだぞ」
そう言って僕の頭をなでるお父さん。
そっかぁ。じゃあ僕もいっしょに行きたいって言っても絶対ダメって言われちゃうよね。
「でも、それならルディーンは何をするんだ?」
「うむ。これはフランセン老に聞いた話なのだが」
ギルドマスターのお爺さんはそう言うと、僕のお顔を見て聞いてきたんだよ。
「ルディーン君。クリエイト魔法が使えると言うのは本当か? 具体的に言うと木、石、金属の三つを高い練度で使えるとフランセン老は言っておったのだが」
「うん、使えるよ。村の僕んちでかまどとか作ったし、ここに来る時に使ってる馬車も僕の魔法で輪っかとか作ったし」
僕がエッヘンってしながらそう言うと、ギルドマスターのお爺さんはちょっとびっくりしたお顔に。
「フランセン老から聞いた話と合致するから疑っているわけではないが……ハンス、それは事実か?」
「ああ。ルディーンは砂から石を作ったりできるし、木の加工なんかも魔法でするぞ」
「それにいつも持ち歩いてる鉄の塊で、いろんなものを作ったりしてるよな」
お父さんの後にディック兄ちゃんがそう言ったもんだから、ギルドマスターのお爺さんは納得したみたい。
「それならば提案したいのだが、そのクリエイト魔法を使ってバリケードを壊す道具を作ってはもらえぬか?」
「道具と言うと、攻城兵器のような物か?」
「いやいや、そんな本格的なものを望んでいるわけではない。力の強い冒険者が振り回す大きな石や金属塊を使ったハンマーや、バリケードにぶつけるための車輪を付けた太くて重い丸太のような物。パッと思いつくのはそれくらいだが、とにかくバリケードを突破するための道具を作って欲しいのだ」
ギルドマスターのお爺さんが言ってるのがどんなのか解んないけど、形を教えてもらえるなら魔法で作れるかも。
そう思った僕はすぐにいいよって言おうとしたんだけど、その前にお父さんがやっぱりダメって言いだしたんだ。
「ギルマス。こんな小さな子が攻城兵器を作る魔法が使えると知られたらどうなるか、あんたにも解るだろう。親としてはとても許可はできんな」
「ハンスよ。それくらいわしにだって解っておるわ。木材や金属塊などの資材はマジックバッグで持ち込むし、作業する場所もゴブリン集落から少し離れた場所を用意するつもりだ。そこでなら冒険者たちにルディーン君の魔法を見られる心配はなかろう?」
ゴブリンの村がある洞窟には見張りの冒険者さんがいるけど、普段はあんまり人が来ないとこだからちょっと離れれば誰かが通りかかることはないでしょ。
だから武器を作るのを手伝ってもらえないかってお願いしてくるギルドマスターのお爺さん。
「お父さん。僕がお手伝いするの、やっぱりダメ?」
「う~ん、それなら俺は反対する理由はないが……シーラがなんと言うかなぁ?」
お父さんがそう言うと、お兄ちゃんたちも困ったようなお顔で反対しそうだなぁって。
「じゃあさ、お母さんがいいよって言ったらお手伝いしていい?」
「ああ。俺はいいと思うぞ」
「やったぁ!」
ホントはすっごい魔法でゴブリンたちをやっつけたいけど、それはダメって言われちゃったでしょ。
でも僕が作ったすっごい武器でやっつけることができたら、僕がやっつけたのとおんなじだもん。
「お父さん。僕、すっごい武器作るから、使った時どんなだったかを後で教えてね」
「ああ、シーラが許可を出してくれたらな」
よかった。
お父さんが約束してくれたから、僕はやるぞぉーってふんすと気合を入れたんだ。




