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62 おかしな魔道具


 村に帰った次の日。


 冒険者ギルドに登録したし、僕はやっとグランリルの村近くの森へと連れて行ってもらえるんだ! 

……って思ってたんだけど、どうやら村の子供が初めて森に入る時は、この村でも特に狩りがうまい大人の人たちがいっしょについて行く事になっているらしくて、その全員の都合が付くまでは森はお預けなんだってさ。


 ちょっとがっかりしたけど、決まりなら仕方ないよね。


 だから僕は森はあきらめて別の事をしようって思ったんだけど、でも急に暇になっちゃったもんだから、何をしていいのか解んない。


 今までみたいに村近くの草原で狩りをしてもいいんだけど、森に行けると思っていただけにそれではちょっと満足できそうにないんだよなぁ。


 と言う訳で何の目的も無く、村の中をぶらぶらと歩いてたんだけど、


 どん!


 そしたら急に何かが僕の足にぶつかって、と言うか抱きついてきたんだ。


 誰? って思って後ろを振り返ってみると、そこにいたのは2歳くらいの小さな女の子。


「ルディーンにいちゃ!」


 この子は僕の一番上のお姉ちゃんであるヒルダ姉ちゃんの娘で、名前はスティナちゃん。


 お姉ちゃんとそっくりな色のまだ短い髪の毛を頭の両端で結んで、小さなツインテールにしてる僕とは大の仲良しの女の子だ。


「こらこら、急に走っちゃ危ないでしょ。あらルディーンじゃない。こんにちは」


「こんにちわ、ヒルダ姉ちゃん」


「ルディーンにいちゃ! スティナ!」


「うん、スティナちゃんも、こんにちわ」


「あい!」


 挨拶をするとスティナちゃんは、にぱぁ~っと笑って返事をした後、もう一度僕の足に抱きついてきたんだ。


 だから僕はやさしくその手を解いてからしゃがんで、目線をスティナちゃんに合わせて頭を撫でてあげる。そしたらスティナちゃんは目を細めて、キャッキャと嬉しそうに笑ったんだ。



 僕はうちでは一番の末っ子で弟も妹もいないから、ヒルダ姉ちゃんがスティナちゃんを産んだ時は妹ができたみたいで本当に嬉しかった。


 そんな僕の事をスティナちゃんもルディーンにいちゃって呼んでくれるもんだから、今では本当の妹みたいに思ってるんだよね。


「ヒルダ姉ちゃん、今日はスティナちゃんをつれてどこ行くの?」


「ルディーンたちがイーノックカウから色々な物を持ち帰ったでしょ? だからお父さんに頼んでおいたものを取りに行くのよ」


 ああ、言われてみれば当たり前か。


 うちの村で採れないものを手に入れるには定期的に来てくれる行商人から買うか、よその町へ行く人に買ってきて欲しいって頼むしかない。


 実際僕とお父さんもそんな近所の人の依頼や村からの依頼でいろんな物を持ち帰ってきたんだから、お姉ちゃんがうちにそれを取りに来るのは当たり前だったね。


「そっか。じゃあぼくもスティナちゃんと遊びたいし、いっしょに行くよ」


「ルディーンにいちゃも? やった!」


 僕がそう言うと、スティナちゃんは両手をあげて喜んでくれた。


 可愛いなぁ、こんな姿を見ると、何かしてあげたくなっちゃうよ。


 でも僕ができる事はそんなに無いんだよね。風車の魔道具は前に作ってあげたし。


 まぁ家に帰りながら考えればいいか。


 そう思った僕はスティナちゃんの手を握って、家に向かったんだ。



「ルディーン、イーノックカウはどうだった? 大きな町でびっくりしたでしょ」


「うん。お家がいっぱいあったし、人もいっぱいいてびっくりしたよ。それにね、ごはんも村では食べられないものがいっぱいだった」


「そうよねぇ。甘いものとかもこの村では食べられないから、私もイーノックカウに行ったら必ず食べてたもの。今はスティナがいるから当分行けないし、この子の為にもお父さんに何か買ってきてくれるよう頼んでおくんだったわ。失敗したぁ」


 甘いもの? そんな物、あったっけ。


 ってそう言えば宿ではご飯を食べたけど、お外ではセリアナの実のジュースを飲んだくらいで他には何も買って食べて無いや。


 後は冒険者ギルドではジュースとチーズの乗ったパンを出してもらったけど、ヒルダ姉ちゃんが言っているような甘いものは結局一度も食べる事がなかったんだよね。


 その事に気が付いた僕は、ちょっとがっかり。


 イーノックカウへは次に何時行けるか解んないんだから、食べておくんだったなぁ。

 

