682 タリスマンって宝石だけで作るんじゃないんだって
アース・スター エンターテイメント様から転生したけど0レベルの3巻が発売されています。
売れないと4巻を出させてもらえないので、皆さま買ってやってください。
キャリーナ姉ちゃんの手を握って喜んでたバーリマンさん。
それからちょっとしたら、今度は僕の方を見てこう言ってきたんだよ。
「ルディーン君。この目に使っている宝石の形を基準にして、宝石のカットの形を考えましょう」
ウサギさんの目って、レンズの下っ側を切ったような形をしてるでしょ。
だから普通の宝石と違ってすっごく平ぺったいもんだから、それを聞いた僕はびっくりしたんだ。
「この目、平ぺったいよ。丸くなくていいの?」
「ええ。私が宝石を使うのはタリスマンを作る為であって、指輪やペンダントのような宝飾品を作る訳じゃないもの」
タリスマンを作る時って、宝石の下に土台をくっつけるんだって。
だから下っ側の形は、別に丸くなくたっていいんだってさ。
「ただ、もう少し厚みは欲しい気がするわね」
「なんだ。やっぱり、ぶ厚い方がいいんじゃないか」
「そうじゃないの。宝石の面積が大きくなりすぎると、その分土台に使う金を多く使うことになってしまうのよ」
タリスマンは魔道具だから、魔力を良く通す金属じゃないと土台に使えないんだって。
だから値段の高い金やミスリルを使うことが多いんだけど、平ぺったくして大きくなっちゃうとその分土台も大きくしないとダメでしょ。
それだとお金がいっぱいかかっちゃうから、ウサギのお人形の目よりはちょっと厚めに作った方がいいんだよってバーリマンさんが教えてくれたんだ。
「そっか。じゃあ、形はどうするの? つるつるじゃダメなんだよね?」
「ええ。せっかく宝石を使うのだから、光が当たった時に屈折で輝くようにしたいもの」
そんな訳で、僕とバーリマンさんはどんな形がいいかなぁってお話を始めたんだ。
「キャリーナ姉ちゃんに作ってあげたのの上っ側みたいにしたらいいの?」
「う~ん。あれは凄く小さな宝石だったからよかったけど、このサイズにすると面が少なすぎる気がするわね」
そう言えばキャリーナ姉ちゃんに作ってあげたのって、宝石のかけらの形を変えたやつだもん。
でも今度のは原石だし、それに平ぺったくするから見た目はもっとおっきくなるでしょ。
だからおんなじようにすると、キラキラが足らないんじゃないかなってバーリマンさんは言うんだ。
「だったらこんな感じにする?」
僕はそう言うと、鋼の玉にクリエイト魔法を使ったんだ。
それでできあがったのは、亀の甲羅みたいな形。
ちょっと長細くなっちゃったけど、甲羅は丸っぽい6角形を組み合わせてできてるから、それを全部平らにしてやればきれいな形になるんじゃないかなぁって思ったんだ。
「あら、面白い形ね」
それを見たバーリマンさんは、ちょっと笑顔に。
「とりあえずこれで一つ作ってもらえるかな?」
「うん、いいよ」
僕は職人さんみたいに宝石を割ったり削ったりするわけじゃないもん。
気に入らなかったらやり直せばいいだけだから、気楽に形を変えてみることにしたんだ。
「どれがいいかなぁ? あっ、緑の宝石がある。これにしよ」
亀の甲羅っていったら緑だよね。
ってことで、その宝石を手に持ってクリエイト魔法を発動。
何回かやったからなのか、おっきい原石だったけど最初に作ったキャリーナ姉ちゃんの時より簡単に形を変えることができたんだ。
「バーリマンさん、できたよ」
「ええ、ちょっと見せてもらえるかな?」
僕がハイって渡すと、バーリマンさんはその宝石を持って窓の近くへ。
そこで光を当てながら、いろんな方向から見始めたんだ。
「きれいではあるけど、下が平らな分、上のカットがこれだけ大きいと中での光の屈折が少なく感じるわね」
「そっかぁ」
そう言われてバーリマンさんの手元を見てみると、なんとなくキラキラが足らない気がする。
なら六角形をもっと小っちゃくして、面の数を多くしたらいいのかなぁ?
