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64 創造魔法とお砂糖の値段


 う~ん、要はお砂糖がないのが一番の問題なんだよね。


 これがもし僕のレベルが7レベル以上になっててドラゴン&マジック・オンラインの時と同じ様に使えるのなら、帰還魔法ジャンプでイーノックカウとグランリルの村を往復できるんだけどなぁ。


 ジャンプの魔法って言うのは魔石を消費して作る魔法陣によって予め目印を設置しておいた街などの安全な場所に瞬間移動する魔法で、使えるようになる7レベルの時点で3箇所、それから10レベル毎に1箇所ずつ魔法陣の最大設置可能数が増えて行くんだ。


 だからレベル限界が30の僕の場合、27レベルになれば最大数である5箇所まで設置できるようになるって事ね。


 因みにこの上位魔法には戦闘中でも使える上に一度でも行った事があるフィールドならその入り口まで飛べるようになるテレポートや、テレポートと同じ条件でパーティー全員が移動できるゲートと言う魔法もある。


 ただテレポートは24レベルにならないと使えないし、ゲートにいたっては34レベルの魔法だから僕には覚える事はできないんだけどね。


 何より、そのレベルになったからと言ってもこの世界で使えるとは限らないんだよなぁ。だって錬金術ギルドでロルフさんが転移魔法は失われたって言ってたもん。



 と、現実逃避気味に今の状況とはまるで関係ない事を考えていた僕は、頭の隅っこに何か引っかかりを覚えたんだ。


 だからそれは何なのかなぁって思って、さっきまで考えていたことを思い出す。


 何に引っかかったんだろう? ジャンプ? テレポート? う~ん、違うなぁ。


 その二つが違うのならゲートも違うだろうし……なら使えるようになるレベル? っ! そうだよ、レベルだ! 今の僕、もう3レベルになってるのを忘れてた。


 そこで慌ててステータスを開き、あるページを確認する。そしたら案の定、条件が開放されてそこにあった文字が灰色から白に変わってたんだ。


 よし、これならなんとかなるかも。


 そう思った僕は固まっているお母さんたちを無視して、泣いてるスティナちゃんに声を掛けたんだ。


「スティナちゃん、ちょっとまっててね。くものおかし、作れるかもしれないから」


「ぐすっ、ほんと?」


「うん、たぶんだいじょうぶ」


 あの魔法が使えるなら、きっとなんとかなると思うよ。だってあれはそう言う設定の魔法なんだから。


「ちょっとルディーン。簡単にそんな事言っちゃって、砂糖はどうするの!」


 そんな僕の言葉を安請け合いだって思ったのかヒルダ姉ちゃんがそう窘めてきたんだけど、僕には自信があったから、


「だいじょうぶだよ、ヒルダ姉ちゃん。無いなら作ればいいんだから」


 そう言って魔道具を作る部屋へ走ったんだ。


 そしてその部屋で僕が手に取ったのは米粒程度の魔石。これを使えばお砂糖だって作り出す事ができるはずなんだよね。


 なぜなら僕が3レベルになって使えるようになった魔法は、創造魔法《調味料》なんだから。



 ドラゴン&マジック・オンラインにはゲーム内では使えなかった設定だけの魔法が存在するんだ。そしてその魔法は現実になったこの世界でも使えて、僕も幾つかの魔法のお世話になってるんだよね。


 そんな設定魔法の中には1レベルから使えるけど最初は簡単な事しかできなくて、レベルが上がって行く事で徐々にやれることが増えて行くものもあるんだ。


 その中でも僕が今回使おうと思っているのが、魔石を使う事で色々な物を生み出すことができる魔法、創造魔法なんだよね。


 これ、ステータス画面にあるこの魔法を指定するとサブ画面が開くんだけど、そこを見れば今の自分がどんなものなら作れるかが大体解るようになってるんだ。


 で、今の僕では魔石から料理を作り出すことはできないけど、調味料である砂糖や塩なら作れるって訳。


 無事魔石を手に入れた僕は、みんながいる元の部屋へと帰る。


 これは別に魔道具を作る部屋でお砂糖を作っても良かったんだけど、なんとなく食べ物だったら台所で作った方がいいかな? って思ったからなんだ。台所を使うのなら、やっぱりお母さんに言わないといけないからね。


