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557 クーラーは冷たい風が出てくるだけの魔道具じゃないんだよ


 僕たちが錬金術ギルドに入るよってお話をしてたらね、そのお話が終わるのを待ってから冒険者ギルドのお爺さんギルドマスターがこんな事を聞いてきたんだよ。


「ところで、ルルモア。先ほどからよく出てくるクールというのはどのような魔法なのだ?」


「はっ? ギルドマスター、クールの事、知らないんですか?」


 さっきから僕たち、クールの魔法の事をお話してたでしょ?


 それを聞きながらお爺さんギルドマスターはずっと、どんな魔法なのかなぁ? って思ってたんだって。


 だからお話が終わったのを見て聞いてみたそうなんだけど、そしたら何で知らないの? ってルルモアさんはびっくりしちゃったんだ。


「先ほどから話していたではないですか。クーラーの魔道具を作るために必要な魔法ですよ」


「それくらいの事は、わしでも解っておる。しかしな、クールという魔法自体の事は、何も知らないのだ」


 お爺さんギルドマスターもね、クーラーの事はちゃんと知ってるそうなんだよ。


 でもそれに使ってる魔法がどんなものかまでは知らなかったんだってさ。


「魔道具の特性から考えて、最初は冷たい風を生み出す魔法かと思っておったのだが、前に聞いたところそうではないと言われてしまったな」


「えっ、違うんですか? 私もてっきりそのような魔法かと」


 クーラーって、冷たい風を出してお部屋を涼しくする魔道具に見えるでしょ?


 だからお爺さんギルドマスターは、それに使われているクールを冷たい風を作る魔法だって思って人に聞いてみた事があるそうなんだ。


 でもね、そしたらその人から違うみたいだよって言われたんだってさ。


「聞いた相手もあまり魔法に詳しくなくてのぉ。それが間違っておる事は知っておっても、クールがどんな効果を生み出す魔法かまでは知らなかったのだ」


「ああ、なるほど。確かに冷たい風が出てくる魔道具ですもの。そう思うのも無理はありませんわね」


 そんなお爺さんギルドマスターたちののお話を聞いて、バーリマンさんがクールがどんな魔法なのかを教えてあげたんだ。


「クールというのは、ある指定した範囲の空気を一瞬にして冷やす魔法ですわ」


「ふむ。だが、わしが知っておるクーラーという魔道具は確かに部屋の中を冷やすが、先ほども言った通り直接ではなく冷たい風を出す事で冷やしておったぞ」


 お爺さんギルドマスターにそう言われたバーリマンさんはね、それは魔法の特性をよく理解していないから勘違いするんだよって言うんだ。


「この魔道具の凄い所は、クールの魔法特性を余すことなく利用している事なのです」


「それはどういう事かな? 魔法の知識のないわしにも解るように説明してもらえると助かるのだが」


 バーリマンさんはね、このクーラーという魔道具はただ冷たい風を出すんじゃなくって、お部屋の中のあったかい空気を冷やして出してるんだよって教えてあげたんだ。


「部屋の中の空気も冷やしておるとな?」


「ええ。クールの魔法は効果範囲にある空気を瞬時に冷やす魔法です。ルディーン君はそこに着目し、部屋の中の空気をクールの効果範囲に流し込むことにより暖かい空気を冷やしてから部屋の中に戻す魔道具を考え出したのです」


 バーリマンさんの言っている通り、クーラーって後ろからお部屋の中のあったかい空気を吸い込んでからクールがかかってるとこを通す事で、お部屋の中の空気を全部冷やしちゃおうって言う魔道具なんだよね。


 だから別に冷たい空気を出してるだけの魔道具じゃないんだよって、お爺さんギルドマスターに教えてあげたんだけど、


「ええっ!?」


 そしたらさ、何でか知らないけどルルモアさんが急に、すっごくびっくりしたお顔でこんなおっきな声を出したんだよ。


「どうしたの、ルルモアさん?」


「ルディーン君。クーラーの魔道具を作ったのって、あなただったの?」


 だから僕、どうしたの? って聞いてみたんだけど、逆にルルモアさんからクーラーの魔道具を作ったのは僕だったの? って聞かれちゃったんだ。


「あっ!」


 そしたらね、今度はそれを聞いたバーリマンさんが、お口に手を当てながらしまったぁってお顔になっちゃったんだ。


「あれ? ルルモアさん、知らなかったの?」


「知らなかったも何も、そもそもほとんどの魔道具の特許は製作者が秘匿されているから、知っているはずがないのよ」


 ルルモアさんに教えてもらって初めて知ったんだけど、特許に登録されてる魔道具ってお金を払えば作り方は教えてもらえるんだけど誰の特許なのかまでは教えてもらえないようになってるんだって。


