725 お塩の味のポップコーンが甘かったのはバターのおかげなんだってさ
僕が作ったのと違ってるけど、このポップコーンだっておいしいんだよ。
だからみんなで自分のポップコーンをもぐもぐしてたんだけど、その時ふと思ったんだ。
「そう言えば、なんで蜂蜜味しか無いんだろう?」
ポップコーンのお店ができてるってことはバーリマンさんか、バーリマンさんちの料理長のモーガンさんのどっちかが商業ギルドに教えてあげたってことでしょ。
だったら、なんであの時一緒に作ったお塩の味やキャラメル味のポップコーンを一緒に教えてあげなかったのかなぁ?
そう思いながら頭をこてんって倒してたらね、クリームお姉さんが僕の前にしゃがんで聞いてきたんだよ。
「ルディーン君。これにはまた別の味のものもあるの?」
「うん、あるよ。僕が錬金術ギルドで作った時はね、お塩の味とお母さんに作ってもらった焦がしたお砂糖の味、それにバーリマンさんとこの料理人さんが作ってくれたキャラメル味ってのも食べたんだよ」
僕が教えてあげると、横で聞いてたキャリーナ姉ちゃんもそう言えばなんでだろうねって頭をこてんって倒したんだ。
「お塩だけの味だっておいしかったもん。なのに、なんでなかったんだろう」
「へぇ、これって塩をかけただけでもおいしいのね」
クリームお姉さんはそう言うと、手元で何かごそごそやってからポップコーンをパクリ。
そのままもぐもぐしてからごっくんすると、こう言ったんだよ。
「ルディーン君が作ったものを実際に食べたわけじゃないからあくまで予想なんだけど、塩味はバターを使わないとおいしくないのかもしれないわね」
「なんでそう思うの?」
「実はね、さっき口に入れたのはなるべく蜂蜜がかかっていないのを選んだものなの」
クリームお姉さんは、キャリーナ姉ちゃんのお話を聞いてポップコーン自体の味がどんなのか知りたかったみたい。
だからあんまり蜂蜜がかかってないのを食べてみたんだけど、そしたらあんまり味がしないなぁって思ったんだって。
「キャリーナちゃん。そのお塩がかかったポップコーンって、食べた時に少し甘く感じたんじゃない?」
「うん。お塩がかかってるのに甘いなんて変なのって思ったよ」
「バターはね、温かいものにかけると甘く感じるの。それに塩をかけると甘さをより感じるようになるから、そのポップコーンも甘いって感じたんじゃないかな?」
それを聞いたキャリーナ姉ちゃんは、だからお塩の味なのに甘かったのかぁって納得したんだよ。
「ところでルディーン君。さっき錬金術ギルドのギルドマスターかその家の料理長がポップコーンの特許を取ってくれたとも言っていたわよね?」
「うん。だって僕がポップコーンを作ったのは、錬金術ギルドのお料理するところだったもん」
これを聞いたクリームお姉さんは、ちょびっとだけびっくりしたお顔に。
「錬金術ギルドで調理をしたの?」
「うん。僕ね、その時はまだお家を買ってなかったから宿屋さんに泊まってたんだ。でも、宿屋さんだとお料理するとこを貸してくれないでしょ。だから錬金術ギルドに行って、バーリマンさんに貸してって頼んだんだ」
それを聞いたクリームお姉さんはね、ちょっとだけなんか考え事をしてからこう言ったんだよ。
「その話からすると、ルディーン君が頼めば錬金術ギルドの調理場を貸してもらえるのね?」
「だからそう言ってるじゃないか!」
僕は何でちゃんと聞いてくれないかなぁってプンプンしてたんだけど、そしたらクリームお姉さんがごめんごめんって。
「そうじゃないのよ。もし本当に借りることができるのなら、キャリーナちゃんが言ってたポップコーンを私も食べられるんじゃないかなって思ったのよ」
「そっか、材料はみんなこの近くに売ってるもんね」
お菓子を食べたから、僕たちは錬金術ギルドに帰るでしょ。
ならとうもろこしとバター、それにお砂糖や牛の乳を買ってけばクリームお姉さんの言う通りポップコーンが作れちゃうんだよね。
「ルディーン。私、あのポップコーンがまた食べたい!」
「私も食べたいかな。あれ、おいしかったし」
キャリーナ姉ちゃんとレーア姉ちゃんも、お塩のポップコーンやキャラメル味のポップコーンが食べたいみたい。
二人そろって、錬金術ギルドでお料理するところを貸してって頼んでよって言ってきたんだ。
「私も食べたいし、さっきの話からするとフランセン様はポップコーンを召し上がって無いんでしょ? 作ってあげたら喜ぶんじゃないかしら?」
「そっか。そう言えばあの時、ロルフさんはいなかったから食べてないんだよね」
ロルフさんが来たのは、僕たちがポップコーンを食べちゃった後だもん。
だから同じ日に会ったけど、ロルフさんは食べてないんだよね。
「ロルフさん、雲のお菓子をあげた時もおいしいって言ってたから、甘いものも好きだと思うんだよね」
「それなら作ってあげたら、きっとありがとうって言ってくれるよ」
僕とキャリーナ姉ちゃんはそう言って、二人でお顔を見合いながら、ねーってしたんだよ。
そしたらまたクリームお姉さんが不思議そうなお顔をしたんだ。
「雲のお菓子? 初めて聞く名前ね。それもルディーン君が作ったの?」
「そうだよ。でも雲のお菓子は魔道具が無いと作れないから、錬金術ギルドでお料理するとこを借りても作れないんだ」
魔道具があればお砂糖だけで作れるけど、今日は持ってきてないもん。
だから作れないよって教えてあげると、クリームお姉さんはちょっぴりしょんぼり。
「なんかとてもおいしそうな響きだけに、食べられないとなるととても残念ね」
「それじゃあ今度持って来るから、その時クリームお姉さんに作ってあげるね」
「うふふっ、ありがとう」
クリームお姉さんと約束した後、僕たちは露店を回ってポップコーンの材料になるトウモロコシやバターなんかを買ってったんだよ。
「そろそろバーリマンさん、帰って来てるかなぁ?」
「まだ帰ってなかったら、その時はポップコーンを作りながら待ってればいいよ」
でね、キャリーナ姉ちゃんとそんなお話をしながら、僕たちは錬金術ギルドに向かったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
話の流れから、なぜかポップコーンを作ることに。予定していなかった展開なので、正直どうなるか私自身もドキドキ。
本来は普通に錬金術ギルドに帰って石のクリエイト魔法を使える人の話をして、その後にみんなでご飯を食べに行くという流れになるはずだったのになぁ。
さて、最初に謝っておきます。申し訳ありません。
本当は今週から金曜日の更新を再会するつもりだったのですが、何と来週末に泊り出張が入ってしまいました。
前回ほどハードではない予定なのですが流石に少しでも腰の状態を戻しておきたいので申し訳ありませんが今週の金曜日と、週末出張のため次の月曜日の更新をお休みさせて頂きます。
そんな訳で、次回更新は少し開いて10月10日の金曜日になります。
因みに「魔王信者に顕現させられたようです」はこの話同様、この土日に書いたのでちゃんと水曜日に更新します。そちらの方もどうぞよろしく。