「ルディーンにいちゃ、どちたの?」


「ううん、なんでもないよ」


 そんな僕を見て心配になったのか、スティナちゃんがそう聞いて来たから、なんでも無いよって笑顔で返してあげた。


 そうだよね、がっかりした顔してたらスティナちゃんも心配しちゃうよね。


 そう思って気を取り直した僕は心配させちゃったお詫びに、改めてスティナちゃんに何かしてあげられないかなぁ? って考えたんだ。


 そして。


「そうだ、あまいもの!」


「っ!? ルディーン、どうしたの? 急に叫んだりして」


「ふふふっ。ぼく、いいことを思いついたんだ!」


 そう、僕はイーノックカウで覚えた錬金術と何度か作ってる魔道具を使えば”あれ”が作れるって事に気が付いたんだ。


「いい事って、なにを思いついたの?」


「なに! なに!」


「ないしょ。あとでおしえてあげるね」


 僕はそう勿体つけて家に帰るとお姉ちゃんとスティナちゃんとは一旦別れて、いつも魔道具を作っている部屋へ。


 そこには色々な材料と、お父さんやお母さんから貰った動力源になる小さな魔石があるから、それを使って僕は目的の物を作る魔道具の製作を開始したんだ。




 それから1時間ほどで僕は目的の魔道具を完成させて、それを持って一旦庭へ移動。


 実際に動かしてみないと解んないけど、これってカバーとかをつけてないからうちの中で動かすと汚れちゃうかもしれないからね。


 で、それを適当な位置に置いてから、ヒルダ姉ちゃんたちがいるイーノックカウから持ち帰った物が置いてある倉庫へ移動したんだ。


 行ってみるとそこにはお母さんもいっしょにいて、スティナちゃんを抱っこしながら色々な物を見せてたから、それを見た僕は丁度いいやって思ってお母さんにある頼み事をする。


「ねぇお母さん。おさとう、ちょっともらっていい?」


「砂糖をかい? 別にいいけど、何に使うの?」


「これからね、スティナちゃんにいいものを作ってあげるんだ」


 お母さんは僕の返事を聞いてもよく解んないって顔をしたんだけど、それでもお砂糖を袋から少し器に移して僕に渡してくれた。


 それを受け取った僕はにんまり。


 これであれを作る事ができるぞって思ったら、とっても楽しくなってきたんだよね。


「いいもの? ルディーンにいちゃ、なに? いいものって」


「ふふふっ、すぐにわかるよ。スティナちゃん、ちょっと来て」


「あい!」


 こうして僕とスティナちゃんは2人で移動開始! とは行かず、当然のようにヒルダ姉ちゃんとお母さんもいっしょについて来たんだよね。


 別にそれで困るわけじゃないんだけど、もらえたお砂糖はそんなに多くないからなぁ。


 まぁいいか、お母さんやヒルダ姉ちゃんも食べるって言うのならもっと貰えそうだしね。


 と言う訳で、気を取り直してスティナちゃんと手をつないで庭へ。そして僕たちはさっき持ってきた魔道具の近くまで行ったんだ。


 すると連れて来られた場所に見慣れないものがあったからなのかな? ヒルダ姉ちゃんがその魔道具を見てちょっとだけ首を捻ると、僕にこう訪ねて来たんだ。


「なに、これ? なんか寸胴鍋みたいな形をしてるけど、中に変なものが入ってるし。ルディーン、もしかしてこれって何かを作る道具なの?」


「うん。これでね、とってもあまぁ~いおかしを作るんだよ」


 僕が庭に持ち込んだのは浅い寸胴鍋のような物の中に、麦藁帽子のてっぺんに穴が開けたような形の蓋がついてる銅製の小さな缶が入ってる魔道具だ。


 まぁ魔道具って言ってもこれ全体がそうなんじゃなくて、本当は中に入っている缶周辺部分だけが魔道具なんだけどね。


 これ、周りの鍋みたいな所も含めた見た目は結構大きいんだけど、普通の鍋よりかなり薄く作ってあるから意外と軽くって、だから小さな僕の体でも簡単に持ち運べるんだよね。


 この魔道具なんだけど構造自体は結構簡単で、イーノックカウで教えてもらった方法で作った火の魔石を使って鍋の中にある缶のような物を熱して、その下に設置した回転の魔道具でそれを回すと言うだけのものなんだ。


 で、中央にある缶の側面には小さな穴が無数に開けてあって、上の蓋中央にある穴にお砂糖を入れれば目的の甘いお菓子が出来上がるはずなんだ。


「それじゃあ、うごかすね」


 と言う訳で運転開始。


 寸胴鍋部分に取り付けられているスイッチを入れると缶の下の方が赤く光り、そして結構なスピードで回りだしたから、僕は器に入ったお砂糖をスプーンですくって缶の上に開いている穴にそれを入れたんだよね。


 そしてちょっとしたら缶に開けられた小さな穴から、白いクモの糸のようなものが飛び出し始めたんだ。


「わぁ! ルディーンにいちゃ、ふわって、ふわってなってゆ!」


「うん、ふわってなってるね」


 実際に動かして見るまで本当にできるかちょっとだけ心配だったけど、目の前の寸胴鍋の中に思った通りのお菓子が出来上がって行くのを見て、正直僕はホッとしたんだ。


読んで頂いてありがとうございます。

 

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