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707 軽い剣には骨が入ってるんだって

 テオドル兄ちゃんに手を引かれた僕は、さっきと違って普通の長さの剣ばっかりがいっぱい並んでるところに来たんだ。


「ここがニコラさんたちの剣が売ってるとこ?」


「そうだよ。べつに女性向けって訳じゃないんだろうけど、僕たちが使っているのに比べて長さの割に軽い剣が並んでるところだね」


 テオドル兄ちゃんはそう言うと、一本の剣を選んで僕に渡してきたんだ。


「あっ、これ僕の剣とおんなじくらいの長さだ」


「そうだけど、実際に持ってみてどう? 軽くない?」


 テオドル兄ちゃんにそう言われた僕は、その剣を構えてみたんだよ。


 そしたらほんとに軽くてびっくり。


「テオドル兄ちゃん、ほんとに軽いよ。でも何で?」


 長さもおんなじくらいだし、幅もそうなんだよ。


 なのに重さだけが違うんだもん、変だよね。


 だから聞いてみたんだけど、そしたらテオドル兄ちゃんは使ってる材料がちょっと違うんだよって教えてくれたんだ。


「この剣は芯のところに魔物の骨が使ってあるそうなんだ。だから強度は落ちていないけど、軽く仕上がっているって店員さんが言っていたよ」


「そっか。骨だから軽いんだね」


 そう言えばグランリルの森で僕たちがやっつけたブラウンボアも、骨はイーノックカウに売りに行くって言ってたもん。


 魔物の骨なんかどこで使うのかなぁって思ってたけど、こんな風に使うこともあるんだね。


「あっ! でも骨を入れたりして、カンカンする時に燃えちゃわないの?」


「カンカンする時? ああ、成型する時か。店員さんが言っていたくらいだから、燃えない魔物の骨を使ってるんじゃないかな?」


 テオドル兄ちゃんも聞いただけだから、ほんとに燃えちゃわないかは解んないみたい。


 でも魔物の革の中には使うと火に強くなるものもあるって聞いたことあるから、そういう魔物の骨を使ってるんじゃないかなぁって言うんだよ。


「そっか、たいねつそうびってやつだね」


 前の世界の僕がやってたゲームにはそういうのがあったもん。


 きっとこれもそうなんだろうなぁ。


 そう思いながら僕がうんうんうなずいてたらね、そこにお父さんが追い付いてきたんだ。


「テオドル、もうルディーンにニコラちゃんたちの剣は見せたのか?」


「まだだよ。だって本人たちに見せないと、本当に買うかどうか解らないんだから」


 お父さんたちが選んだ剣はね、売れちゃわないように店員さんに預かってもらってるんだって。


 だからディック兄ちゃんがニコラさんたちを連れてきたらいっしょに見ようねって言ってくれたんだ。


 それまでの間、僕は剣売り場をうろうろ。


 普段なら振れないような大人の人が持つ長めの剣だったり、逆になんでこんなのがあるんだろう? って思うくらい短い剣を持ってみて遊んでたんだよ。


 そしたらしばらくして、ディック兄ちゃんがお母さんたちとニコラさんたちを連れて戻ってきたんだ。


「ハンス、もう選び終わったの?」


「3人分の剣の候補を選ぶだけだからな、それほど時間はかからないよ」


 お母さんはもうちょっとの間お料理道具を見てたかったみたい。


 でも今日はニコラさんたちの武器を買いに来た日でしょ。


 だから先にそっちを選んじゃおうよって、お料理道具を見るのをやめてきたんだってさ。


「でも、剣を選び終わったらまた行くわよ。ニコラちゃんたちの料理ナイフもまだ選んでないし」


「まだ見るのか……」


 小物屋さんでもそうだったけど、お母さんもキャリーナ姉ちゃんもお買い物をする時はすっごく長いもん。


 それはお父さんも解ってるみたいで、仕方がないなぁって言いながらニコラさんたちの剣を預かってくれてる定員さんのところへ行ったんだ。


「とりあえず定番の長さのものと、洞窟内で使いやすい少し短めのものを選んでおいた。今回おすすめなのは当然短い方だけど、使い慣れていない長さだと目測を誤るからな。実際に手に持って、使い勝手を確かめながら選んでくれ」


