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564 そう言えばバーリマンさんもおんなじだったっけ


 ロルフさんたちは僕が作ってあげた羽根を見ながらどんなものに使えるかなぁっていうお話をしてたんだけどね、それが終わるとちょっと残念そうなお顔でこんな事言い出したんだよ。


「素晴らしい羽根を教えてもらったのじゃが」


「ええ。残念ですが、これは使えませんわね」


 これを聞いて僕、すっごくびっくりしたんだよ。


 だってさっきはちゃんと、ぶぉーって風が出たんだもん。


 だから何で? って聞いたんだけど、そしたら作ろうと思ってる魔道具の形の方に問題があるからなんだって。


「羽根を調べているうちに気が付いたのじゃが、これはこの大きさだからこそあれだけの風を生み出せておるのじゃよ」


「ええ。でも、これから作ろうとしている魔道具はもっと細い管を使う予定でしょ? そうなるとどうしても羽根が小さくなってしまうから、この形のものを使っても予定通りの風量は出無さそうなの」


 今は実験だから、ふっとい筒を使ってるでしょ?


 だからそれに付けた羽根も、おっきなのを使ってるんだよ。


 でもね、本番はもっと細いのを使うつもりだから、羽根が小さくなりすぎて使えないんだってさ。


「そっか。ちっちゃい羽根だと、いっぱい回しても風はあんまり強くならないもんね」


「うむ。ルディーン君が見せてくれた羽根は効率よく空気を巻き込むから今までの物よりははるかに強い風を起こせるが、流石に小さくてはのぉ」


 って事で、この羽根を使った魔道具を作るのはやめって事になりそうだったんだけど、


「あの、ちょっといいでしょうか?」


 ここでルルモアさんがそぉっと手をあげながら聞いてきたんだよ。


「何か気が付いた事でもあるのかな?」


「いえ。単純な疑問なのですが、その羽根をつける場所は今の太さのままで、そこから先の管や風の出口だけを細くする事はできないのでしょうか?」


 これには僕もロルフさんたちもびっくり。


 だってそんなの、できるに決まってるもん。


「わしらは少々、頭が固くなっておるようじゃな」


「ええ。幼いルディーン君はともかく、私たちが気が付かなかったのは間違いなく落ち度ですわ」


 これがね、出てくるもんが石とかだったら先っぽを細くするなんて無理なんだよ。


 でも出てくるのは風だもん。


 先っぽを細くしたってちゃんと出てくるに決まってるんだから、ルルモアさんの意見を聞いたるロルフさんとバーリマンさんがちょっぴりしょんぼりしちゃったんだ。



「こんなのでいい?」


「うむ。上出来じゃ」


 ルルモアさんが考えてくれたもんだから、風車をつけるとこはふっとい筒を使う事にしたでしょ?


 だったらさ、新しく作んなくったって今実験に使ってるのをそのまま使ったらいいんじゃないのって事になったもんだから、僕がクリエイト魔法を使って出口の方だけをほっそく作り替えたんだよ。


 だって、そしたら先っぽを細くしても大丈夫かどうかがすぐに解るもんね。


「それでは起動してみるぞ」


 と言う訳で、出来上がった魔道具をロルフさんが早速動かしてみたんだ。


 そしたらね、ほっそくした出口からぶぉーって風が出て来たもんだから、みんなにっこり。


「うむ、成功じゃな」


「はい。それにこれでしたらば大きな風の魔石を使わなくても済みますから、初めに考えていたものよりもかなり安く作れますわね」


 ちゃんとこれくらいの風が出て欲しいなぁっていうくらい強い風が出てるし、それに回転の魔道具を作るだけだったらおっきな魔石はいらないでしょ?


