681 へんてこな形でもクリエイト魔法ならきれいになるんだよ
ロルフさんにアクセサリーを作っちゃダメって言われてお母さんはしょんぼり。
それを見た僕は、何かしてあげられないかなぁって思ってたんだよ。
でもね、そこで急にバーリマンさんがおっきな声を出したんだ。
「決めたわ。この三つにしましょう」
だからそっちを見てみると、宝石箱から3つの原石を取り出してるとこだったんだよね。
「あら? カットする原石が決まったみたいね」
それを見たお母さんは、さっきまでしょんぼりしてたのがウソみたいなお顔になってそう言ったんだ。
「お母さん、元気になったの?」
「ええ。心配させてごめんね」
お母さん、バーリマンさんがどんな原石を選んだのかが気になって、しょんぼりした気持ちが吹っ飛んじゃったみたい。
僕とキャリーナ姉ちゃんに、どんなのを選んだのかが気になるから早く見に行きましょうよって。
「ああ、私も行きます」
そしたらルルモアさんも気になるって言うもんだから、僕たちみんなでバーリマンさんのとこに行ったんだよ。
「バーリマンさん、どんなのを選んだの?」
「これよ。この3つをカットしてほしいの」
そう言って見せてくれた原石はね、三つとも全体がおんなじ色で透明なんだけど、変なとこが出っ張ってたりぼこぼこしてたりしてるのばっかりだったんだ。
「へんてこな形のばっかりだね」
「そうね。普通はこれを割ったり削ったりして形を整えた後、きれいに磨き上げるのよ」
バーリマンさんがさっき僕たちに見せてくれた宝石のかけらは、その時にできるものなんだって。
でも僕は宝石の形を変えることができるでしょ。
だからこんなへんてこな形のでも、その大きさのまんまきれいにできるからってこの三つを選んだんだってさ。
「この三つはそれ全体が宝石の結晶なの。だから余分なところを削り取る必要がないし、透明度が高いものばかりだからクリエイト魔法との相性もいいんじゃないかと思って選んだのよ」
この他にもおっきな原石はあるんだって。
でもそういうのは他の石の中に埋まってたり、べつの石が中にくいこんでたりするものばっかりでそれを取ってからじゃないと宝石にできないみたいなんだよね。
だからバーリマンさんは、クリエイト魔法で加工しやすいこの三つを選んだんだよって僕たちに教えてくれたんだ。
「そっかぁ。じゃあ、どんな形にすればいいの? さっきの宝石みたいな形? それとも、キャリーナ姉ちゃんに作ってあげたのみたいな形がいいのかなぁ?」
「そうねぇ」
原石は選んだけど、それをどんな形にしたらいいのかまではまだ考えてなかったみたい。
だからバーリマンさんはどうしようかなぁって、また考えだしちゃったんだよ。
「あら? それって」
でもね、その途中でキャリーナ姉ちゃんの持ってる物に気が付いたみたい。
「それって、木彫りのお人形? でも、目に宝石のようなものが」
「うん。さっきルディーンが作ってくれたんだ。かわいいでしょ」
キャリーナ姉ちゃんはそう言うと、僕がさっき作ったウサギさんのお人形をバーリマンさんに見せてあげたんだ。
そしたらバーリマンさんは、そのお人形をじっと見始めたんだよね。
「この目、薄い円形に……いや、中で光が屈折していないところを見ると埋め込まれている方は平らにしてあるのかしら。なるほど、こうすることで小さなかけらを大きく見せているのね」
バーリマンさんはウサギさんの人形じゃなくって、その目についてる宝石の形が気になってるみたい。
なんかぶつぶつ言いながら、じっとそれを見続けてるなぁって思ったら、
「そうか。これは盲点だったわ。このような形なら、思っていた以上のものができあがるかもしれない」
そう言って、ウサギさんのお人形を持ってるキャリーナ姉ちゃんの手を包み込むように握ったんだよ。




