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52 作っちゃった


 この後、残っている薬草の煮汁で何度か魔力の流れを見ながら付与する方法を練習してたらお爺さんが、


「よし、これでもう完璧にやり方を身につけたようじゃ」


 って太鼓判を押してくれたんだ。


 でね、この魔力を見ながらの付与についてもう一つ、いい事を教えてくれたんだ。


「この方法をきちんと身につけた事で、坊やは素材に一番適した許容魔力範囲が解るようになっておるはずじゃ。じゃからのぉ、これからはたとえ見知らぬ素材や初めて触る素材に魔力を付与する事になったとしても、それに合わせて魔力を付与するようにすれば失敗する事はないはずじゃ」


「ええっ、そうなの!?」


「うむ。下級ポーション作成でも魔力が十分に付与できたと知る事ができたのじゃろう? ならば他の素材でも同じじゃ。その目で見て、ここが最適じゃと思うところで付与をやめればよい。そうじゃ、ためしに別の物を作ってみるのが良かろう」


 お爺さんはそう言うと、カウンターの下の方でなにやらごそごそと探し始めてんだ。


 そしてやっとその探し物を見つけたらしくて、


「あったあった。これじゃ」


 そう言ってあるものを僕の前に差し出したんだけど、それは僕がよく知ってるものだったんだ。


「これって……」


「うむ、魔石じゃ。坊やはグランリルの村から来たと言っておったのぉ。そこから持ち込まれたものじゃな」


 そう、お爺さん場差し出したのは小さな、米粒くらいの大きさの魔石だった。


 僕が知っている魔石を使った錬金は二つ。


 一つは魔力を通して柔らかくなった魔石を溶解液に入れて溶かし、それを水で薄める事で出来上がる魔道リキッド作成だけど、これには魔力の付与は関係ないから今は多分関係ないと思う。


 と言う事は、もう一つの方って事だよね?


「おじいさん、これから作るのってもしかして?」


「その顔からすると思い至ったようじゃな。そうじゃ、これから坊やに作ってもらうのは属性魔石じゃよ」


 なんと! いつかは挑戦しようと思っていた属性魔石の作成に、こんなに早く挑戦できるなんて。


 属性魔石作成なんて絶対難しいだろうと思うから、僕は初めはもっと簡単なことから練習してある程度錬金術の事が解ってからじっくりと本を読みながら覚えようなんて思ってたんだ。


 だけどお爺さんがやり方を教えてくれるって言うのならきっと解りやすいだろうし、たとえば解らないとこがあっても教えてもらえるからすぐにできるようになるかもしれないもん、僕って物凄く運がいいよね。


「坊やはマジックミサイルが使えると言っておったが、着火の魔法、イグナイトは使えるかな?」


 そう思って喜んでたら、お爺さんからこんな事を聞かれたんだ。


「ちょっと待ってね」


 だから僕は慌ててステータスの設定魔法のページを開いてみたんだけど、そしたらイグナイトの呪文は使用可能を示す白い文字だった。


 使えるならこの魔法の事をもうちょっと詳しく知りたいなぁって思って使い方や魔法の詳しい説明が書かれたページに切り替えてみた所、どうやらこの魔法は1レベルから使える生活魔法で本来はロウソクや焚き木に火をつける為の魔法なんだけど、ライトの魔法のように指先に火を灯す事もできるって書いてあったんだ。


 どんな魔法か解ったと言う事で、僕は早速試してみる事にした。


「イグナイト」


 魔力を体に循環させてその魔力が指先に集まるようにイメージしながら呪文を唱えると、僕の指先にロウソクくらいの小さな火が音も無く灯った。


 この火、僕はまったく熱く感じないんだけど何か燃えやすいものに近づけると簡単に燃え移っちゃうらしいから、僕は周りに気をつけながらその火をお爺さんに見せてあげたんだ。


 するとお爺さんは満足そうな顔をして、


「うむ、ちゃんと使えるようじゃな。これが使えないと一番簡単な火の属性魔石も作れないから困ってしまう所じゃったが、坊やが使えて本当に良かった」


 そう言いながら僕に笑いかけてくれたんだ。


 お爺さんが言うには属性魔石ってその属性の魔法を使えないと作る事ができないらしくて、その中でも基本である火、水、土、風の四属性の内、一番低レベルから使える魔法がこの着火魔法イグナイトなんだって。


