684 イーノックカウにも属性魔石を持ってる魔物がいるんだ
それからちょっとの間、ロルフさんとバーリマンさんは魔石を使ったアクセサリーの魔道具のお話をするんだって。
でも僕たちやルルモアさんは、そのお話しに混ざれないでしょ。
だからその間に、さっき亀の甲羅みたいな形にした宝石をどうしようかってお話をしてるんだよ。
「ルルモアさん。三角ばっかりの魔石みたいにしたらいいって言ってたけど、それはどんな魔物の魔石なの?」
「マッドリザードと言う魔物よ。泥の多い沼地に住んでいる魔物で、イーノックカウの森にもいるけど少し奥の方に行かないと見かけることは無いかな」
イーノックカウの森って、グランリルの森と違ってカエルとかトカゲ系の魔物がいっぱいいるんだって。
マッドリザードもトカゲの魔物で、グランリルの森で言うとビックピジョンと同じくらいの大きさの魔石が獲れるみたい。
「じゃあ、そんなに強く無いんだね」
「ルディーン君から見たらそうかもしれないけど、狩ろうと思ったらけっこう苦労するそうなのよ」
さっきルルモアさんは、マッドリザードは泥の中に住んでるって言ってたでしょ。
その泥って、僕だったらお膝の近くまでずぼって沈んじゃうくらい深いんだって。
だから僕みたいに魔法が使える人か、お母さんみたいに弓でやっつける人じゃないと狩るのが大変らしいんだ。
「力が強い上に泥の中だと足が滑るから、噛みつかれたら沼の中に引きずり込まれてしまうのよ。だから剣しか使えない人とはかなり相性の悪い魔物ね」
「確か、しっぽを使った攻撃もかなり強いんですよね? 私がまだイーノックカウにいたころに先輩から聞いたことがあるわ」
お母さんも其のマッドリザードって魔物のことを知ってるんだって。
だから魔石の大きさに比べて狩りにくい魔物って言われてるんだよって教えてくれたんだ。
そしたらね、僕たちのお話を聞いたキャリーナ姉ちゃんが言ったんだよ。
「そっかぁ。でも魔石がとってもきれいって言うなら、見てみたいなぁ」
「あら。マッドリザードの魔石なら在庫があるはずだから、見てみる?」
「ほんと!?」
クラウンコッコと違って、マッドリザードはイーノックカウの森に住んでる魔物でしょ。
それに奥の方に住んでるって言っても、ブラックボアみたいに強いわけじゃないもん。
イーノックカウには弓を使う冒険者さんもいっぱいいるから、持って来る人は結構いるんだってさ。
「宝石のカットの参考になるし、バーリマン様もまだロルフ様とのお話が終わらないみたいだから、今のうちにとってくるわね」
「やったぁ!」
そう言って出て行ったルルモアさんなんだけど、買取のところに行ったはずなのに何でかあっと言う間に帰ってきちゃったんだ。
「もう持ってきたの?」
「ええ。カウンターに持ち込まれたものがあったからね」
そう言って見せてくれた魔石は、ちっちゃな大豆くらいの大きさだったんだよ。
でね、その色がなんか茶色っぽかったもんだから僕はあれ? って思ったんだ。
「ルルモアさん。この魔石って」
「ルディーン君は気が付いたみたいね。そう、マッドリザードは土属性の魔石を持っているのよ」
それを聞いた僕はびっくりしたんだ。
だって属性魔石を持ってる魔物なんて初めてだもん。
だからすごいねって言ったんだけど、それを聞いたルルモアさんはちょっと変な笑顔になっちゃったんだよ。
「土属性の魔石は、あまり使い道が無いの。だからせっかくの属性魔石なのに、買取価格は無属性と同じなのよね」
「そうなんだ」
そう言えば、火属性や水属性、それに風属性の魔石なんかは使い方がすぐ思い浮かぶよね。
でも土属性は何に使ったらいいのか、僕も思いつかないもん。
これがゲームだったら石の玉を飛ばす魔法が出る杖とかにするんだろうけど、前にロルフさんたちがそういう魔道具を作っても変な方に飛んでっちゃうから作れないって言ってたんだよね。
だからせっかく属性が付いてるのに、意味が無いものになってるんだってさ。
「でもでも、いつも見てる魔石と違う光り方しててきれいだよ」
「確かに、ほんのりと茶色の光を放っているわね」
そんな土属性の魔石だけど、キャリーナ姉ちゃんとお母さんは気に入ったみたい。
窓の方に向けながら、他とは違うキラキラだよって喜んでるんだ。
「それにこうして光に透かして見ると、さっきルルモアさんが言っていたことがよく解るわ。小さな三角の面が合わさると、こんな見え方をするのね」
そう言いながら、お母さんは窓に向けたマッドリザードの魔石を指先でころころ転がしたんだよ。
