697 お母さんも僕たちと一緒にお留守番なんだって
お母さんがダメって言ったから、僕のお留守番は決定。
ギルドマスターのお爺さんはそれを知ってちょっとしょんぼりしちゃったんだけど、すぐに気を取り直してこう聞いてきたんだよ。
「ルディーン君の不参加は了解した。だが、お前ら二人は参加してくれるんだよな?」
「道案内をする必要があるだろうし、ルディーンが預かってる子たちのこともあるから俺は一緒に行く。でもシーラは子供たちと一緒に留守番だ」
これを聞いてびっくりするギルドマスターのお爺さん。
「おいおい、シーラさんまで参加しないって言うのか?」
「ええ。私は今回、弓しか持ってきてないですからね。洞窟の中ではあまり役に立ちませんよ」
森とかなら遠くから狙える弓は便利だけど、洞窟の中は暗い上にまっすぐなとこがほとんどないでしょ。
そんなとこだと弓は使い辛いから、お母さんが一緒に行っても意味ないんだって。
でもね、それを聞いてもギルドマスターのお爺さんは納得できないみたい。
「いや、弓だけでも見張りの排除や洞窟から逃げ出したゴブリンの掃討など、できることがいくつかあるではないか」
「あら、それこそ私である必要は無いと思うのですけど?」
イーノックカウの冒険者さんたちから逃げるような弱っちいゴブリンだもん。
そんなのお母さんじゃなくてもやっつけられるでしょ。
だから別に行かなくてもいいんじゃないのってお母さんは言うんだ。
「確かにその通りなのだが」
「どちらかと言うと、ユリアナちゃんやアマリアちゃんがその役には向いているんじゃないかしら? ニコラちゃんは体も大きいし、剣の腕もそこそこあるから弓より中で戦う方がいいと思うけど」
「確かに、せっかく弓の練習をさせたのだからそれも一つの手だな」
今はまだ練習だから止まった的にしか弓を射ってないけど、出てくるところが解ってる洞窟の入口ならゴブリンが動いてても当てやすいでしょ。
だからお父さんも、ユリアナさんたちにはその役目が合ってるんじゃないかなって言うんだ。
でもね、それを聞いた僕はちょっと不安になっちゃったんだよ。
「ねぇ、お母さん。それだとニコラさんが一人になっちゃうよ。危なくないかなぁ」
「そこは、ハンスが何とかしてくれるわよ」
「そうだな。俺はそのためについて行くんだし」
そっか、お父さんがついててくれるなら安心だね。
だってゴブリンだったら、いっぱい居てもお父さん一人であっという間にみんなやっつけちゃうもん。
そう思って僕がほっとしてると、ギルドマスターのお爺さんが残念そうにこう言ったんだ。
「この話の流れからすると、やはりシーラさんは参加してくれないのだな?」
「ええ。そもそも、ルディーンやキャリーナを置いて行くこと自体考えられないことですもの」
お兄ちゃんたちやレーア姉ちゃんはもう大きいけど、僕たちはまだ一人で行動させるのは不安だからねって言うお母さん。
「確かに、目をはなすにはまだ幼いからのぉ」
それを聞いたギルドマスターのお爺さんは、はぁーっておっきなため息をつきながら、そうかってうなだれちゃったんだ。




