696 ニコラさんたちはあんまり強くなってないんだって
ゴブリンの村を見つけた僕たちは、エリィライスとかを探すのもやめてそのまままっすぐイーノックカウへ帰ったんだ。
「こんにちわ! ルルモアさんいる?」
そのまま冒険者ギルドに向かって、中に入ったらすぐにルルモアさんを探したんだよ。
そしたらいつものカウンターのところにいて、僕の顔を見たらちょっとびっくりしてた。
「あら、ルディーン君。今日はハンスさんたちと一緒に行かなかったの?」
「ううん。お父さんたちももうすぐ来ると思うよ」
僕はギルドが見えたから走ってきちゃったもん。
でもお父さんたちは歩いてるから、まだきてないんだよね。
「ルディーン、急に走り出したりしたら危ないでしょ」
でね、ちょっとしたらお母さんがちょっと怒りながら冒険者ギルドに入ってきたんだ。
「こんにちは、シーラさん。またルディーン君が何か見つけたんですか?」
ルルモアさんは入ってきたお母さんに笑顔でそんなこと言ったんだけど、そのお返事は後ろから入ってきたお父さんが代わりにしたんだよ。
「ギルドマスターの爺さんに伝えてくれ。ゴブリンの集落の位置が解った」
「えっ? あっ、はい。すぐに!」
カウンター後ろの階段を大慌てで登ってくルルモアさん。
それからちょっとして帰ってくると、僕たちにいっしょに来てって言ったんだ。
「ギルマスが直接話を聞くそうです。皆さん、こちらへ」
難しいお話しになるかもしれないから僕とキャリーナ姉ちゃんはお留守番かなって思ったけど、どうやら一緒に行くみたい。
だからみんなでルルモアさんの後ろについてって、ギルドマスターのお爺さんのお部屋へ行ったんだ。
「ハンスさんたちをお連れしました」
「うむ。指示を出すかもしれないから、この時間は忙しいかもしれないがルルモアも一緒に報告を聞いてくれ」
僕たちが帰って来た時間は、他の村の人たちが売りに来たものをみんなで木の札とかに書いてく時間だからルルモアさんも忙しかったみたい。
だからギルドマスターのお部屋に連れて来るとすぐに帰ろうとしたんだけど、そのまま残ってって言われちゃったんだ。
「はい、解りました」
「うむ。それでは早速だが、報告を聞こうか」
ギルドマスターのお爺さんはお父さんの方を見ると、どんな感じだった? って聞いたんだよ。
「規模はどれくらいだった?」
「集落は洞窟タイプだったから正確には解らない。だが入口を10体以上で守っていたし、少し離れた場所に見張りまでおいていたから結構大きな集落だと思うぞ」
それを聞いたギルドマスターのお爺さんはちょっと難しいお顔に。
「数が必要だな」
「ああ。ゴブリンはそれほど厄介な亜人ではないが、ずるがしこい。それに数が多いと連携して向かってくるから少数で攻めるより数をそろえた方がいいだろう」
お父さんがそう言うと、ギルドマスターのお爺さんはルルモアさんにこう言ったんだよ。
「今イーノックカウにいるCランク以上の冒険者は全員強制参加。それ以下の冒険者もなるべく参加させるために報酬に色を付けたいから、至急領主への連絡を頼む」
「解りました」
大慌てでお部屋を飛び出していくルルモアさん。
それを見ながら僕は、あることを考えてたんだ。
「お母さん。僕もCランクなんだよね。だったら冒険者さんのみんなと一緒に行っていいの?」
ゴブリンはやっつけても素材を取らないから、すっごい魔法を使ってもいいでしょ。
だから僕も行きたいなぁって思いながら聞いたんだよ。
でもお母さんはダメって言うんだ。
「ダメよ。さっきハンスが言っていたでしょ」
「そっかぁ」
それを聞いてやっぱりかぁって思ったけど、すごい魔法を使いたかったからちょっとしょんぼり。
「ところでルディーン君の」
「ルディーンがどうかしたのか?」
そんな時に僕の名前が聞こえてきたから、もしかしてって思ったんだよ。
でもその後を聞いて、僕はまたしょんぼりしたんだ。
だって僕のお話しじゃなかったんだもん。
