663 重いと転がすのも大変だよね
私のもう一つの作品、「魔王信者に顕現させられたようです ~面倒なので逃げてスローライフをしようと思ったらNPCが許してくれませんでした~」もよろしくお願いします。
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テイストは少し転生0と違いますが、基本ほのぼの路線で進みますのでよかったら読んでみてください。
「あれ、何かに使えないかなぁ?」
輪っかの的の棒、せっかく作ったんだから使いたいよね。
そう思った僕は、なんかいい遊び方ないかなぁって考えたんだよ。
「立てるのが簡単な棒かぁ」
一本立てて、それをつんつんしてみる。
元々が輪っかを入れるための物だから、ちょっとついたくらいじゃ倒れない。
でもね。
パタン。
ちょっと強めに押すとこうやって倒れちゃうんだ。
なら、棒を倒す遊びに使えそうだよね。
「前の世界になんかなかったっけ?」
そう思った僕は、腕を組みながら頭をこてんって倒したんだよ。
そしたらさ、ある遊びを思い出したんだ。
「そう言えば、ボーリングってのがあったっけ」
前の僕は体が弱かったから、一度もやったことないんだよ。
でもテレビってのでたまに見てたから、どんな遊びかは知ってるんだ。
「確か、おっきなボールを転がして変な形の棒を倒すんだよね」
僕はふっとい薪にクリエイト魔法を使って、前世の記憶にあるボーリングのボールを作ってみた。
でね、それを棒に向かって転がしたんだ。
カラン。
そしたらボールが当たった棒は、簡単に倒れちゃった。
でも、やってみて一つ問題があることに気が付いたんだよね。
「このボール、重いからちっちゃな子だと遊べないかも」
僕でも押して転がすくらいしかできないから、ちっちゃな子が棒に向かって転がすなんて無理。
それに重いボールが転がっていって、もし他のちっちゃな子に当たったら危ないもん。
だからこのままじゃダメ。
「そうだ! 中をくりぬけば軽くなるじゃないか!」
そう思った僕は、木のボールにクリエイト魔法をかけようとしたんだよ。
でもその時に思い出したんだ。
「そう言えばさっき、割れちゃうと危ないからやめたんだっけ」
ちっちゃな子が遊べるくらい軽くしようと思ったら、薄くなって割れやすくなっちゃうでしょ。
でもボールを小っちゃくしたら、ちっちゃな子が転がしても棒は倒れないだろうし……。
「やっぱりおっきいままじゃないとダメだね」
ボールの大きさは、最初に作ったのくらいがいいと思う。
そう思った僕は、割れないくらいの厚さがある中が空っぽのボールを作ってみたんだ。
「う~ん。これならちっちゃな子でも持てるだろうけど、棒を狙って転がすのはまだ無理かな」
中が空っぽになると、思ったより軽くなったんだよ。
でもやっぱり重たいから、狙ったところに転がすのは難しいと思う。
「僕なら、簡単に転がせるんだけどなぁ」
そう思いながら、木のボールをころころ。
そしたら手が滑って、ちょっと離れた所に転がってっちゃったんだ。
でも強く押したわけじゃないでしょ。
だから僕、すぐに止まるだろうと思って見てたんだよね。
「あれ?」
なのにボールはずっと転がっていって、お部屋の端っこまで行っちゃったんだ。
「なんでだろう? そんなに強く押してないのに」
頭をこてんって倒しながらそんなことつぶやいてたら、頭の上からその答えが降ってきたんだ。
「それはね、ここの床がちょっと傾いているからよ」
教えてくれたのはイザベルさん。
そっか、見ただけじゃ解んなかったけど、ちょびっとだけ傾いてるんだね。
そう思った時、僕はすっごくいいことを思いついたんだよ。
「そっか、転がす台を作ればいいんだ」