「はい」


 ニコラさんたち3人はいいお返事をすると、お父さんが選んでくれた剣を持ってみたんだよ。


 そしたら思ったより軽くって、さっきの僕みたいにびっくりしてる。


「これ、どうなってるんですか?」


「あのね、中に魔物の骨が入ってるんだって。だから軽いのに折れないんだよ」


 僕はさっきテオドル兄ちゃんに教わったことを、早速ニコラさんたちの教えてあげたんだ。


 そしたら感心する三人。


 でもね、途中でアマリアさんがなにかに気が付いたみたい。


 お父さんがいる方を振り向いて、こう聞いたんだよ。


「あの、魔物の骨が入っているってルディーン君から聞いたんですけど……」


「ああ、店員がそう言ってたな」


「もしかして、ただでさえ高い鋼の剣よりさらに高いんじゃないですか?」


 それを聞いたニコラさんたちも、あっ! ってお顔をしてお父さんを見たんだよ。


 そしたらお父さんは、そんなことないんじゃないかなって。


「さっき聞いたら長いのは金貨15枚、短いのは金貨12枚って言っていたからそんなもんじゃないか? いや、むしろ安いくらいか?」


「そんなに!?」


 お値段を聞いて、持ってた剣を落とさないようにそ~っと置くニコラさんたち。


「おいおい、そんな大層な値段じゃないだろ。うちの村で作ってもらったルディーンの剣は、それよりかなり短いけど長い方と同じくらいするぞ」


「私たちが使ってる剣は銀貨50枚くらいなんですよ。それなのに……」


 金貨って1枚で銀貨100枚分だもん。


 それを聞いたらニコラさんたちもびっくりしちゃうよね。


 でも、そんなニコラさんたちにお父さんはそんなに高いかなぁって頭をこてんって倒したんだ。


 お父さんは武器屋さんで剣を買ったことがないみたいで、これがほんとに高いのかどうかが解んないみたい。


 でも昔イーノックカウに住んでたことのあるお母さんは、お店で売ってる鋼の剣のお値段を知ってたんだ。


「ハンス。自分に合わせた特注品じゃないんだから、武器屋に売っている既製の鋼の剣がそんなにするはずないでしょ」


「そうなのか?」


「そうねぇ。だいたい金貨8枚くらいが相場だって聞いたことがあるわ」


 そっか、じゃあやっぱり魔物の骨が入ってる剣は高いんだね。


 僕はそんなこと考えながら近くに立てかけられてる長い剣を見上げてたんだけど、ニコラさんたちはそれどころじゃないみたい。


「そんな高い剣、怖くて振れません!」


「そうですよ。それにそんな剣、買えるわけないじゃないですか!」


 ニコラさんとユリアナさんの意見に、そうだそうだって何度も頷くアマリアさん。


 でもね、そんなニコラさんたちにお父さんは言うんだよ。


「何を言ってるんだ。これくらいの装備を持たないと、あぶなくてゴブリンの集落なんていけないだろ」


「でも、私たちが買える値段じゃ……」


「いやいや、払うのはルディーンなんだから、そこは気にする必要ないじゃないか?」


 お父さんが笑いながらそう言うと、ニコラさんたちはなんかギギギって音がしそうなくらいゆっくりと僕の方を見たんだよ。


「ルディーン君が払う? なんで?」


「ん? そうじゃないの? ここに来る時からずっとそう思ってたんだけど」


 だってニコラさんたちがイーノックカウで使うお金、全部払わないとダメだよってルルモアさんが言ってたもん。


 だからここで買う武器も僕が払うのは当たり前だよね?


 そう思って頭をこてんって倒してたら、そんな僕にお母さんが言ったんだよ。


「ああ、ニコラちゃんたちの料理ナイフはルディーンが払わなくてもいいわよ」


「いいの?」


「私が選びなさいって言いだしたんだもの。当然私が払うわよ」


 そう言って笑うお母さん。


 それを見たニコラさんは、今度はギギギってお母さんを見たんだよ。


「あのぉ、もしかしてさっき選んでた料理ナイフもお高いんですか?」


「ここはいいものを扱ってみたいだから、どちらかと言うとお値打ちよ。だって金貨3枚くらいで買えるみたいだし」


 うちの村の鍛冶屋が作るのはここのより使い辛いのにそれ以上するのよって、ほっぺたに手を当てながら困ったお顔をするお母さん。


 それを聞いた僕は、ニコラさんたちの剣を選び終わった後もお母さんがお料理道具のとこからなかなか動かないからお家に帰るのは遅くなりそうだなぁって思ったんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 グランリルの村の人たちにとって、剣などの武器は消耗品です。いくら手入れをしたり研ぎ直したりしても、魔物相手に数年も使えば脆くなってくるので当たり前ですよね。


 それに戦闘中に折れたら終わりですからより良いのもを選ぶのは自然なことだし、ある程度のお金を使うのも当然。ここの剣の金額を聞いても、それほど高いとは思っていません。


 でもニコラさんたちは鋳物の形を整えただけの剣を使っていたのですから、そこから魔物の骨が芯に入った剣へのグレードアップはさすがにしり込みします。


 おまけに料理ナイフまでが自分たちの武器の6倍もするのだから、ガクブル状態待ったなしですねw


挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
グランリルの人からすれば、『デカい獲物を2〜3頭倒せば買えるよね。』程度だけど、三人娘からすれば相当な金額だからね。 でも、現在の三人娘は、ルディーンの借金奴隷みたいな状態だから、働くための道具や材料…
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