そう思った僕はバーリマンさんに聞いてみたんだよ。
そしたら、それじゃダメじゃないかなってお返事が返ってきたんだ。
「これを見ていて気が付いたんだけど、宝石の中の光の屈折って画数が少ない面の方が多くなるんじゃないかしら?」
さっき僕がきれいな形にした四角っぽい宝石って、これよりおっきな面が多かったでしょ。
でも光に当てると、なんとなく中のキラキラが多い気がするんだよね。
だからバーリマンさんは面の形を変えた方がいいんじゃないかなぁって言うんだ。
「あっ、それはなんとなく解る気がします」
そんな僕たちのお話しに入ってきたのは、近くにいたルルモアさん。
ルルモアさんは宝石じゃないですけどって言いながら、キラキラするもののお話を始めたんだ。
「仕事柄よく目にするのですが、魔石って魔物の種類によって形が違うんですよ。だから種類によっては宝石のようにキラキラしたものもあるんです」
「ああ、そうか。そう言えば前にルディーンが作ってくれた魔石のアクセサリーも、宝石みたいにキラキラしていたっけ」
ルルモアさんのお話を聞いて、お母さんも魔石って宝石みたいよねって。
それに頷きながら、ルルモアさんはお話しの続きを話し始めたんだよ。
「その中には小さな三角の面だけで構成されたものや細長い面がいくつも固まったようなものがあるんですよ。そういうものはつるっとしたものよりきれいなものが多いから、面の形や大きさによって光の屈折が変わるというのは正しいと思いますよ」
「まぁ、魔石をそんな目で見たことは無かったけど、そんなにきれいなの?」
「はい。ちょうどそこにルディーン君が遊具に使う棒の目印に使った魔石がありますから、光に当ててみるとよく解りますよ」
ルルモアさんにそう言われたバーリマンさんは、さっき僕が作った魔石のくっついたおもちゃのボーリングのピンを持って窓の方へ行ったんだよ。
でね、それを光にかざすとびっくりしたお顔になっちゃったんだ。
「まぁ。宝石ほどの輝きはないけど、自然の創り出した凹凸で職人には出せないきらめきがあるわね」
魔石は錬金術でも使うから、バーリマンさんだって初めて見るわけじゃないんだよ。
でも宝石の代わりにアクセサリーに使おうなんて思ったことが無かったから、光に当てたらすっごくきれいだったことにびっくりしたみたい。
そんなバーリマンさんに、ルルモアさんは残念そうにこう言ったんだ。
「もっと大きなものがあれば、魔石の美しさがよく解るんですけどね」
そんなルルモアさんのお話を聞いて、キャリーナ姉ちゃんがそうだ! って手を叩いたんだ。
「ルディーン、クラウンコッコの魔石を持ってるでしょ。あれ、見せてあげようよ」
前にレーア姉ちゃんと一緒に森に行った時、クラウンコッコがすっごくいっぱいいたことがあるでしょ。
その時やっつけたクラウンコッコの魔石がいっぱいあるんだけど、それを見せてあげた時にキャリーナ姉ちゃんがこれでアクセサリーを作ってって言ってきたんだ。
だから僕、すぐにいいよってお返事したんだけど、そしたらお父さんとお母さんがダメって言ったんだよね。
何でかって言うと、子供のアクセサリーにするには高すぎるからなんだって。
でもキャリーナ姉ちゃんは、すっごくきれいだから大人になったら作ってねって僕と約束したんだ。
「クラウンコッコの魔石だったら、ちっちゃい宝石よりキラキラだもん。見せてあげれば、きっとみんなすごいねって言うよ」
「そう言えばクラウンコッコの魔石って、うちの村でとれる魔石の中でもきれいな方よね」
キャリーナ姉ちゃんのお話を聞いて、お母さんもそう言えばそうねって。
でも、そんなお母さんよりもこのお話に食いついた人がいるんだ。
それはルルモアさん。
「ルディーン君、クラウンコッコの魔石を持ってるの!?」
「えっ? うん持ってるけど、それがどうかしたの?」
「そんなあっけらかんと」
何とルルモアさん、冒険者ギルドの受付さんなのにクラウンコッコの魔石を見たことが無いんだって。
「うそだぁ。だって僕の村、お祭りの時はみんなでクラウンコッコを狩るんだよ。その時の魔石はイーノックカウの冒険者ギルドに売りに行くって言ってたもん」
僕が魔道具を作れるようになるまでは、村で魔石を使うことなんてなかったでしょ。
だから毎年売りに来てたはずのクラウンコッコの魔石をルルモアさんが見たことないって言ったもんだから、僕は嘘をついてるって思ったんだ。
でもね、
「買取のニールンドは見ているだろうけど、受付である私は見たことが無いのよ」
何とルルモアさんは、本当に見たことが無いんだって。
「クラウンコッコは、この近辺ではグランリルの森にしか生息していないの。だからその魔石もそこから出荷されるものしか無いから、冒険者ギルドでも買取担当者しか目にする機会が無いのよ」
「そっか。前にお父さんと来た時も、中に入らずに裏の買取をしてくれるところにそのまま馬車で行ったっけ」
イーノックカウの森でとれる魔石だったら、わざわざ裏の買取のとこまで行かなくっても受付で買い取ってくれるそうなんだよ。
だからルルモアさんはいろんな魔石を見たことがあるんだけど、他のとこでしかとれない魔石は見たことが無いものが多いんだってさ。




