724 あれ? このポップコーン、なんか変
キャリーナ姉ちゃんにおててを引かれて歩くクリームお姉さん。
僕たちはそのうしろをとことこついてったんだよ。
そしたら前の方から、またポンポンポンって音がしてきたんだ。
「さっきより音が大きいわね。ということは、お店が近いのかしら?」
「ううん。ルディーンと作った時はもっとおっきな音がしたから、もうちょっと先だと思う」
キャリーナ姉ちゃんのお話を聞いて、ちょっとびっくりしたお顔のクリームお姉さん。
僕の方を振り向いて、聞いてきたんだ。
「お菓子を作るのに、そんな大きな音がするの?」
「うん。あれはかったいとうもろこしの粒の皮が弾ける音なんだよ。だから結構おっきな音がするんだ」
最初に作った時はお母さんやお姉ちゃんたちもびっくりしてたもん。
だからクリームお姉さんがびっくりするのもしょうがないよね。
そんなことを考えながらとことこ歩いていると、前の方に人がいっぱいいるお店があったんだよ。
でね、そのお店からまたポンポンポンって音が聞こえてきたもんだから、キャリーナ姉ちゃんがあそこだって指さしたんだ。
「きっとあの屋台だよ」
「ええ、そうみたいね」
そのまま近づくと、その屋台の人なのかな?
買う人がちゃんと並ぶようにって、ひもを使って列を作ってたんだ。
だから僕たちも、その後ろに並んだんだよね。
そしたらクリームお姉さんが、不思議そうなお顔でまた聞いてきたんだ。
「今度は見に行かなくてもいいの?」
「うん。だって、クリームお姉さんが言ったんじゃないか。蜂蜜を水に溶かしたのがかかってたって」
ポップコーンはただ塩をかけただけでもおいしいでしょ。
それなのにはちみつをかけて甘くしてあるのなら、ぜったいおいしいはずだもん。
だから見なくっても大丈夫なんだよねって、僕とキャリーナ姉ちゃんはクリームお姉さんにそう教えてあげたんだ。
「なるほど。味が解っているからこそ、確かめる必要がないのね」
「ふふふっ。うちの子たち、前にポップコーンを作った時は足りないからって後でとうもろこしの粒を買いに走ってくらいなんですよ」
「そう言えば確かに、お針子さんから貰った時はおいしかったわ」
お母さんとクリームお姉さんがお話ししてる間も、列はどんどん進んでったんだよ。
それに並んでる途中でもポンポン音がするもんだから、僕とキャリーナ姉ちゃん、それにレーア姉ちゃんは楽しみだねってにっこり。
そしてとうとう、僕たちの番がやってきたんだ。
「いらっしゃいませ。何皿ご入用ですか?」
うっすく削った木で作ったお皿を持ちながら、にっこり笑って聞いてくるお姉さん。
そんなお姉さんに、クリームお姉さんは5皿下さいって答えたんだ。
「ありがとうございます。5皿で銅貨15枚になります」
お姉さんに言われて、チャリンチャリンってお金を払うクリームお姉さん。
5皿で15枚ってことは、1皿銅貨3枚かぁ。
今まで見た新しいお菓子の中で、一番高いんだね。
そう思いながらお店のお姉さんからポップコーンの入ったお皿を貰ったんだけど、
「わぁ、すっごくいっぱい入ってる!」
そこにはポップコーンが山盛りだったもんだから、僕はびっくりしたんだよ。
そしたらそれを見たお姉さんがくすくす笑いながら教えてくれたんだ。
「びっくりするでしょ。でもそれ、一握りより少ないとうもろこしの粒しか使ってないのよ」
そう言えばボップコーンて、ほんのちょびっとの粒でもすっごくいっぱいになるんだっけ。
そんなことを思いながらお姉さんにありがとうって言って、僕たちはポップコーンの屋台を離れたんだ。
「それじゃあ、食べましょうか」
お母さんのその一言で、みんな嬉しそうにポップコーンをパクリ。
「あれ?」
「なんか違う」
でもね、キャリーナ姉ちゃんやレーア姉ちゃんがそう言って、なんか変なお顔をしながら手に持ってるポップコーンを見たんだ。
「前にルディーンが作ってくれたのと同じに見えるけど、何が違うのかなぁ?」
そう言って頭をこてんって倒すキャリーナ姉ちゃんに、クリームお姉さんが聞いたんだよ。
「私はおいしく感じるけど、キャリーナちゃんはそうじゃないの?」
「ううん、おいしいよ。でも、前にルディーンが作ってくれたのはもっとおいしかったの」
それを聞いたレーア姉ちゃんは、もう一個お口に放り込んでもぐもぐ。
「やっぱりなんか違う気がする。ねぇ、ルディーン。何が違ってるのか解る?」
「ちょっと待ってね」
僕はそう言うと、ポップコーンをつまんでパクリ。
もぐもぐしながら何が違うのかなぁって考えてたら、みんなが何でそう思ったのかが解っちゃったんだ。