 こうしてみんなの所に戻った僕は、


「お母さん、魔法でお砂糖を作るから台所を使っていい?」


 って聞いたんだけど、お母さんから帰って来たのはいいか悪いかの返事じゃ無く、質問だった。


「へっ、砂糖って魔法で作れるものなの?」


「うん、作れるよ。もしかしたら買うよりもっといっぱい、お金がかかっちゃうかもしれないけど」


 そんな僕の言葉を聞いたお母さんは驚いた顔をしてたけど、できると言うんならいいよって言ってくれた。


 作っていいのならもう何の心配も無いよね。と言う訳でみんなで台所に移動。


 どれくらいできるか解んないからうちにある一番大きな器を出してもらって、その中に米粒くらいの魔石を入れて魔法の準備は完了だ。


「それじゃあ、行くよ」


 創造魔法とかクリエイト魔法は攻撃魔法や治癒魔法と違って呪文がないから、周りのみんなの視線を感じながら僕は頭の中でお砂糖をイメージして創造魔法を発動する。


 そしたら器の中の魔石が光りだし、そしてその光はだんだんと強くなって行ったんだ。


 そんな強くなっていった光も、少し時間が経つと逆にだんだんと弱まって行くようになって、やがて完全に消えてしまった。


 それを見て完成したって思った僕が器の中を確認すると、そこにはイーノックカウから買ってきたのと同じ、ザラメのようなお砂糖が出来上がっていたんだ。


「やった、できた!」


「できたぁ!」


 ある程度の確信はあったけど、やっぱりやってみない事には出来るかどうか不安だったから、実際に目の前にお砂糖があるのを見ると嬉しくなって万歳! そして出来上がったお砂糖を見たスティナちゃんも、僕と同じ様に両手をあげて喜んでくれたんだ。


 ところが、そんな僕たちと違ってお母さんとヒルダ姉ちゃんはなにやらぽかんとした様子。


 何でだろう? ちゃんと作れたのになぁ。


 そう思った僕はもう一度出来上がったお砂糖に目を向ける。そして気が付いたんだ。


「あっ、そっか。ませきを使ったのに、おさとうがあんまりできなかったから、がっかりしちゃったんだね」


 見た感じ、出来上がった砂糖の量は1キロよりもちょっと多いくらいかな? 米粒程度の魔石は確か銀貨40枚くらいで売れたはずで、お砂糖の値段は1キロで銀貨20枚のはずだから町で買う倍の値段になっちゃったって事か。


 そりゃお母さんもヒルダ姉ちゃんも高すぎるお砂糖を見て、こんな風になるのも仕方ないよね。


 でも普段なら怒られちゃうかも知れないけど、こうやってお砂糖を作らないとスティナちゃんに雲のお菓子を作って上げられないもん。


 だからお母さんたちも今回だけは許してくれるよね? って僕はそう思ってたんだけど、ところがお母さんたちは物凄い顔をして、僕の方を見たもんだからびっくり。


 そんなお母さんたちを見て怒られるって思った僕は慌てて、


「ごめんなさい!」


 って頭を下げて謝ったんだけど、ところがお母さんとヒルダ姉ちゃんは別に怒っていたわけじゃなかったみたいなんだよね。


「何を謝ってるの? いや、それ以前にこれって!」


「そうよ! ちょっと、ルディーン。もしかしてこの砂糖、さっきくらいの魔石が一個あれば、毎回作り出すことができたりするの?」

 

 こうしてお母さんもヒルダ姉ちゃんもすごい剣幕でそう言い寄ってきたもんだから、僕はびっくりしちゃったんだ。


 だって、どうして2人がこんなになったのか、解んないんだもん。


 そしてびっくりしたのは僕だけじゃなくて、


 ビクッ!


