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605 裁縫ギルドのマスターさんはおじさんだけどお姉さんだったんだよ


 今日はゴブリンの村を探すためのお買い物を、イーノックカウの街の中でする事になってたでしょ。


 だから家族みんなでお出かけするのかなぁって思ってたんだけど、お兄ちゃんたちやレーア姉ちゃんは一緒に行かないから今日も別行動なんだって。


 それにね、何でか知らないけどお母さんがゴブリンを探すのに必要な道具の準備はお父さんにお任せしようって言い出したんだ。


「お母さん。お父さんは一緒に行かないの?」


「ええ。探索に必要なものの準備はハンスだけでもできるし、もし全員で準備の買い物に出かけてしまったらルディーンたちが乗る敷物の準備ができなくなってしまうかもしれないでしょ」


 そっか、持つところがついてる敷物なんてあまり売ってないだろうから、探すのがすっごく大変かもしれないもん。


 だからお母さんはお父さんに、お出かけする準備をお願いしたんだね。


「それじゃあハンス、探索に使う装備の手配はお願いね」


「ああ、任せろ」


 という訳で、お父さんとはお家の前でお別れして、僕とお母さん、それにキャリーナ姉ちゃんの3人は持つところの付いた敷物を探しに行く事になったんだ。


「ルディーン、いいのが見つかるといいね」


「うん! 僕、今日はいっぱい頑張って探すんだ」


 お家を出ていろんなお店が並んでる通りに向かってる時にね、いいのが見つかるといいねってキャリーナ姉ちゃんが言ったもんだから、僕は頷きながらふんすと気合を入れたんだよ。


 でもね、


「ルディーン。そんなに気負わなくても、買える所に心当たりがあるから大丈夫よ」


「えっ、そうなの? そっか。僕、がんばって探すぞって思ってたのになぁ」


 お母さんにこんな事を言われちゃったもんだから、僕はちょっとだけしょんぼり。


 もう! 絶対僕が一番最初に見つけるんだって思ってたのに!



 そんなお母さんに手を引かれて僕たちが連れて行ってもらったとこはね、壁がピンク色のとってもかわいらしいお店だったんだ。


 だからそのお店を見たキャリーナ姉ちゃんは、頭をこてんって倒しながらお母さんに聞いたんだよ。


「ねぇ、お母さん。今日は私たちが乗る敷物を探しに来たんだよね。でもここって、小物屋さんでしょ? だってこんなにかわいいお店だもん」


「ふふふ、確かにそう見えるかもしれないけど、実を言うとここ、裁縫ギルドなのよ」


 これには僕もキャリーナ姉ちゃんもびっくり。


 だってこのお店、壁だけじゃなくって屋根も明るいオレンジ色だし、入口だって上っ側が丸くなってるかわいい感じのドアなんだもん。


 その上薄いピンク色なんだよ、このドア。


「こんなかわいいお店なのにここ、ほんとに裁縫ギルドなの?」


「あら、ルディーンがいつも行ってる錬金術ギルドだって、そうは見えない外見をしているじゃないの」


 だから僕、本当にここが裁縫ギルドなの? って聞いたんだけど、そしたらお母さんに錬金術ギルドだってそうは見えないじゃないって言われちゃった。


 う~ん、そう言えば僕は初めて錬金術ギルドに行った時も小物屋さんみたいだなって思ったっけ。


 って事はもしかして、イーノックカウのギルドはこう言うお店みたいなとこが多いのかなぁ。


「それにほら、あの看板を見てみなさい。ちゃんと裁縫ギルドって書いてあるでしょ」


 僕がそんな事を考えてたらね、お母さんが扉の横にかかってる看板を指さしてこう言ったんだよ。


 だからそっちを見てみると、その看板には布と糸を通した針の絵がおっきく描いてあって、その下にはちゃんと裁縫ギルドって書いてあったんだ。


「ほんとだ、裁縫ギルドって書いてある」


「そうでしょ。それじゃあ入るわよ」


 ちりんちりん。


 そう言ってお母さんが扉を開けると、軽い感じのドアベルが鳴ったんだ。


 だから僕、こういうとこも小物屋さんみたいだなぁって思いながら裁縫ギルドに入っていったんだけど、


「いらっしゃいませ」


 そしたらちょっと野太い男の人の声が聞こえたんだよね。


 だからそっちの方を見てみたんだけど、そしたら奥の方におっきくて筋肉モリモリのおじさん? でも、フリフリのお洋服を着てるし、スカートを履いてるって事はおばさんなのかなぁ? そんなよく解んない人がいたんだ。


