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712 お父さんたちがいっしょでも心配はするんだよ

 イーノックカウの門を出て森に向かって歩いて行く冒険者さんたち。


 それを見ながら僕たちはお父さんやお兄ちゃんたち、それとニコラさんたちにいってらっしゃいしてたんだ。


「みんな、おケガしちゃダメだよ。あっ、そうだ! もしおててや足が取れちゃったらちゃんと持って帰ってきてね。無いとくっつけられないから」


「あのな、ルディーン。俺らがいるのに、ニコラちゃんたちがケガをするはずないだろ」


 僕が真剣に心配してるのに、お父さんは頭をぽんぽんしながらそう言って笑うんだよ。


 でも、大事だからもう一回言わなきゃ。


「お父さんやお兄ちゃんたちは強いけど、ゴブリンが見えないとこからえいやぁってしてくるかもしれないもん。だからみんな、おケガしないでね」


「はい、解ってます」


 ニコラさんたちはちょっと緊張したお顔をしてるけど、お父さんたちが一緒に行ってくれるからちょっとは安心してるみたい。


 買ってもらった剣をギュってしながら、元気にお返事してくれたんだ。


「お父さんもお兄ちゃんたちもお願いね。ゴブリンやっつけるのが楽しいからって、ニコラさんたちをほっといちゃダメだよ」


「あのな、俺たちは護衛。ゴブリン退治には参加しないぞ」


 今度はディック兄ちゃんが僕の頭をポンポンしてそう言ったんだよ。


 だから僕、なんで? って頭をこてんって倒したんだ。


「ディック兄ちゃん、ゴブリンをやっつけないの?」


「それは冒険者の仕事であって、俺たち狩人の仕事じゃないからな」


 そう言えばお父さんもそんなこと言ってたっけ。


 そっか、お兄ちゃんたちはゴブリンをやっつけないのかぁ。


「じゃあ、もし僕が付いてっても、ゴブリンをやっつけなかったのかなぁ?」


「ルディーンも狩人だから、きっと僕たちと同じように参加しなかったと思うよ」


 今度はテオドル兄ちゃんにそう言われて、僕はそれなら行かなくってもいいかなって思ったんだ。


 だってすっごい魔法を使えないんだったら行く意味ないもん。


「さて、そろそろ俺たちも行くか」


「あっ。そう言えばお父さん、ゴブリンの村まで案内するってギルドマスターのお爺さんに言ってなかったっけ? もっと早く行かなくってもよかったの?」


「森の入口で一度集まってから行動することになってるからいいんだよ」


 イーノックカウから森まででも結構距離があるでしょ。


 だからほんとの集合場所はここじゃなくって、森の入口にある商業ギルドのテントの近くなんだってさ。


「それにしても早く行かないとギルマスがやきもきするから、ハンスも急いだ方がいいと思うわよ」


「そうだな。じゃあ行ってくる」


「はい、いってらっしゃい!」


 お母さんに早く行きなさいって言われて門を出てくお父さんたちを、僕は両手を振りながらいってらっしゃいしたんだよ。


 でね、冒険者さんたちに交じって見えなくなったところでお母さんが言ったんだ。


「ハンスたちも出発したことだし、私たちはおいしいものでも食べに行きましょうか」


「賛成!」


 これを聞いたレーア姉ちゃんとキャリーナ姉ちゃんは大喜び。


 でも僕はちょっとびっくりしたんだよ。


「お父さんやお兄ちゃんたち、ゴブリンの村をやっつけに行ったんだよ。僕たちだけでおいしいもの食べてていいのかなぁ?」


「あら。私たちが狩りに出かけているとき、ルディーンは村でスティナちゃんとおやつを食べてるじゃない」


 レーア姉ちゃんにそう言われて、僕はあれ? って思ったんだ。


「今日のは狩りじゃないよ?」


「そうだけど相手はゴブリンだし、村でよく狩ってるホーンラビットよりも弱いじゃない」


 森の中にいっぱいいて、いきなり襲ってくるのはゴブリンもホーンラビットもおんなじでしょって言うレーア姉ちゃん。


「村での狩りの方が危ないのに、ルディーンは私たちのこと心配なんてしたことないでしょ」


「そう言えばそっか」


 それにキャリーナ姉ちゃんにまでそう言われて、僕は納得したんだ。


「でも、何食べるの? お菓子?」


「そうねぇ」


 お菓子だったらアマリアさんのお店だけど、今日は違う所がいいかなってお母さんは言うんだ。


「イーノックカウに来てから、いつもルディーンの家で出してもらってる料理を食べているでしょ。でもせっかく食の都とまで言われているイーノックカウに居るんだから、おいしいお昼が食べたいかな」