「ううっ、うわぁ~ん!」


 僕の横にいたスティナちゃんもお母さんたちのこの様子にびっくりして、泣き出しちゃんたんだ。


 これにはお母さんもヒルダ姉ちゃんも大慌て。

 それに僕も泣き出したスティナちゃんを見て、おろおろする事しかできなかったんだ。



 結果、このスティナちゃんの行動のおかげで冷静になったのか、彼女が泣き止んだ後にお母さんはもう一度静かな口調で僕に聞いてきたんだよね。


「ルディーン。さっきの魔法、一角ウサギの魔石ひとつであれだけの砂糖を作る事ができたみたいだけど、あれは何度もできるの?」


「うん、できるよ。だってそう言うまほうだもん」


 内容自体はさっき聞かれたのと同じだったからすぐにそう答えたんだけど、その答えを聞いたお母さんとヒルダ姉ちゃんの驚きと喜びが入り混じったような様子を見て、僕は何がどうなってるのか解んなかったんだ。


 だって普通に町で買うより二倍くらいの値段がするんだよ、このお砂糖。なのに何で? って思ったからね。


 だから僕はお母さんに聞いてみたんだけど。


「何を言ってるの? あんな小さな魔石が1キロ以上の砂糖になったのよ。喜ばないわけないじゃない」


「へっ? でもおさとうって1キロで2000セントくらいなんでしょ?」


 僕が街で見た値段は確かそれくらいだったと思うんだけど、それを聞いたヒルダ姉ちゃんは呆れ顔でこう言ったんだ。


「何を言ってるのよ、ルディーン。砂糖は1キロで20000セント、金貨2枚よ。ん? ああ、そうか。ルディーンは単位の読み方が解らなくて100グラムを1キロと間違えたのね」


「ええっ!?」


 じゃあもしかして、この魔法でお砂糖にすると普通に買うよりも5倍も安くお砂糖が手に入るって事なの?


 その事を知った僕はあまりの事にびっくりして、言葉も出なくなったんだ。


 そんな僕の横で大喜びするお母さんとヒルダ姉ちゃん。


 そしてそんな2人の喜んでいる様子を見たスティナちゃんも、よく解んないけど嬉しい事があったんだって思ったのか万歳をして笑ってたんだ。



 因みに後日、村の司祭様に聞いて解ったんだけど、僕たちが知らなかっただけでどうやら街で売っているお砂糖は普通にこの魔法で作ってるんだって。


 で、それを聞いたお母さんは5倍の値段で売ってるなんて! って怒ったんだけど、


「ギルドで魔石を売った時の値段で考えるからそうなるのです。一角ウサギの魔石を買うとして、仕入れたギルドも利益を得なければならないのは解りますね。そして仕入れたもの全てがすぐに売れるわけではないので、その時の需要によりますが少なくとも倍、仕入れ数が少なかった時などはそれ以上の値で売らなければなりません。そしてそれを買った魔法使いや神殿が魔法で砂糖を創造し、更にそれを商人が仕入れた物が市場に並ぶのですから、それくらいの値段になるのも頷けると言うものでしょう」


 って説明を受けたもんだから素直に納得しちゃったんだ。


 そっか、この魔法を使った人やそれを売っている商人さんたちも働いた分だけお金を貰わなきゃいけないから、今のお砂糖の値段になってるんだね。


読んで頂いてありがとうございます。

 

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[気になる点] お話しの展開上、必要なエピソードだったのかなとは思いますが、子供が泣いて可哀想だからと甘やかしてしまうのは駄目な大人の典型で、子供にも良くないですし、読者にもモヤモヤ感が残ります。 今…
[気になる点] 今更ですが 錬金術の抽出ではだめだったの? 町で錬金術とヤシの実もどきが出てきたので砂糖、油、ミルクを作る伏線だとばかり
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