「さっきクールはルディーン君に教えてもらったって言っていたでしょ? だからてっきりそれを聞いたフランセン様か錬金術のギルドマスター様、またはそのお二方が共同でクーラーを開発したのかと思ってたんだけど」


 こういう魔道具って、特許ってのを取るとお金が入ってくるんだって。


 でもそのお金が誰に入ってくるか解っちゃうと、悪もんが来るかもしれないでしょ?


 だから普通は誰が作ったのか、内緒にすることが多いんだって。


「ギルマスよ。しゃべってしまっては、秘匿した意味がないではないか」


「申し訳ありません、伯爵。うっかりしておりましたわ。うちのギルドでは普通に話している内容だったからつい」


 なのにバーリマンさんが僕が作ったんだよって話しちゃったもんだから、それを聞いたロルフさんに怒られちゃったんだ。


「フランセン老が正しいと仰るのなら事実なのであろうが……流石にこのような子供が、新たな魔道具を作り出すなど考えもしないからな。わしもこれにはちと驚いた」


「そうですよね。それにフランセン様たちは魔道具作りでも有名ですから、普通はこのお二方が作ったものだと思いますよ」


 ギルドマスターのお爺さんは、僕みたいなちっちゃい子が魔道具を作れるだなんて思わなかったんだって。


 それにルルモアさんだって、僕が新しいお菓子を考え付くのが得意だって解ってたけど、まさか魔道具まで新しく作っちゃうなんて思ってなかったらしいんだよね。


 だから二人とも、クールの魔法を教えてもらったロルフさんたちが考えたんだろうなぁって思ってたそうなんだよ。


「でも、そうなるともしかして、最近売り出された新しい発想で作られた簡易クーラーも?」


「うん。あれはね、僕が最初に考えたクーラーなんだよ。それにね」


「これ、ルディーン君。あまり軽々しく教えるでない」


 でも僕がクーラーを作ったって解ったもんだから、ルルモアさんはもしかして簡易版の方も? って聞いてきたんだ。


 だからそうだよって答えたんだけど、そしたらロルフさんがそれ以上しゃべっちゃダメって。


「え~、なんで? ルルモアさんならいいでしょ?」


「いや、秘密というものはな、知るものが少ないほど良いのじゃ。だから親御さんならともかく、それ以外にはなるべく話さぬ方がよい」


「ええ、そうね。私もさっき、つい口が滑ってしまったもの」


 ないしょにしてる事でもね、知ってると間違えてしゃべっちゃう事があるんだって。


 だから知ってる人はなるべく少ない方がいいんだよって、ロルフさんとバーリマンさんは言うんだ。


「うむ。確かに知りさえしなければ、誰かに話してしまうなどという事は無いからな」


「ええ、そうですわね。ルディーン君、これ以上は話さない方がいいと私も思うわよ」


 それにお爺さんギルドマスターやルルモアさんもこれ以上話さない方がいいよって言ったもんだから、僕もこのお話はここでおしまいにした方がいいねって思ったんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 今回の話、実は書き始めのきっかけとして数行で終わらせるつもりの話題だったんですよ。


 なのになぜかこのネタだけで一本書き上げる事に。


 おまけに書いている最中、ルルモアさんがルディーン君が新たな魔道具を発明している事を知っているかどうかを調べるために結構な時間がかかってしまったんですよね。


 おかげで特に内容が無い話にもかかわらず、いつもの倍以上書き上げるのに時間がかかってしまった……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 確かに〜 気をつけてても、うっかりしなくても、お酒に酔ってポロッととか、寝言とかの不可抗力?で情報が漏れちゃうこともあるかもしれませんもんね。 知らない方がいいこともあるー。
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