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671 作ったものの小っちゃいのが見たいんだって

 先々週に引き続き、金曜日の更新を休んですみません。


 活動報告にも書きましたが、12月は忙しいので平日にあまり時間が取れないんですよ。


 魔王信者に顕現させられたようですの12月更新分はストックがあるのでいいのですが、こちらにはそれがありません。


 ですので申し訳ありませんが、今月中は月曜日更新だけになってしまうかも?

 イザベルさんがなんか変になっちゃったからみんなで大丈夫? って言ってたらね、ドアからコンコンコンって音がしたんだ。


 そしたらイザベルさん、またビクッてなっちゃうんだもん。


 だから僕、ドアに怒ったんだ。


「イザベルさんがびっくりしちゃうでしょ!」


「いや、ルディーン君。ドアに怒っても仕方ないだろう」


 ギルドマスターのお爺さんは笑いながらそう言うと、ドアに向かってどうぞって言ったんだよ。


 そしたらドアが開いてルルモアさんが入ってきたんだ。


「失礼します。この時間なら錬金術ギルドにいらっしゃるでしょうから、そちらに職員を向かわせました」


「おお、お疲れさん」


 錬金術ギルドかぁ、それならそんなに遠くないからすぐ来るね。


 そんなこと考えてたら、ルルモアさんが僕に聞いてきたんだよ。


「ルディーン君、ロルフさんたちが来る前に聞いておきたいんだけどいい?」


「うん、いいよ。なに?」


「ボールを転がして棒を倒すという遊具、私は初めて聞く遊びなんだけど、どんなものなの?」


 ルルモアさんはね、輪っかを棒に入れる遊びはおんなじようなのを見たことあるからなんとなく解るんだって。


 でもボールを使った棒倒しなんて見たことも聞いたことも無いから、どういう遊びで何が面白いのかを教えてって言うんだ。


「あのね、ボールがゴロゴロって転がってって、棒がパーンってなって面白いんだよ」


「棒がパーン?」


 僕が手を使ってこうだよって教えてあげたんだけど、ルルモアさんはよく解んないみたい。


 だから今度はイザベルさんに聞いたんだ。


「あなたはルディーン君が作ったものを見たのですよね。どういうものでした?」


「えっと、なんだか不思議な形をしたものに木のボールを入れると、そこから出たボールが棒に向かって転がっていきました」


「不思議な形のもの?」


 でもね、イザベルさんのお話を聞いたルルモアさんはもっと解んないってお顔をしたんだよ。


「ギルマス。どういうものか解りましたか?」


「とりあえず、わしらが見たことのない遊具だということは解ったな」


 ギルドマスターのお爺さんも、お話を聞いただけじゃよく解んなかったみたい。


 だからなのか、僕に聞いてきたんだよね。


「積み木を作ったり木のボールを作ったりしたと言っておったが、材料は何を使ったのかな?」


「あのね、ふっとい薪がいっぱいあったからそれにクリエイト魔法を使って作ったんだよ」


 僕が教えてあげるとギルドマスターのお爺さんは、それをここで作れないかなぁって。


「その現物でなくともよい。小さなミニチュアでよいから作ってもらえぬかな?」


「小っちゃいのを作るの? いいけど、僕、薪持ってないよ」


「ああ、それはこちらで用意する。ルルモア、数本薪を持って来てくれるか」


 ギルドマスターのお爺さんがそうお願いすると、ルルモアさんは解りましたってまたお部屋の外へ。


 それからちょっとすると、何本かの薪を持って帰ってきたんだよ。


「割ったものしか無かったけど、これでも作れる?」


「うん。魔法で作るからへっちゃらだよ」


 僕はルルモアさんからほっそい薪をもらうと、それを見ながらちょっと考えたんだ。


「ねぇ、ルルモアさん。おんなじ物を作んなきゃダメ?」


「えっと、どういう意味かな?」


「あのね、孤児院で作ったのは輪っかを入れる棒が余ってたからそれを使ったんだよ。でもほんとは違う形なんだ」


 ボーリングに使う棒って、変な形をしてるピンってお名前のでしょ。


