773 炊いたご飯はすぐにほぐさないとダメなんだよ
さっきノートンさんが作ったお魚を食べたでしょ。
そしたら僕、なんかすっごくご飯が食べたくなっちゃったんだ。
「ノートンさん。炊いたエリィライス、どこ?」
「ん? いよいよ、ルディーン君も料理をする気になったのかい?」
ノートンさんはそう言うと、僕を焚いたエリィライスがある場所に連れてってくれたんだ。
「ほら、これがエリィライスを炊いた鍋だよ」
「ありがとう」
ノートンさんがふたを開けてくれたから覗き込むと、お鍋の中にはつやつやとしたご飯がいっぱい入ってたんだ。
だから僕、おっきな木のさじを使って、それをかき混ぜたんだよ。
「おや、ルディーン君。何をやっているんだい?」
それが珍しかったのか、ちょっと離れた所にいたモーガンさんが聞いてきたんだ。
だから僕、こうするとおいしくなるんだよって教えてあげたんだよね。
「炊いたばっかりのご飯は柔らかいから、こうやってすぐにほぐしてあげないと粒同士がくっついちゃうんだ。だから炊き上がったら、空気が入るようにかき混ぜないとダメなんだよ」
「なるほど。ちょっとやらせてもらえるかな」
僕がうんしょうんしょっておさじでご飯を持ち上げてはほぐしてると、モーガンさんが変わってくれたんだよ。
でもすっごい勢いでかき混ぜてくもんだから、僕はおっきな声でそんなにしたらダメだよって言ったんだ。
「モーガンさん。そんなに早くやったら、エリィライスの粒がつぶれちゃうよ」
「おお、そうか。ここは優しくやらないといけないんだな」
「うん。ほんとだったら平らな丸い木のへらがあったら、もっと簡単にほぐせるんだけどね」
前の僕がいたとこにはしゃもじっていう、ご飯専用の道具があったんだ。
それはおさじと違って平らだったし、ふちっこが薄くなってたからほぐす時にご飯がつぶれにくかったんだよね。
だからその道具のことを教えてあげると、モーガンさんは何かに気が付いたみたいでお料理の道具が仕舞ってあるところへ。
でね、戻ってきたと思ったら、手に木でできたおっきなへらを持ってたんだ。
「これは鍋に残ったソースを取るのに使う道具なんだが、さっきルディーン君が言っていたものと同じ使い方ができるんじゃないかと思ってな」
「うん! ほんとだったら先っぽはおっきな丸の方がいいけど、それだったらおさじよりはエリィライスがつぶれないと思うよ」
そんなお話をしてる間に、たけたエリィライスは全部ほぐれちゃったんだよね。
ってことで、お料理開始。
「モーガンさん。さっき焼いたお肉の脂ってある?」
「おお、あるぞ」
モーガンさんはステーキを焼く時に余分な脂身を切り落としてたみたいで、ちょっと大きめのをドンって出してくれたんだ。
だからそれを小さめに切って、お皿の上へ。
次に油漬けのにんにくを何個か取り出して、ナイフの横でバンってつぶしてから細かく切ってったんだ。
「モーガンさん。準備ができたから手伝って」
「解った。何をすればいいんだ?」
「まずはねぇ」
僕はモーガンさんに小さく切った脂身を渡すと、それをフライパンで温めてもらったんだ。
そしたら透き通ってきて中から脂が出てきたから、そこにさっき細かくしたにんにくを入れてさらに炒めてもらったんだよ。
「おっ、香りが立ってきたな」
「それじゃあ、次はこれ」
そう言って渡したのは、さっきほぐしたエリィライス。
おっきなお皿いっぱいのエリィライスを脂とにんにくが絡まるように炒めて貰ったら、お塩で味付けしてもらって、
「お醤油入れるね」
そのフライパンのふちっこににんにくを漬けこんだお醤油をちょびっとだけ入れると、ジュウって音がしてすっごくいい匂いがしてきたんだ。
「最後にこれを入れて、よく混ぜたら出来上がりだよ」
そう言って僕が最後に渡したのは、油で煮た茶色いにんにくスライス。
それを入れると、モーガンさんは何度かフライパンをザッ、ザッ、て振ったんだよ。
そしたら入れたにんにくスライスが全部エリィライスにきちんと混ざって、お料理が完成したんだ。
「なかなか美味そうなものができあがったけど、これはなんて言う料理なんだい」
「えっとね、焼きにんにくご飯かな?」
僕がそう答えると、いつの間にか近くに来てたキャリーナ姉ちゃんが大笑い。
「そのまんまの名前だね」
「だって、僕も初めて作ってもらった料理だもん。名前なんて考えてないいよ」
大体どんな味になるのかは、考えた時に料理スキルが教えてくれてたんだ。
だからおしいってことは解ってるけど、お名前まではスキルは考えてくれないでしょ。
急に聞かれても僕、解んないから、そのまんまのお名前になっちゃったんだ。
そしたらそんな僕たちのお話をニコニコしながら聞いてたバーリマンさんが、モーガンさんに言ったんだよ。
「ユリウス。せっかくルディーン君が考えてくれたのだから、さめる前にいただきましょう」
「そうですね」
ってことで、みんなで焼きにんにくご飯を食べてみることに。
「ルディーン。これ、おいしいよ」
キャリーナ姉ちゃんはとても気に入ったみたいで、自分の分をすぐに食べちゃうとすぐにお代わりを貰ったんだ。
それにね、クリームお姉さんもこのご飯が気に入ったみたい。
「最初に結構な量の脂身を入れていたから少しくどいかと思ったけど、そうでもないのね」
「エリィライス自体が淡白な味わいであるというのもあるでしょうが、最後にルディーン君がいれたショウユの味と香りがくどさを押さえてくれているのだと思いますよ」
モーガンさんの説明を聞いて、なるほどねぇと納得しながらお代わりを貰うクリームお姉さん。
そしたらさっき作った分が無くなっちゃったもんだから、モーガンさんがすぐにお代わりを作り始めたんだ。
「ノートン。付け合わせを頼む」
「了解だ」
それにノートンさんが一緒に食べるおかずを作ってくれたもんだから、今日はにんにくを漬けた物の味見のはずだったのに普通のご飯くらいの量になっちゃった。
「僕、もうお腹いっぱい」
「本当はお昼ご飯のお店を聞きに来たのに、いらなくなっちゃったね」
僕とキャリーナ姉ちゃんがお話してる通り、みんなもうお腹がパンパンだもん。
おいしいお店を教えてもらっても食べになんていけないし、お腹がいっぱい過ぎて動けないから今日はそのままお家に帰ることになっちゃったんだ。
そして、その夜。
「シーラ。お前たち、一体どれだけにんにくを食べたんだ?」
「レーアたちも、ものすごく臭いぞ」
ゴブリンの村をやっつけに行って帰ってきたお父さんたちが僕たちを見て、こんな臭くなるほどにんにくを食べるなんてってちょっと嫌なお顔になっちゃったんだ。