 因みに錬金術の腕が上がってくると作れる属性が増えて行くらしくて、次に作れるようになるのが光と闇の2属性、そしてもうちょっと上達して色々な魔法が使えるようになったら氷や雷のような特殊な属性魔石も作れるようになるんだってさ。


「その火を灯した時の魔力の変化は覚えておるかな? もし覚えておらぬのなら一度魔法を解除し、もう一度イグナイトの魔法を唱えなおすのじゃ。そうして覚えた火に変わる魔力を魔石に注ぎ込み、付与する事によって火の属性魔石が出来上がるのじゃよ」


「火に変わるまりょく……イグナイト」


 僕は一度イグナイトの火を消してから、もう一度魔力の流れを覚えるように注意しながら呪文を唱えなおした。


 なるほど、これが魔力の変化か。


 なんとなく使っていた時は解らなかったけど、ちゃんと気にして使ったら呪文によって僕の中で魔力が火に変換されて行くのがよく解る。


 で、お爺さんの話からすると、この魔力が形になる前の段階のものを魔石に注ぎ込めば火の魔石が出来上がるって事なのか。


 それが解って一安心。


 お爺さんはさっき魔石に覚えた魔力を注ぎ込むんだって簡単そうに言ってたけど実は僕、発動する魔力の変化なんて今まで意識した事なんて一度も無かったから実際にやってみて魔力の変化を感じ取るのがとっても難しかったらどうしよう? って少し不安だったんだよね。


 でも、やってみたら魔法が使える人ならだれだって解るよって言うくらい、魔力の変化を覚えるのは簡単だったんだ。


「火に変わる魔力は解ったようじゃのう。では早速、この魔石に火の魔力を付与してみるが良い」


 僕がホッとしているのを見てちゃんと魔力の変化を感じ取れたんだって思ったのか、お爺さんは米粒程度の小さな魔石を僕の前に差し出してきた。


 でもその魔石とお爺さんを見比べて、ちょっとだけ困っちゃったんだよね。だってさ、魔石がとっても高いんだって事を僕、知ってるもん。


 確かお父さんはこんな小さな魔石でも銀貨40枚くらいで売れるって言ってたのを覚えてたから、本当にこのまま属性魔石にしちゃっていいのかなぁ? って思ったんだ。


 ところが僕がその事を話すと、お爺さんは大笑い。


「おお、坊やはそんな事を考えておったのか。じゃが心配はいらんよ」


 そう言いながら僕の頭を撫でて、その理由を教えてくれたんだ。


 お爺さんが言うには、この程度の大きさでは魔石内の魔力が少なすぎて使い道がないから魔道リキッドの材料にするらしいんだけど、溶解液で溶かしちゃうのなら無属性でも属性魔石でも関係ないんだってさ。


「属性魔石作成に失敗して灰になってしまったらどうしようもないが、坊やならその心配もなかろうて。安心してやってみるがよい」


 その一言で僕はすっかり安心して、初めての属性魔石作成に挑む事にしたんだ。




 お爺さんは僕ならもう失敗しないよって言ってくれたけど、一応中の魔力の動きが完全に解るまで目の前の魔石をよぉ~く観察して、それからこの魔石にとって一番適している許容魔力範囲を探りながらちょっとずつ火の魔力を注ぎ込んで行く。


 そして。


「できた……」


 さっきまで無色透明だった魔石は、火の魔力を注がれた事によって今は真っ赤に染まってキラキラと宝石のように輝いていた。


 念のため鑑定解析で調べてみると、ちゃんと火の魔石と出てきたので僕はにんまり。

 得意満面でお爺さんの方を見ると、


「ほっほっほっほ、初めてじゃと言うのに見事な火の魔石を作ってみせたのぉ」


 そう言って、ほれ、言った通りちゃんとできたじゃろう? なんて顔をしながら笑ってたんだ。


 その姿を見てたら、初めての属性魔石作成に成功した喜びがどんどんこみ上げてきて、


「やった! やったぁ~!」


 僕は両手を何度も振り上げながら、大喜びしたんだ。


読んで頂いてありがとうございます。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] 「やった! やったぁ~!」 僕は両手を何度も振り上げながら、大喜びしたんだ。 前世の記憶があるのに幼過ぎるように感じることがありますが、年齢に精神が引っ張られているということなのでしょうね…
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