723 お針子さんにもらったおいしいお菓子があるんだって
いろんなのが入って無いパンケーキ屋さんを通り越してからも、僕たちはいろんなお店を見てまわったんだよ。
でもそっからはなかなか新しいお菓子のお店がなくって、ちょっとつまんないなぁって思い始めたんだよね。
「もう新しいお菓子のお店、無いのかなぁ?」
「全くの新商品が2種類も出ている時点で、結構珍しいことなのよ。だから本当にあの2軒しかなかったのかも」
僕のお話を聞いたクリームお姉さんはそう言ったんだけど、すぐにあれ? ってお顔をしたんだ。
「どうしたの、クリームお姉さん」
「いえね、そう言えば前にお針子さんが持ってきためずらしいお菓子があったなぁって思い出したのよ。てっきりあれも露店街で買ったのかと思っていたんだけど、見かけないってことはここで買ったものじゃないのかなと思って」
裁縫ギルドのお針子さん、買ってきたお菓子をよく持って来るって言ってたでしょ。
その時もらった一つのお菓子がおいしかったけど、それが売ってるお店はまだ見かけてないんだって。
だからクリームお姉さんは、露店街以外で買って来たのかなぁって言うんだよ。
そしたらそれが気になったのか、キャリーナ姉ちゃんが聞いたんだよね。
「それ、どんなお菓子なの?」
「そのお菓子はね、なんと言うかふわふわしてた軽い食感だったの。それにはちみつを薄めたものがかかっていたから、甘くておいしかったのを覚えているわ」
クリームお姉さんは中指と親指をちょびっとだけ広げてこれくらいの大きさだったよって言いながら、そのお菓子がどんなのだったかを教えてくれたんだ。
「そんなに小さなお菓子だったの?」
「ええ。でも結構安いらしくて、薄く削った木で作った器いっぱい入っているのに銅貨1枚で買えたと嬉しそうに言っていたわ」
卵とかが入ってないパンケーキでも銅貨2枚だったでしょ。
なのに入れもんにいっぱい入ってて、その上はちみつを薄めたものまでかけてあるのにった銅貨1枚で買えちゃうなんてびっくりだよね。
「でも、そんなに安いのなら、店を構えている所が売っているわけじゃなさそうね」
「ああ、そうか。安くて量が多いってことは、場所を取るのにもうけは少ないってことだもの。普通の店舗では経費を考えると扱えないわね」
お母さんが言ったことに頷くクリームお姉さん。
ってことはやっぱり、この露店街にあるお店なのかなぁ?
「もうちょっと探してみようよ。そのお菓子が見つかるかもしれないもん」
「私も賛成! だって食べてみたいもん」
僕とキャリーナ姉ちゃんがそう言うと、クリームお姉さんはにっこり笑顔に」
「ええ、そうね。それじゃあもう少しさが……」
ポン! ポンポンポンポン!
クリームお姉さんが探しましょうねって言おうとしたところで、ちょっと遠くから何かがはぜるようなおっきな音がしたんだよ。
だからクリームお姉さんはびっくりしてそっちの方を見たんだけど、僕とキャリーナ姉ちゃんはその音を聴いてさっきのお話しに出てきたお菓子が何か解っちゃったんだ。
「一体何だったのかしら、あの音?」
「あれはきっと、ポップコーンを作ってる音だよ」
キャリーナ姉ちゃんが教えてあげると、クリームお姉さんは不思議そうなお顔で聞いてきたんだよ。
「ぽっぷこーん? キャリーナちゃん、あれが何か知ってるの?」
「うん。だってあれもルディーンが教えてくれたお菓子だもん。とってもおいしいんだよ」
キャリーナ姉ちゃんはそう言うと、早く行こうよってクリームお姉さんのおててを引っ張ったんだ。
だからそれ以上聞けなくって、お姉さんはちょっと困ったようなお顔のまんまで歩き出したんだよ。