 そりゃあ、僕がお家で作って遊んでたのみたいに米粒くらいのじゃ回す力が弱いからダメだけど、さっき風の魔石に使った大豆くらいのより小っちゃい小豆くらいの魔石でも十分だから、かなり安く作れるはずなんだよね。


 そんな訳で、後はどんな形にするかを決めれば完成だねってお話になったんだけど、ここでまたルルモアさんがそぉっと手をあげたんだ。


「どうしたの、ルルモアさん?」


「何か、また新たな問題点にでも気が付いたのかな?」


 さっきはルルモアさんが気付いたおかげで、おっきな風車を使って魔道具を作れることが解ったでしょ?


 だからロルフさんも、もしかしたらまた違う事に気が付いたんじゃないかなぁって期待した目でルルモアさんに聞いたんだよ。


 でもね、ルルモアさんはそうじゃないよって。


「いえ、そうではないんです。掃除用の魔道具作成にめどが立ったのなら、先ほどから気になっていたことを聞いてみてもいいかと思いまして」


「先ほどから気になっていた事とな?」


 僕もロルフさんと一緒になって、さっきから気になってた事って何だろうって頭をこてんって倒したんだよ。


 そしたらさ、ルルモアさんはそんな僕の方を見てこう言ったんだ。


「さっきこの試作品を作る時に、暖かい風で髪の毛を乾かす魔道具を自分の家で作ったと言っていたわよね? その話を詳しく聞きたいのよ」


「あったかい風が出る魔道具の事?」


 ルルモアさんはね、髪の毛をあったかい風で乾かせるって聞いてほんとにそんなのあるの? って思ってたんだって。


 だからもうすぐお掃除の魔道具が出来上がりそうだからって、僕に髪の毛を乾かす魔道具の事を聞こうって思ったそうなんだ。


「一部の高級宿なんかだと、髪の毛を乾かす魔道具はあるのよ。でもそれはみんなかなり大きなものだし、何より冷たい風しか出てこないのよ」


 おっきな宿屋さんにはね、髪の毛を乾かす魔道具を置いてあるとこもあるそうなんだよ。


 でもそういうのはみんなおっきくて動かせないから、風が出てくるとこに頭を持ってかないと乾かす事ができないんだって。


 それにね、出てくるのもおっきな羽根を回して起こしたただの風だから、僕が温かい風で髪の毛を乾かす魔道具を作ったって聞いてびっくりしたそうなんだ。


「それにルディーン君はさっき、試作品の掃除用魔道具から暖かい風を出そうとしていたでしょ? という事は、手に持てるくらい小さなものを作れるという事よね?」


「うん。お家にあるのは、お母さんがいっつも片手で持って使ってるよ」


 僕がお家で使ってる魔道ドライヤーの事を教えてあげると、ルルモアさんはそれは凄いって言うんだよ。


 でもね、そんなルルモアさんにロルフさんとバーリマンさんがちょっと困ったようなお顔で、ある事を教えてあげたんだ。


「あー、興奮しておるところを悪いのだが、その髪の毛を乾かす魔道具、すでに商業ギルドに特許登録してあるぞ」


「えっ?」


「登録したのはつい最近ですし、この魔道具の事はまだ魔道具を扱っている商会にも伝わっていないでしょうから知らなくても仕方が無いのですけどね」


 そう言えば魔道ドライヤーって、前にロルフさんたちに教えた事があったっけ。


 僕はね、確かその時のバーリマンさんも今のルルモアさんみたいだったなぁって思い出したんだよ。


 そしたらさ、どうやらそれはロルフさんもおんなじだったみたい。


「しかし先ほどのルルモア嬢の反応、ギルマスが初めてこの魔道具の事を聞いた時とそっくりじゃな」


「うん! バーリマンさんも魔道ドライヤーの事を教えてあげた時、大騒ぎしてたもんね」


 でもね、そんな僕たちにバーリマンさんとルルモアさんは、ドライヤーの事を聞いたら喜ぶのは当たり前じゃないか! って怒ったんだよ。


「仕方がないではありませんか。伯爵は冬場に濡れた髪を乾かすのがどれだけ大変なのか、ご存じないでしょう」


「そうですよね。それを暖かい風で乾かせると聞けば、多くの女性が喜ぶと思いますよ」