「いや、ルディーン君が預かっている娘ら。ハンスとシーラさんが鍛えていると聞いているがどんな仕上がり具合だ?」
ギルドマスターのお爺さんが聞きたかったのはニコラさんたちのことだったんだよね。
「あの子らの話か。少し教えはしたけど、まだ基礎を学び始めたばかりだからなぁ。使い物になるにはまだかなり時間がかかると思うぞ」
ニコラさんたち、お父さんとお母さんに教えてもらって武器の練習を頑張ってるんだよ。
でもまだそんなに強くなってないみたい。
「きちっと剣を振れるようにはなってきているが、それだけを練習させているわけじゃないからな」
「どちらかと言うと弓を中心に指導したのが悔やまれるわね。洞窟では使えないし」
「ああ。それに今に思えば、イーノックカウに残したディックたちに頼んで狭い所での戦い方を仕込んでおくべきだった」
僕たちはゴブリンの村を探しに行ったけど、お兄ちゃんたちはずっとイーノックカウにいたでしょ。
見つけたらやっつけに行くのが解ってたんだから、教えといてねって言っとけばよかったって言うお父さん。
「今更悔やんでも、後の祭りだろ。それで実際のところ、どれくらい使えるようになっているんだ?」
「今の状態だとうちの村の森にはまだ、とても連れて行けないかな。それでもまぁ当たれば倒せる程度には仕上がっているから、ゴブリン2・3匹を相手にしても遅れを取らないくらいにはなっているだろう」
「でも経験が足りないから、物陰に隠れているゴブリンを見つけるのはまだ無理ね」
これを聞いて考えこむギルドマスターのお爺さん。
「隠れているゴブリンを見つける技術か……集落の外にも、見張りのゴブリンがいるのだろ? こちらも大人数で動くことを考えると、斥候の数がまるで足りん」
そう言って、なんでか僕の方を見るギルドマスターのお爺さん。
でもそれを見たお母さんが、僕は連れて行かせないよって言いながらギルドマスターのお爺さんを睨んだんだ。
「まだ小さい子に、何をさせようっていうのですか」
「それはそうなのだが、ルディーン君の魔法があればゴブリンに見つかる確率が大きく下がるから」
自分でも無理だろうなぁって思ってるのか、段々声が小さくなっていくギルドマスターのお爺さん。
それを見たお母さんは、ちっちゃくはぁってため息をついたんだよ。
「そんなことをしなくても、集落までの道のりのどこに見張りがいたかは地図に書いてあります。だから行動前に斥候職の人がそれを確認すればいいでしょ」
「なんと、そんなものまで用意しておったのか」
お父さんたちとゴブリンの村の近くまで行った時、探知魔法をずっと使ってたでしょ
その時解った見張りのゴブリンがいたとこは、みんなお母さんが地図に書き込んでくれてたんだ。
「これがあれば、ルディーンを連れて行く必要はないわよね?」
「それはそうなんだが」
それを聞いてもギルドマスターのお爺さんはまだ残念そう。
でもね、
「必要はないですね!」
お母さんに怖いお顔でそう言われると、ちっちゃな声でハイってお返事したんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
何とかルディーン君に参加してほしい、ギルドマスターのお爺さん。
でもシーラお母さんからすると、ゴブリンとはいえ虐殺の場に小さな子を連れて行きたいとはとても思えません。
なのでどんなに頼まれても今度は許しませんよと言う態度で接していました。
それとニコラさんたちですが、基礎を学んだことで剣の威力はかなり上がっています。
でもそれは剣筋が通るようになったからであって、別に強くなったわけじゃないんですよね。
剣道や柔道と同じで、時間をかけて実戦形式の練習を繰りかえすことによってでしか強くはなれません。
だからハンスお父さんも、まだまだだよって言っているのです。
さて、前回も書きましたが今週末は用事があるので書く時間がありません。
なので申し訳ありませんが月曜日はお休みさせて頂き、次回更新は来週の金曜日になります。




