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69 ブラウンボアをやっつけろ!


「ブラウンボアがこんな森の浅い所に?」


 途端にお父さんたちの顔が強張る。

 でも何でだろう? お父さんたちならブラウンボアをやっつけられるはずなんだけど。


「本当なの? ルディーン」


 そんな疑問が湧いた僕はこてんと首を傾げてたんだけど、そこにお母さんがそんな質問を投げかけてきたんだよね。


 だから僕は言ったんだ、まず間違いないよって。


「うん。返って来たつよさはぜんぜんちがうけど、さっき狩ったブラックボアと同じような感じの魔力だからね。ブラックボアが強くなったらブラウンボアになるんだよね? ならブラウンボアだと思うよ」


 そう言ってから僕は、返ってきた反応から解ったその魔物の大きさとかをみんなに話してあげた。

 そしたらそれを聞いたクラウスさんは確信を持ったみたいで、


「そうか。ならほぼ間違いないな」


 さっきまで以上に怖い顔になってそんな事を言ったんだよね。


 でもその顔を見た僕は益々解んなくなったから、お母さんの袖を引っ張って聞いてみたんだ。


「お母さん、クラウスさんはなんであんな顔してるの? お母さんたちならやっつけられるんでしょ?」


「えっ? ええ、私たちなら狩る事ができるわ。でもね、今はルディーンが居るもの。ブラックボアと違って守りながら戦うにはちょっと大変な相手だから、クラウスはあんな顔してるのよ」


「そっか、なら放っておいた方がいいんだね」


「そうね、それができたら本当によかったのよねぇ」


 てっきり頷いてくれると思ってそう言ったのに、僕の話を聞いてお母さんは困った顔になっちゃったんだよね。


 そしてそんな僕たちを見て、隣にいたお父さんがどうしてお母さんがそんな顔をしたのかを僕に教えてくれたんだ。


「ここがもし、森のもっと深い場所なら放っておいてもよかったかもしれない。でもこの辺りはまだ村の成人前の子供たちでも狩りの為に入り込む可能性がある場所なんだ。そいつらがもしブラウンボアに遭遇したらどうなるか、ルディーンにも解るだろう」


 そっか、もしこのままブラウンボアを放っておいたら犠牲者が出るかもしれないんだね。


 だから本当ならこんな場所で見つかった以上絶対にやっつけなきゃいけない筈なのに、でも今は僕が一緒にいるから戦ってもし事故があったらと思うとお父さんたちは簡単には狩ろうって言い出せなかったのか。


 でも……うん解った。


「ぼくなら大丈夫だよ。ブラックボアの時はびっくりしちゃって動けなかったけどもう大丈夫だし、お父さんたちが戦ってる間はちゃんとはなれてるから」


 ならここは僕が、こう言い出さなきゃいけないよね。


 だって放っておけないなら戦わなきゃいけないんでしょ? でも誰も言い出せそうになかったんだもん。


「本当に大丈夫なのか? ルディーン」


「大丈夫だよ。それにぼくなら遠くから魔法でこうげきできるから、お父さんたちが戦いやすい所にブラウンボアをつれて来やすいでしょ? ならいつもよりたたかいやすいくらいなんじゃないかなぁ?」


 多分弓とかだと途中の木が邪魔になってある程度近づかないと攻撃できないだろうけど、ぼくのマジックミサイルなら見えてさえ居れば必ず当てられるもん。


 ドラゴン&マジック・オンラインの狩りで言う所の魔物を釣る役としては、今ここに居る中で僕が一番向いてるって思うんだよね。


 そう言って胸を張る僕を見たみんなは覚悟を決めたらしい。だって顔つきが変わったからね。




「よし解った。ルディーン君もこう言ってくれた事だし、ブラウンボアを狩る事にしよう」


 ここからはクラウスさんが中心になってブラウンボア討伐の作戦会議。


 これはお母さんから聞いたんだけど、このパーティーにとってもブラウンボアはかなりの強敵らしくて、しっかりとした作戦を立てないといけないんだって。


「ベストは落とし穴を掘ってそこに落ちた所を倒すのが一番楽なんだが、この辺りには穴を掘れる空間がないからなぁ」


「ああ。となると最初の突進を岩か大木に自爆させて、脳震盪を起こした所に集中攻撃する作戦で行くか」


 どうもこの二つの作戦はボア系の魔物を狩る時の定番らしい。


 さっきのブラックボアもそうだったけど、ボア系の魔物って攻撃されるととにかく最初は突進攻撃をしてくるそうなんだ。


 そしてその攻撃は必ず最初に一撃を加えた相手に向かってくるから、簡単に罠にはめられるんだって。


「でも今回はルディーン君が最初に魔法で攻撃するんでしょ? ここには崖も大岩も無いから必然的に大木って事になるけど、それならかなり引きつけないと避けられるし、危なくない?」


 でもその作戦を聞いてエリサさんがこんな事を言い出した。


 これはブラックボアの突進を見てびっくりした僕がまったく動けなかったのを見てるから多分心配になってそう思ったんだろうけど、そんなエリサさんにお母さんは笑いながらこう言ったんだ。