 だから僕、頭をこてんって倒しながらどっちなんだろうって考えてたんだけど、その間にお母さんがその人を見つけてニッコリ笑いながらご挨拶したんだよ。


「あっ、クリームさん。お久しぶりです」


「あ~ら、シーラちゃんじゃない。おひさぁ~」


 そしたらさ、その筋肉モリモリの人が両手を前に出しながら手を振って、にこにこしながら僕たちの方に来るんだもん。


 だから僕、思わずお母さんの後ろに隠れちゃったんだよ。


 でもね、キャリーナ姉ちゃんも僕とおんなじようにお母さんの後ろに隠れたもんだから、僕たちはお母さんの後ろでぶつかっちゃんたんだ。


「今日はハンサムな旦那さんは一緒じゃないの?」


「ええ。ハンスは別の用事があって、今はそっちをかたづけてくれているのよ」


 だけど筋肉モリモリの人はそんな僕たちの事は全然気にしてないみたいで、ニコニコ笑顔のままお母さんとお話を始めちゃったんだ。


 だからそれを見た僕とキャリーナ姉ちゃんは、もしかしたら変な人じゃないのかもって思ってお母さんの後ろからそぉ~っと出て行ったんだよ。


「そうなの。ところで後ろのふたりはシーラちゃんのお子さん? 二人ともかわいいわね」


 そしたらそんな僕たちに気が付いた筋肉モリモリの人が、すっごい笑顔でこっちを見るんだもん。


 だから僕とキャリーナ姉ちゃんはびっくりして、またお母さんの後ろに隠れちゃったんだ。


「あらあら、いきなり知らない人に声を掛けられてびっくりしちゃったのかな?」


「こら、ふたりとも。クリームさんに失礼でしょう。ちゃんとご挨拶しなさい」


 お母さんに怒られちゃったでしょ。


 だから僕とキャリーナ姉ちゃんは一度顔を見合わせてから、またそっとお母さんの後ろから出てごあいさつしたんだ。


「こんにちは、キャリーナです」


「ルディーンです」


「あら、ちゃんとご挨拶できていい子たちね。私はクリーム、この裁縫ギルドのギルドマスターよ」


 なんと! この筋肉モリモリの人は裁縫ギルドのギルドマスターさんなんだって。


 これには僕もキャリーナ姉ちゃんもすっごくびっくり。


「ギルドマスターさんなの?」


「ええ。こう見えて、裁縫の腕はかなりのものなのよ。驚いた?」


 だからキャリーナ姉ちゃんは思わずほんと? って聞いてみたんだけど、そしたらクリームさんはにっこり笑いながらそうよって。


 その笑顔がすっごく優しそう見えたもんだから、僕は思い切ってさっきから気になってた事を聞いてみる事にしたんだ。


「ねぇ、クリームさんておじさんなの? おばさんなの?」


「こら、ルディーン!」


「ごめんなさい!」


 僕がそう聞いたら、お母さんは大慌てでそんな事言っちゃダメ! ってすっごく怒ったんだよ


 だから僕、びくってしてすぐにごめんなさいしたんだけど、クリームさんはずっとニコニコしたまんまで大丈夫よって。


「シーラちゃん。子供は素直だから、見たままの事を口にしてしまうから仕方がないわよ。あのね、ルディーン君。見ての通り私の体は男だけど心は乙女なの。だからおじさんじゃなくてお姉さんなのよ」


 僕ね、おじさんが女の人になったらおばさんになると思ってたんだよ。


 でも心が乙女なおじさんはお姉さんなんだってさ。


「だから私の事はクリームさんか、お姉さんって呼んでね」


「うん、わかった!」


 そんなお願いを聞いた僕はうん! って元気よく頷いて、これからはクリームさんの事、クリームお姉さんって呼ぶ事にしたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 ルディーン君の前世のテレビにも、当然ニューでハーフなお姉さま方は当然いました。


 でも知識でしか前世を知らないルディーン君からすると、そのニューでハーフな人たちとクリームさんがつながらなかったんですよ。


 なので初めて見る男なのに心は乙女なクリームさんを見て驚いたという訳です。


 さて、今週は泊りの出張があるので原稿を書く時間が取れません。


 なのですみませんが次の金曜日はお休みさせて頂き、次回はの更新は来週の月曜日となります。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] シーラお母さんは元々はグランリル村に住んでたんじゃなくて結婚してから来たんですか冒険者ギルドの練習場で練習してたり今回のクリームさんの対応から気になりました村には祖父母がいないのか登場…
[一言] (笑)。「八男って」でもそういう裁縫師さんいましたね、「最強の鑑定士」でもそういう調香師さんがいました。 名前で呼ぶのが一番無難でしょう。 こういう文明レベルが低い世界では、性同一性障害と…
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