「そっか。これ、バターじゃない油を使ってるんだ」
「あっ、そっか。前に作った時はバターを溶かしてからとうもろこしの粒を入れてたっけ」
僕が教えてあげたから、キャリーナ姉ちゃんもレーア姉ちゃんも理由が解って良かったねってにっこり。
そのままポップコーンを食べ始めたんだけど、今度はクリームお姉さんが僕に聞いてきたんだよ。
「えっと、ルディーン君。バターって、あれよね? 牛の乳の上澄みを専用の器に入れて振ることでできあがる」
「うん、そうだよ」
「シーラちゃん。本当にそんな高価なものを、お菓子作りに使ったっていうの?」
「ええ、まぁ」
クリームお姉さんはすっごくびっくりしてるんだけど、僕もそれを聞いてびっくりしたんだよね。
だって前に作ったポップコーン、屋台で買ったバターで作ったもん。
その時は僕もちょっと高いなぁって思ったけど、でもびっくりするほどじゃなかったんだよ。
だからそれを教えてあげると、クリームお姉さんはちょっとあきれたお顔に。
「ああ、そう言えばシーラちゃんはグランリルの村に嫁いだんだっけ」
「僕の村だと、なんかあるの?」
「あるわよ。主に金銭感覚の違いとか」
僕ね、クリームお姉さんが言ってることがよく解んなかったから、お母さんの方を見たんだよ。
そしたらお母さんも、困ったようなお顔をしてたんだ。
「どうしたの、お母さん?」
「クリームさんに言われて、そう言えばそうかもしれないわねと思って」
僕たちの村って、魔物をいっぱい狩るでしょ。
それをイーノックカウに持って来るとすっごく高く売れるから、街に住んでる人たちよりお金があるんだって。
「例えばルディーン君が話していたアマンダさんって言うお菓子職人さんがいる店だけど、あそこってイーノックカウの中では高級店と言われているのよ」
「そうなの?」
「ええ、そうよ。そこで出しているお菓子はね、この街に住む人たちではめったに口にできないほど高いの」
これを聞いた僕やお姉ちゃんたちはびっくり。
だって僕たち、アマンダさんのお店でお菓子、いっぱい食べてるもん。
「その様子だと解っていなかったみたいね。その感覚で考えたらバターなんてたいして高いものじゃないだろうけど、普通はそんなものを家庭で作るお菓子に使おうだなんて思わないのよ」
そう言えばお母さんも、バターは普通のお料理には使わないって言ってたっけ。
「じゃあ、あのバターもみんなはホントにすっごく高いって思ってるの?」
「ええ、そうね。そもそもバターって、牛の乳の上澄みを器に入れてかなりの長い時間振り続けないと作れないもの。料理人がいる家なら作ってもらえるでしょうけど、食べたいと思ったら普通はすっごく大変な思いをして作るのよ」
「そう言えば前に生クリームを売ってるおじさんが、そんなこと言ってたっけ」
生クリームを振るための入れもんを一緒に売ってた屋台のおじさんを思い出して、僕はそんなに大変ならすっごく高くってもおかしくないよねって思ったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
やっとルディーン君たちの経済観念にツッコミを入れる人が。
ただ、ルディーン君は子供だから、今一歩伝わりきれてないけどw
話は変わって、金曜日は更新をお休みして申し訳ありません。
活動報告を読まれた方は知っていると思いますが、腰痛が思いのほか長引いておりまして今も痛かったりします。
まぁ、土日は傷み出したら少し休んで、痛みが引いたらまた書くという繰り返しができるので何とか更新はできたのですがw
でも、これが長引くと困るなぁ。実を言うと前にかかっていた医者が辞めてしまったので、今はかかりつけの接骨院が無いんですよ。
これが動けないほどのぎっくり腰なら近くにある他の病院に行くのですが、前に行ったところ毎回1時間以上待たされる上に診察をして薬とシップの処方箋をくれるだけなんですよね。
動けないほどの痛みの時は痛み止めの薬はとても助かるのですが、実を言うと今くらいだとあまり効果なかったりします。
接骨院なら電気を当てたり針で治療をしてくれるのですが、痛み止めとシップをくれるだけなら薬局で買っても同じですよね。
なので今のところは市販のシップと時間薬で治そうかと思っています。
ただ仕事に支障をきたすわけにはいかないので無理ができない状態なので、もし長引くようなら次の金曜日の更新もお休みすることになるかも?
その時はまた活動報告で連絡するので、どうぞご容赦を。