 そう言えば僕、イーノックカウに来ても前は宿屋さんでご飯を食べてたし、お家を買ってからはカテリナさんが作ってくれるからそればっかり食べてるでしょ。


 だからちゃんとしたお店に行ってご飯を食べたこと、今まで一度もない気がする。


「僕、宿屋さんやカテリナさんのじゃないご飯、屋台以外で食べたことないかも」


「私も! 私も『若葉の風亭』かルディーンの新しいお家でしか食べたことない」


 それはキャリーナ姉ちゃんもおんなじだったみたいで、お母さんの言うイーノックカウのおいしい店に行くのは大賛成みたい。


 でもここでレーア姉ちゃんがこんなこと言ったんだよ。


「お母さん、どこがおいしいお店なのか知ってるの?」


「うっ、知らない……」


 お母さんもおいしいものが食べたいなぁって思っただけで、どこに行けばいいのか解んなかったみたい。


 だからレーア姉ちゃんに言われて、困ったなぁって言いだしちゃったんだ。


「街中には店がいっぱいあるけど、外から見てもそこがおいしい店なのかは解らないわよねぇ」


「ルディーンのお家の料理、とってもおいしいもん。あれよりおいしいとこを探すの、大変じゃないかなぁ?」


 キャリーナ姉ちゃんの言う通り、ただ歩いてるだけじゃおいしいお店なんて見つかる訳ないよね。


 だから僕もう~んって一生懸命考えたんだよ。


 そしたらいいこと思いついたんだ。


「そうだ! ルルモアさんに聞こうよ。前においしいお店をいっぱい知ってるって言ってたよ」


「ダメよ。今日はゴブリン集落の攻略で冒険者ギルドはものすごく忙しいんだから」


「そっかぁ」


 いい考えだと思ったんだけど、お仕事の邪魔しちゃダメだもん。


 だからルルモアさんに聞きに行くのはやめにしたんだ。


「お菓子だったら、いつものお店に行けばいいだけなのに」


「アマリアさんのお店、おいしいもんね」


 キャリーナ姉ちゃんの言う通り、お菓子を食べるんだったらすぐに決まるんだよ。


 でも、今行きたいのはご飯屋さんだしなぁ。


「そうだ! アマリアさんに聞いたら知ってるんじゃないかな?」


「それがダメなのよ。アマリアさんも料理人でしょ。前に話した時に自分で作る方が早いからあまり外食はしないと言っていたもの」


 そっか。パティシエさんだけどお料理のスキルを持ってるんだから、変なお店で食べるより自分で作った方がおいしいはずだもん。


 それならわざわざ外に食べに行ったりしなくなっちゃうよね。


「でも困ったわね。イーノックカウにはそれほど知り合いはいないし」


 おいしいものは食べたいけど、そのお店を教えてもらう人がいないってしょんぼりしちゃうお母さん。


 だから僕、何とかしなきゃって思ってさっきよりももっと一生懸命考えたんだよ。


 そしたらすっごくいい考えが浮かんだんだ。


「そうだ! お貴族様ならおいしいお店を知ってるはずだよ」


「お貴族様ぁ!?」


 僕はすっごくいい考えだって、お口におててを当てながらくすくす笑ってたんだよ。


 だからその横でお母さんとお姉ちゃんたちが、すっごくびっくりしたお顔になってることに気付かなかったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 おいしいお店って探すのが大変ですよね。


 今はスマホがあるから食べログとかで比較的簡単に見つかるけど、昔は雑誌とかを見ながら探したんだよなぁ。


 でも雑誌ってお金を払えば載せてもらえるから、変にハーブや香辛料が効きすぎていたりするはずれ店に当たることもあったなぁと思いながら今回のプロットを書いていましたw


 さて、先週も書きましたが今週末は用事があるので次話を書く時間がありません。


 ですので月曜日はお休みさせて頂き、次回は来週金曜日の更新になります。


 それと、いやなお知らせですが8月の1週目2週目の週末も予定があり、お盆期間中もいつもの年同様うちが本家なのでお客さんが来るんですよ。


 なので8月中はかなり不定期の更新になります。


 ただ、今回は突発ではないので休む時は必ず前もってお知らせします。ですから、あとがきを読んでもらえるとありがたいです。


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
錬金術ギルドのマスターは貴族でしたね(笑) ルディーンはミシュランガイドみたいな料理店ガイドを作ったりしないのかな? ルディーン「おいしいお店屋さんの地図とかガイド本でもあったらいいのにね。」とか。…
そのお貴族様の関係者が食の都にした張本人だからおいしいお店には詳しそう。だけど・・・
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