 だから僕、そっちを作った方がいいんじゃないかなぁって思ったんだ。


「本当の形があるの? それなら、その形で作ってもいいわよ」


「解った! じゃあそっちのを作るね」


 ルルモアさんがいいって言ったから、僕はボーリングのピンの形をした2センチちょっとのちっちゃな棒を10本作ったんだよ。


 そしたらルルモアさんとギルドマスターのお爺さんが、それを一本ずつひょいって持ったんだよね。


「変わった形の棒じゃな」


「おしゃれな花瓶のような形ですね。下が太くなっているのに底に近づくほど細くなっていくのはボールが当たる幅を出しながらも倒れやすくする工夫なのかしら?」


 ルルモアさんたちができあがった棒ばっかり見てるでしょ。


 だからその間に、その棒を倒すボールを作っちゃうことにしたんだ。


「棒をピンの形にしたから、ボールも中は入ったまんまのにしよっと」


 下を太くしたから、普通の棒よりちょっと重たくなってるもん。


 だからボールも重くないと、当たっても倒れないんじゃないかなぁ。


 そう思った僕はちっちゃな木のボールを作ったんだ。


「これで倒れるかなぁ?」


 僕は残ってる棒を適当に並べて、すぐ手前からボールを転がしてみたんだよ。


 でもボールは当たったのに、ピンはうまく倒れてくれなかったんだ。


「小っちゃいから、ボールが軽すぎるのかも?」


 そう思た僕はポシェットの中から鋼の玉を出して、さっきの木で作ったのとおんなじくらいのボールを作ってみたんだよね。


 それを転がすと、今度はちゃんと倒れてくれたんだ。


「やっぱり球が軽かったんだね」


 僕が一人でうんうんうなずいてたらさ、それに気が付いたイザベルさんが聞いてきたんだ。


「あれ? ボールを転がす道具は作らないの?」


「あっ、そっか。あれも作らないとダメだった!」


 そう思った僕は、ピンの残りの薪を手に持ってクリエイト魔法を発動。


 本物はちっちゃな子でも遊べるように下にボールを入れて動くようになってるけど、こっちは見せるだけだから形だけ。


 でも孤児院で作ったのとおんなじ形の、ボール用の筒型滑り台を作ったんだ。


「これで転がすの? 本当に変わった形をしているのね」


 それに気が付いたのか、ルルモアさんが寄ってきて転がして見ていい? って聞いてきたんだよ。


「うん。いいよ。ここから入れると、ボールが転がってくんだ」


「ここに? って、ボールは鉄で作ったのね」


 ルルモアさんはそんなことを言いながら、ボール用にすべり台の後ろ穴からボールを入れたんだ。


 そしたらちゃんと反対側から出て来たんだけど……。


「あっ、テーブルがでこぼこしてるからまっすぐ転がらないや」


 冒険者ギルドにあるテーブルって、ただの板を何枚か並べて作っただけの奴なんだよね。


 だからつなぎ目に当たったり木の模様? 年輪? とにかくそれに当たっちゃってまっすぐ転がらないんだ。


「これじゃ遊べないじゃないか!」


 そう思った僕は、また新しい薪を持ってクリエイト魔法を発動。


 周りに木枠の付いた横10センチ、長さ50センチくらいの木の板を作ったんだ。


「ルルモアさん。この上なら、まっすぐ転がってくよ」


 僕はそう言うと、片方にボール用の筒型すべり台、その反対側にちっちゃな木のピンを三角形になるように並べたんだ。


「これを動かして狙うのね」


 ルルモアさんは筒型すべり台を動かすと、その後ろの穴から鉄の玉を入れたんだよ。


 そしたら反対側から出た球がころころ頃って転がってって、


 かしゃかしゃかしゃん。


 それが三角の先っぽに置いたピンに当たると、他のピンもどんどん倒していっちゃったんだ。


「ああ、1本だけ残っちゃったか。残念」


 その一本が悔しかったのか、ルルモアさんはピンを全部立て直してから再挑戦。


 でも置き方が悪かったのか、真ん中のだけが倒れて両ふちのが残っちゃった。


「なんで? ちゃんと真ん中のに当たったのに」


「棒の置き方が悪いんだよ。だって両ふちのがちょっと離れてたもん」


 僕がそう教えてあげると、ルルモアさんはちょっと不機嫌なお顔に。


「置く場所で倒れ方が変わるんじゃ、安定して倒せないじゃないの」