「それなら今回も私がルディーンを抱えて避ける事にしましょう。予めルディーンの後ろに位置取って置けばブラックボアの時より余裕を持って動けるから失敗はしないはずよ」


「そうだな。ブラウンボアが木にぶつかった後は俺とクラウスの2人で攻撃している間にルディーンもシーラたちと弓を射る位置まで離れてもらって、そこから魔法で一緒に攻撃してもらうことになるんだから、ここは任せたほうがいいだろう」


「ええ、ルディーンは必ず守るから、任せて」


 このお母さんの意見には誰からの異論も出なかったので、これで決定。


 そしてこの後はもう少しだけ細かい立ち回りを話し合ってから、僕たちはブラウンボア討伐の為に移動を開始したんだ。




 僕の探知魔法による情報を基にして移動し、ブラウンボアがもうすぐ見えるであろうところまで来た所で一旦停止。ここで狩人のジョブを持つエリサさんが先行して偵察に出ることになったんだ。


 探知のおかげでブラウンボアの位置は大体解ってるけど、罠に使えそうな大木があるかどうかを調べないといけないからね。


 そして待つこと10分ちょっと。


 帰って来たエリサさんの報告で4箇所ほど使えそうな木が生えている場所があることが解ったから、今吹いている風の方向とか地面の傾斜、それに離れても弓で攻撃しやすいかとかも考えて、使う木が決定した。


 そして。


「準備はいいか? それじゃあルディーン君、始めてくれ」


「うん」


 僕はお母さんと一緒に大きな木の前に移動。ブラウンボアはかなり離れている上に別の方を向いているおかげでまだこっちに気付いて無いみたいだね。


 だから僕は体に魔力を循環させながら、しっかりとブラウンボアの頭に狙いをつけて、


「マジックミサイル」


 魔法を放ったんだ。


 すると音も無く光の杭はブラウンボアのこめかみ辺りに命中! その瞬間、頭が横に弾かれるように大きく動いたんだけど、そこはあの巨体だけに倒れる事もなく、一瞬ブルッと体を震わせた後にゆっくりとこっちの方へと体の向きを変えて身構える。


 そして一瞬体を沈めるような溜めを作った後、猛然と此方への突進を開始したんだ。


 その迫力と来たらブラックボアの比じゃないんだよね。


 なんと言うかなぁ、貴族様が乗るような大きくて頑丈な茶色い馬車が信じられないようなスピードで地響きとともに迫ってくるって感じ?


 今は距離が離れてるからまだいいけど近づいて来たらもっと怖いだろうし、お母さんが抱えて逃げてくれる事になってなかったら僕はきっと逃げちゃったと思うんだ。


 でもお母さんはちゃんと僕の腰に手を回して、いつでもすぐに逃げることができる体勢を取ってくれてる。


 だから僕は安心して、


「マジックミサイル!」


「えっ?」


 魔力をもう一度循環させて、今度は迫ってくるブラウンボアの眉間に向かって二発目のマジックミサイルを発射!


 すぐ近くに居るお母さんの驚きの声を掻き消すほどの轟音を響かせながら此方に猛スピードで向かってくるブラウンボアがそれを避けられるはずは無く、カウンター気味に命中したおかげでブラウンボアの顔が後ろに軽くはじける。


 しかしスピードが付いている上に体重も1トン近い巨体がその程度のことで止まるはずも無く、小ざかしい攻撃を受けて更に怒りが増したとでも言うかのように此方へのスピードを上げたんだ。


 そしてすぐ目の前までブラウンボアが迫った時、


「ルディーン、飛ぶわよ」


 お母さんは僕を抱え上げると数歩横に走った後、そのまま宙を舞う。


 その時お母さんに抱えられながら見たんだ。避ける僕たちの動きをしっかりと捉えているブラウンボアの燃えるように光る赤い目を。


 でもそのスピードの乗った巨体が此方を向く事無く、そのまま大木へ吸い込まれると同時にぶつかった衝撃と轟音、そして何かを砕くような音が静かなはずの森の中を響き渡ったんだ。


 その様子を見てすかさず身構えるお父さんとクラウスさん。


 そしてお母さんは僕を抱えたまま、エリサさんと予め決められた場所へと急いだんだ。すぐに次の攻撃に移るためにね。


 ところが。


 ぴぎゃぁ。


 その巨体からは考えられないような弱弱しい泣き声と共に崩れ落ちるブラウンボア。そして数回ビクンビクンと痙攣した後、その動きを完全に止めちゃったんだよね。


 と同時に僕の体に異変が起こる。


 僕は体がまるで自分の物じゃないみたいにうまく動かせなくなって、その上頭もふわふわを通り越してぐわんぐわんしだしたんだよ。


 そしてそんな状態に僕の小さな体が堪えられるはずも無く。


 きゅぅ~。


 僕はお母さんに抱えられたまま、その場で気を失ってしまったんだ。


読んで頂いてありがとうございます。

 

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