そしたら魔石の中のキラキラがその度に変わっていって、すっごくきれいなんだ。
「ルディーン。これをお手本にして形を変えることはできる?」
「ちょっと見せて」
お母さんから魔石をもらうと、僕はそれをじっと見たんだ。
でもね、魔石ってお店で売ってる宝石と違ってゆがんでたりへこんでたりして、ちゃんとした形をしてないんだよね。
だからお手本にしようと思っても、頭の中でちゃんとした形が思い浮かばなかったんだ。
「あのね、クリエイト魔法ってこんな形にするんだってのがちゃんと思い浮かばないとうまく使えないんだ。魔石ってちょっとゆがんでるでしょ。だからこれをお手本にすると、宝石も曲がっちゃったりするんじゃないかなぁ」
「そう言えば魔石って、いびつな形をしているものね」
そう言いながら、マッドリザードの魔石をころころするお母さん。
それにね、ルルモアさんも置いてあったクラウンコッコの魔石を手に取って指先でころころしたんだよ。
「魔石は魔物の体の中でかたまった魔力と言われていますからね。人工的に作った形じゃないから、どうしてもどこかしらがおかしな形になってしまうのよ」
「宝石の中にもそういうものはあるけど、その場合は同じものが二つとないという価値があるわ。でも今欲しいのは、宝石のカットのデザインに使う見本だもの。それじゃあ困るわよね」
お母さんとルルモアさんはどうしたらいいのかなぁって考えながら、二人で宝石をころころ。
そしたらそれを見ていたキャリーナ姉ちゃんが、そうだ! って言っておててを叩いたんだ。
「ぬいぐるみを作った時、どんな形にしようかって絵をかいたでしょ。これもそうしたらいいよ」
「そっか、きれいな形を描いとけばお手本になるもんね、お姉ちゃん頭いい」
絵だったら、変な形になったら何度でも描き直せばいいもん。
そう思った僕は、すぐにお外に出てこうとしたんだよ。
「ちょっと待って、ルディーン、どこに行くつもりなの?」
「お外だよ。木の板とかだと、一度書いたら消せないでしょ。でもお外だったら変な風になったらパッパッてすればすぐ消せるもん」
僕がそう教えてあげると、お母さんは呆れたようなお顔で何を言ってるのよって。
「ルディーン。ここは村じゃないのよ。外は石畳になっているから、絵なんか描けないでしょ」
「あっ、そっか!」
イーノックカウの街の中は、馬車がいっぱい走るからへこんじゃわないように石が敷いてあるんだよね。
だから僕んちの庭みたいに、お絵かきができないんだ。
「どうしよう。あっ、そうだ! 裏の馬車を置くとこだったら石が敷いてないよ」
冒険者ギルドの裏は買取するとこになってて、その前には売りに来た人や買いに来た人の馬車を止めるとこになってるんだよ。
僕、そこには石が敷いてなかったのを思い出してかけ出そうとしたんだけど、今度はルルモアさんに止められちゃったんだ。
「そんなところに行かなくても、いいものがあるわよ」
ルルモアさんはそう言うと、お部屋の隅にあるおっきな両開きの木製戸棚のところに行って何かを取り出したんだよ。
でね、それを持って戻ってくると、僕にはいって渡したんだ。
「これを使うといいわよ」
「石の板?」
ルルモアさんが持ってきたのはね、四角いお盆みたいな形のちょっとおっきな黒い石の板だったんだ。
読んで頂いてありがとうございます。
あれ? 思っていたのと違う話になってしまったぞ? なんでだろう。
プロット上では書くはずだった内容が一文字も無いんだけど。
まぁ、軌道修正はできそうだからいいか。
前回のあとがきで金曜日に寝込んだと書きましたよね。
あれって実は、胃のむかむかと吐き気で起きられないほどひどかったんですよ。
なので土日は前回の原稿を書いているとき以外はずっと寝ていて、食事も土曜日は一日断食。
日曜日も夜にうどんを柔らかく茹でたものを少しだけにして胃を休めました。
そのおかげで症状はかなり治まったのですが、月曜日の午前中に医者に行ったところ思ったより悪かったようで結構強めのお薬を20日分いただき、10日は消化のいいものにするようにとのお達しが。
同じく前回のあとがきで出張に行くと書きましたよね? でも出張に行くと山の中の工場なので、食事はコンビニ弁当。消化はすこぶる悪いです。
さすがに今週末は無理ということで、火曜日の午後から木曜日まで行くことになりました。
そんな訳ですので次の月曜日の更新と水曜日の魔王信者に顕現させられたようですはいつも通りですが、その代わり来週の金曜日の更新は休ませて頂きます。