 そっか、女の人は髪の毛長いもんね。


 それにお母さんだって、僕が作ってあげた魔道ドライヤーをすっごく喜んでたもん。


 きっとみんな、あったかい風が出てくる魔道ドライヤーがあったら嬉しいんだね。


 そう思った僕は、ルルモアさんが作って欲しいって思うのは当たり前なんだねってうんうん頷いてたんだよ。


「でも、そうですか。商業ギルドに登録されたというのなら、発売されるのを待つことにします」


 なのに、何でか知らないけど、どっかが売り出すまで待つって言うんだもん。


 だから僕、すっごくびっくりしたんだ。


「えー、何で?」


「えっ? だってまだ売っていないのなら、発売されるまで待つしかないでしょう?」


「だから、何で? 僕、作れるよ?」


 僕がそう言うとね、今度はルルモアさんがびっくりしたお顔になっちゃんたんだよ。


 でね、僕のお顔を見た後にロルフさんたちのお顔を見てこう言ったんだ。


「えっと、作ってもらってもいいのでしょうか?」


「ルディーン君が考え出した魔道具じゃからのぉ」


「特許を持っているのもルディーン君ですし、その彼が作ってあげるというのですからいいと思いますよ」


 ロルフさんとバーリマンさんがいいよって言ったもんだから、ルルモアさんは僕にもほんとに作ってくれる? って聞いてきたんだよ。


 だから僕、うん! って元気よくお返事したんだ。


「作った事あるから魔道回路図の書き方は解ってるもん。すぐに作ってあげるよ」


「でも、魔石だって必要だし」


「大丈夫だよ。だって魔道ドライヤーはお掃除の魔道具みたいなぶぉーって強い風が出なくってもいいから、僕が持ってる一番小っちゃい魔石でも作れちゃうもん」


 魔道ドライヤーはね、髪の毛を吹っ飛ばすわけじゃないから弱めの風でも大丈夫なんだよ。


 だから一角ウサギから獲れる米粒くらいの魔石を火の魔石に属性変換すれば、それ一個で羽根を回すのと風を温めるの、その両方ができちゃうでしょ。


 それくらいの魔石だったらいっぱい持ってるから、何の心配も無いんだよね。


「今はロルフさんたちとお掃除の魔道具を作ってる途中だからダメだけど、その後で作ってあげるね」


「ありがとう、ルディーン君」


 だから後でドライヤーを作ってあげるよって約束したら、それを聞いたルルモアさんはすっごく嬉しそうなお顔で笑いながら、僕にありがとうって言ってくれたんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 まだ掃除用の魔道具は出来上がっていませんが、クリーンの魔法から始まったお掃除のお話はこれで終わりです。


 思ったより長くなってしまいましたが、まさか魔道具の完成ではなく魔道ドライヤーをルルモアさんに作ってあげるというラストになるとは思いませんでした。


 魔道ドライヤーの話そのものは最初から入れる予定だったんですけど、前に同じようなやり取りをバーリマンさんの時にやっているので箸休め的に数行だけ書くつもりだったんですよ。


 でも実際はこの体たらくです。


 本当に話をまとめるのが下手だなぁ。


 さて今週末ですが、昼間はちょっとした用事があり、夜は毎年恒例のスーパーロボット魂ライブの配信があるので書く時間が取れそうにありません。


 今年は東京へ行くわけではないので本当は書くつもりだったのですが、突然予定が入ってしまったのですみません。


 と言う訳で申し訳ありませんが、次回は来週の金曜日の更新となります。 


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― 新着の感想 ―
[良い点] ルルモアさん、ルディーンくんが目の前にいるのに、作ってほしいって言わないで売られたら買うわーって言うの、公平というか良い人ですねえ。
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