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686 あっついのを冷やして食べることもあるんだよ

 蒸し器のお話しは今度ノートンさんに聞いてみることになったでしょ。


 だからルルモアさんはお話の続きをするためにお母さんの方を見たんだよ。


「ぷりんと言うのが、卵と牛の乳を蒸して作る温かいお菓子と言うのは解りました。それでももう一つのあいすというのは……」


「違うよ!」


 でもおかしなこと言いだしたもんだから、僕、すぐに違うよ教えてあげたんだ。


 なのにルルモアさんはなんでか、不思議そうなお顔をしてるんだよね。


「何が違うの、ルディーン君? プリンと言うのは卵と牛乳を混ぜたものにお砂糖を加えて蒸したお菓子なんでしょ?」


「うん、そうだよ」


 僕がうなずくと、ルルモアさんはもっと不思議そうなお顔に。


「えっと、それじゃあ何が違うのかな?」


「あのね、プリンは温かく無いんだよ」


「えっ? でも、さっき蒸し料理って……」


 そう言ってお母さんを見る、ルルモアさん。


「蒸気で蒸すのに、暖かく無いんですか?」


「ああ、違うんですよ。蒸しあげた後、それを冷やして食べるのです」


 それを聞いて両手をパンと合わせるルルモアさん。


「ああ、なるほど。冷やせば確かに冷たくなりますものね」


 ルルモアさんは食べるのが大好きだから、まだあんまり広がってない蒸し料理のことも少し知ってるんだって。


 でもそれはみんなあったかい物ばかりだったから、一度蒸したお料理をわざわざ冷まして食べるなんてことがあるなんて思いつかなかったんだってさ。


「言われてみればお菓子は焼いて作ることが多いですが、温かいままではなくクッキーのようにあえて冷ましてから食べるものが多いですね」


「ええ。プリンはそれをさらに冷蔵庫で冷やしてから食べる、とても珍しいお菓子なんですよ」


 お母さんはね、僕が作ったお菓子にはそういうものが他にもあるんだよって教えてあげたんだ。


「他にもそんなものがあるんですか」


「ええ。グランリルの村周辺には、葉や茎からねばねばしたものがとれる草が生えているんですよ。ルディーンはその草の根から、かたくりこ? とかいう粉を作って、それを使った変わった食感のお菓子を作ってくれたんです」


「あのね、わらび餅って言うんだよ。これもつべたくして食べると、すっごくおいしいんだ」


 そう教えてあげたら、ルルモアさんは聞いたことのないお菓子ねって言うんだよ。


 だから僕、わらび餅がどんなものなのかを教えてあげたんだ。


「あのね、片栗粉とお砂糖を混ぜたものをお水に溶かすんだ。それをボウルの形をしたホットプレートに入れて温めながらうんしょうんしょってがんばって練ってくとできあがるんだよ」


「ほっと……なに?」


「ホットプレートだよ。火の魔石であっつくなるやつ。僕、お母さんに火は使っちゃダメって言われてるから、それを使って作ってるんだ」


 僕はルルモアさんに、両手を使いながらホットプレートのことを一生懸命教えてあげたんだよ。


 なのにルルモアさんは、それがどんなものなのか全然想像できてないみたい。


 お母さんの方を見ながら、それはどんなものなんですか? って聞くんだよね。


「大体はさっきルディーンが説明した通りの魔道具ですよ。火の魔石を使うことで火を使わなくても加熱ができる調理道具のことをルディーンはほっとぷれーとと呼んでいるようで。うちにはパンケーキを焼くための鉄板状のものと、底が丸くなった鍋の形をした二種類があるんです」