「うん。だからちゃんとしたのをやろうと思ったら棒を立てる場所を板に描いとくか、穴の開いた枠を作ってそこに入れるようにしないとダメなんだ」


 本物のボーリングは穴の開いた枠にピンが刺さったまま上から降りてくるんだよね。


 だからそれとおんなじように穴の開いた木枠を作って、そこに棒を立ててから外せばいいんだよって教えてあげたんだ。


「なるほど。ルディーン君、その枠は作れる?」


「魔法を使えば簡単にできるよ」


 ルルモアさんにお願いされた僕は、ピンや転がす台を作った残りの薪を持ってクリエイト魔法を発動。


 棒を立てた後でもすっと抜けるように5ミリくらいの細い足が四隅についた付いた、ピンを立てる四角い穴あきの板を作ったんだ。


「はい。これを置いて穴に棒を入れてけば、いつも同じとこに並べられるよ。板を抜く時は4つの隅っこを持って、そーっとね」


「ありがとう。早速やってみるわね」


 そう言って早速ピンを並べ始めるルルモアさん。


 でね、それが終わるとすーって木枠を抜いてから再挑戦。


「ああ。悔しい、今度は真ん中の棒に当たらなかったわ」


 でも今度はボールを転がす筒型すべり台の位置が悪かったのか、真ん中のピンに当たらずに4本しか倒れなかったんだよね。


「ルディーン君、これ……」


「だめだよ。ボールを入れる台も置く場所を決めちゃったら、おんなじ所にしか転がらなくなっちゃうじゃないか!」


 それだと面白くないでしょって言うと、ルルモアさんはそう言えばそうねって。


 そしたらギルドマスターのお爺さんが急に、がっはっはっはって笑いだしたんだ。


「ルルモアがそんなことに気付かないほど夢中になるとは、これは見た目以上に面白い遊具のようだな」


「えっ? ええ、そうですね。子供たちが遊んだという大きなものは解りませんが、ルディーン君が今作ってくれたこの新しいゲームは多くの人たちを魅了すると思いますよ」


 僕、孤児院で作ったおもちゃがどんなのだったかを教えるためにこれを作ってたでしょ。


 でもいろいろやってたら全然違うものになっちゃったのに、ルルモアさんはこれが面白いって言うんだもん。


 だからいいの? って聞いてみたんだよ。


 そしたらそれが良かったのかも? って答えが返ってきたんだ。


「孤児院で作ったのは、小さな子たちが遊ぶための遊具でしょ。でもこれは大人が遊んでも面白いものになっているもの」


 これ、筒状すべり台の置き方がちょっとずれただけでもボールはすぐに変な方向に転がってっちゃうでしょ。


 その難しさが、大人の人にも受けるんじゃないかなってルルモアさんは言うんだ。


「そうですよね、ギルマス」


「うむ。これはフランセン様に報告せねばならぬことが、また一つ増えたようだな」


 そう言って笑うギルドマスターのお爺さん。


 その向こうでは、そんなに面白いなら私もやりたいって言いだしたキャリーナ姉ちゃんが、ルルモアさんから鉄のボールと筒型すべり台を取り上げてるのが見えたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 大きなボーリングゲームだけでなく、ボード型のボウリングゲームまでできてしまいました。


 でも実際のところこちらの方が需要はあるでしょうね。手軽に遊べますし。


 さて、活動報告には書きましたし、すでに発表されたのでもうご存じの方も多いと思いますが、3巻の発売が決まりました。


 発売日は2月の14日予定みたいです。


 なぜみたいなのかというと、編集さんから直接聞いたわけではないからだったりしますw


 まだ表紙くらいしかラフを頂いていないのですが、私の原稿はゲラの提出まですでに終わっているので後は発売を待つばかり……と、これを書いた後に修正依頼と挿絵の場所チェックのメールがw


 まだまだ頑張らねば。


 3巻は2巻の時以上に売れないと本当に次が出せないので、皆さま是非とも買って読んで頂けたらありがたいです。


挿絵(By みてみん)

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