ボール用の坂道を作れば、そこに乗っけるだけで転がってくもん。
それに、軽くてちっちゃな子でも簡単に動かせるのを作れば、みんなで遊べるよね。
ってことで、早速作ってみることに。
「あんまり早く転がってくとあぶないから、緩い坂の方がいいよね」
どれくらいがいいか見るために一度細い板を作って、それを傾けながら高さを決める。
でね、もう一度クリエイト魔法を使って簡単な、でもおっきなボールを転がせる幅の坂を作ってみたんだ。
「これに乗っければ……あっ、ダメだ!」
ボールを乗っけるとちゃんと転がり始めたんだよ。
でも最後まで行かずに、坂の途中で落っこちちゃったんだ。
「そっか。滑り台みたいに、両端の壁を作んないとダメなんだね」
そんな訳で、ボールの半分くらいが見えなくなる高さの壁を作ってから再挑戦。
「ああっ、ちゃんとまっすぐ転がってくれない」
すると今度はその壁にコンってぶつかって、まっすぐ転がっていかないんだよね。
どうしよう? たぶん幅を狭くしても、壁に当たるのはおんなじだろうし。
「なにしてうの?」
僕が考えこんでいるとね、まねっ子ちゃんが急に僕のお顔を覗き込んできたんだよ。
さっきとおんなじで、僕が何をやってるのか気になって見に来たみたい。
「これ、なぁに?」
でね、ボールを転がす坂を見つけると、それをバンバン叩きながら聞いてきたんだ。
「これを転がすための坂だよ」
だから僕、そう言ってボールを転がして見せたんだ。
そしたらまねっ子ちゃんは大喜び。
「わたしもやう!」
そう言って転がったボールの方へ……行かずに目の前の坂をうんしょ、うんしょって登り始めたんだ。
「きゃあ~」
でね、そのまま一番上まで行くと手を放して、楽しそうにすべり降りていくまねっ子ちゃん。
確かにこれはすべり台を見本に作ったけど、使い方が違う……。
僕はそう思いながら見てたんだけど、まねっ子ちゃんにとってはそんなのどうでもいいことだよね。
それに小っちゃいから、ボールを転がすためのゆるいすべり台でも十分楽しかったみたい。
またうんしょ、うんしょって登り始めたんだよ。
でもあんな遊び方して、もし途中で足がすべったら危ないでしょ。
だから僕、まねっ子ちゃんのためにちゃんとしたのを作ってあげることにしたんだ。
「危ないから、ちょっと待って。今作り直すから」
僕はまねっ子ちゃんを床に下ろしてから、すべり台にクリエイト魔法を発動。
坂の反対側に登るためのちっちゃな階段を作って、一番上に手すりと座る部分を追加。
危ないから高さは変えなかったけど、その代わりにお外から砂を持って来て板の上に薄くてつるつるの石の板を敷いたんだよ。
そうしとけば、使ってるうちに削れてへこんじゃうなんてことも無いからね。
「はい。これならあぶないくないよ」
「ありあと!」
大喜びで遊びだす、まねっ子ちゃん。
そしたら当然、他のちっちゃな子たちも気になりだすよね。
「わたちもやる!」
「ぼくも!」
さっきまでは輪投げに夢中だったちっちゃい子たちがこっちに寄ってきて、一緒に遊びだしたんだ。
それがすっごく楽しそうだったからかな?
「ねぇ、わたしたちがあそべるのも作ってよ」
「ちっちゃい子ばっかりずるい!」
まねっ子ちゃんたちがあそんでる滑り台はボールを転がすために作ったから、ちっちゃな子じゃないと幅が狭すぎて遊べないんだよね。
だから僕くらいの子たちが、自分たちのも作ってって言いだしたんだ。
「イザベルさん。おっきいのも作っていい?」
「仕方がないわね。でも、できたら隅っこの方に作ってもらえたら嬉しいかな」
おっきい子が遊ぼうと思ったら、ちょっとおっきなのを作らないとダメでしょ。
だから言われた通り隅っこに、幅広くてがちょっとだけ高さがあるおっきな滑り台を作ってあげたんだ。