「なるほど。そのわらびもちとやらは、鍋型の魔道具で作るんですね」


 お母さんも僕とおんなじこと言ってるはずのに、今度はルルモアさんもホットプレートがどんなものか解ったみたいなんだよ。


 だけど、そんな魔道具を使ってるご飯屋さんは聞いたことが無いなぁって言うんだ。


「懇意にしている料理屋は多いですが、そんな魔道具を使っているという話は聞いたことがありません。どこの魔道具屋で購入されたんですか?」


「いえ、買ったんじゃなくてルディーンが作ったんですよ。でもそう言えば、よそでは同じようなものを見たことがありませんね」


 コンロやオーブンみたいなお料理に使う魔道具はいろんなとこで使われてるでしょ。


 でもホットプレートは、ルルモアさんもお母さんも他では見たことが無いんだって。


「そうなの? 簡単に作れるから、みんな使ってると思ったのに」


「私は魔道具作りにそれほど詳しくないのですが、教えてもらった性能から考えてそんなに簡単に作れるとは思えないのだけど」


「そっかなぁ? 冷蔵庫は氷の魔石で冷やすでしょ。あれを火の魔石でやるだけだから簡単だよ」


 ルルモアさんは魔道具の作り方をあんまり知らないから、火を使わずにお鍋を温めるって聞いて難しいんじゃないかなって思ったみたい。


 でもやってることは火の魔力の発動場所を魔道リキッドで鉄板とかに書いてるだけだもん。


 だから難しくなんかないんじゃないかなぁって思うんだ。


「そうなの? でも、それならなぜ他の人は作らないのかしら?」


「だって、コンロみたいに火を出す方がホットプレートより簡単な回路図で作れるもん。僕みたいに火を使っちゃダメって言われなかったら、普通のコンロでいいじゃないかな」


 ホットプレートは広い範囲がおんなじ温度になるけど、その代わりあっつくなるところ全部に回路図を描かないとダメでしょ。


 でも魔道コンロは、火の魔石から取り出した魔力をお鍋をのっけるところで火に変換するだけだもん。


 そりゃあ火加減の回路図は書かないとダメだけど、それはコンロもホットプレートもおんなじでしょ。


 それならわざわざそんな面倒なのを作るより、コンロを作った方が簡単じゃないかって僕、思うんだ。


 そのことを教えてあげると、ルルモアさんはそっかぁって納得したみたい。


「確かに子供が料理をするのには向いているけど、わざわざ制作難度をあげて値段が高くなったものを作ろうと考える人は少ないかも?」


「複雑なものほど、魔道具は高くなる傾向がありますからね」


 お母さんも魔道具の作り方はよく解ってないけど、楽に作れる方が安いのは当たり前よねって。


 だから二人とも、ホットプレートが売られてないのはそういう理由なんだねってうんうん頷いたんだ。

 読んで頂いてありがとうございます。


 なんかどんどん話が余計な方向に行ってしまう。


 今回はアイスクリームの説明をしてそこから石筆板の話に持って行き、最終的には宝石のカットの話へ戻すっていう流れにするつもりだったのになぁ。


 因みにですが、魔道ホットプレートは凄い発明品だったりします。


 過去の話を読み直すと解りますが、魔道コンロが大きな火の魔石を必要とするのに対して、ホットプレートは米粒大の火の魔石を複数使うことで広い範囲を温めるんですよ。


 なので作るのにかかる費用や消費する魔道リキッドの量が段違いに抑えられます。


 これが発表されると、少なくとも鉄板を使って調理する店は皆魔道コンロからホットプレートに切り替えることでしょう。


 残念ながら話に加わっているうち、ルディーン君以外魔道具の作り方に詳しい人がいないのでそれに気付くことはありませんが。


 因みにルディーン君の家にはホットプレートはあるけど魔道コンロはないので、シーラお母さんが魔道リキッドの消費量の違いに気付くこともありません。(念のため

挿絵(By みてみん)


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― 新着の感想 ―
『異世界でスロ〇ライフを(願望)』だと、小粒な火の魔石を錬金術で平らにして、鉄板に張り付けてホットプレートみたいにしたり、『マギクラ〇ト・マイスター』でも砂鉄状の火の魔石を渦巻き線香のように魔法で加工…
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