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524 お母さんがやるなら自分もやりたいよね


 ヒルダ姉ちゃんはね、初めて僕が魔法を使えるようになったって聞いた時に、私も使えるようになったらいいなぁって思ったんだって。


 だからお姉ちゃんも村の図書室に行って、魔法を覚えるご本を読んだことがあるんだってさ。


「そこには小さい頃から練習をしないと使えないと書いてあったから、魔法を使う事自体はあきらめたのよ? でも魔力を動かす練習のやり方は書いてあったから、一人でこっそり練習はしたのよね」


 ヒルダ姉ちゃんはね、大人だと魔法使いにはなれないらしいから、その時は僕に手伝ってって言わなかったんだって。


 でも試してみるだけなら、一人でもできるでしょ?


 だからこっそり練習はしたそうなんだけど、結局最後まで自分の中の魔力を見つける事ができなかったそうなんだよね。


「でもキャリーナは、ルディーンが魔力を動かす練習を手伝ったから魔法が使えるようになったんでしょ?」


「うん。キャリーナ姉ちゃんが教えてって言ったから、僕が教えてあげたんだよ」


「あの本にも指導者がいれば、だれでも魔力を動かすようになれると書いてあったもの。 なら私だって同じようにルディーンに教えてもらえば、魔法は使えなくても魔力を動かせるようになるはずじゃないの」


 ヒルダ姉ちゃんは魔法を使えるようになりたいんじゃなくって、魔石に魔力を注げるようになりたいだけなんだって。


 だったらさ、魔力さえ動かせるようになればそれができるんじゃないかな? って言うんだよ。


「ルディーンも魔石に魔力を注ぐとき、別に魔法を使ってる訳じゃないんでしょ?」


「そっか。そう言えば確かに、魔力を注ぐときって僕の中から魔石に魔力を動かしてるだけかも?」


 魔石に魔力を注ぐのって、別に呪文とか使わないでしょ?


 それに体の中に魔力を循環もさせたりもしてないもん。


 って事はさ、ヒルダ姉ちゃんの言ってる通り、魔力さえ動かせるようになれば魔石に魔力を注ぐ事ができるかもしれないんだ。


「実際に教えてもらわないと私が魔力を動かせるようになるかどうかは解らないけど、やってみても何か損をするわけじゃないもの。だから教えてもらえないかな?」


「うん、解った! ヒルダ姉ちゃんが魔力を注げるようになったら、僕がいなくたっておもちゃの三輪車で遊べるもん。そしたらスティナちゃんもうれしいだろうから、教えてあげるね」


 僕はスティナちゃんのお兄ちゃんだから、スティナちゃんが喜ぶ事だったら全部やってあげたいって思うんだよ。


 だからヒルダ姉ちゃんに魔力の動かし方を教えてあげるって言ったんだけど、


「おかあさん。ルディーンにいちゃとあそぶの? わたしもいっしょにあそびたい!」


 僕とヒルダ姉ちゃんのお話を聞いてたスティナちゃんが、自分をほっておいて二人で遊ぶって勘違いしちゃったんだ。


「違うのよ、スティナ。私たちは遊ぶんじゃなくって、魔力の動かし方を教えてもらうの」


 でもね、僕たちは別に遊ぶわけじゃないでしょ?


 だからヒルダ姉ちゃんはスティナちゃんに、遊ぶんじゃなくって魔力の動かし方を教えてもらうんだよって言ったんだ。


 でもスティナちゃんは、そのお話を聞いてもよく解んなかったみたい。 


「まりょく? まりょくってなぁに?」


「あのね、魔法を使う時に体の中で動かすもんだよ」


「まほう! スティナ、まほうつかいたい! スティナもいっしょにやる!」


 だからそれ何? って聞いてきたもんだから、僕はうっかり魔法を使う時に使うもんだよって教えちゃったんだ。


 そしたらそれを聞いたスティナちゃんが、私も魔法が使いたいなんて言い出しちゃったもんだから、僕とヒルダ姉ちゃんは困っちゃったんだよね。


「ねぇ、ルディーン。スティナでもできると思う?」


「う~ん、スティナちゃんはまだちっちゃいから、無理だと思う」


 スティナちゃんはもうすっかりやる気なんだけど、魔力を動かす練習をするにはちょっと小っちゃすぎるんだよね。


 だってさ、魔法って早い子でも4歳くらいからしかお勉強しないそうなんだもん。


 これ、前に何でかなぁって考えてみたんだけど、それで思いついたのが多分それくらいになるまではみんな動かす魔力、MPが少なすぎるからなんじゃないかなぁ?


「もうちょっとおっきくならないと、魔力が足んないもん。だから今はまだ、魔力を動かす練習、できないと思うよ」


「そうよねぇ。魔法を覚える本にも、魔力を動かす練習は4歳くらいから始めましょうって書いてあったし」


 僕、はじめっから魔力を動かせたから魔法のご本、最初の方はあんまりよく読んで無いんだよね。


 でもヒルダ姉ちゃんはそうじゃないから、最初っから全部読んだんだって。


 そしたらそこに、魔力を動かす練習は4歳くらいになってからねって書いてあったそうなんだよ。


「そっか。じゃあやっぱり、スティナちゃんはまだやっちゃダメだね」


 偉い人が書いたご本に4歳からやろうねって書いてあったって事はさ、それより下の子はやっちゃダメって事だもん。


 だから僕は、スティナちゃんはまだ魔力を動かす練習はダメって思ったんだよ? 


 でもね、


「やだ! スティナもいっしょがいい! スティナも、まりょくっての、やるの!」


 僕とヒルダ姉ちゃんがやっちゃダメって言ってるのが解ったスティナちゃんが怒り出しちゃったんだ。


 でね、それを見た僕はすっごく困っちゃったんだけど、ヒルダ姉ちゃんはスティナちゃんのお母さんだから、そんなこと言ってもダメよって。


「ダメよ、スティナ。もうちょっと大きくなるまで我慢しなさい」


「スティナ、いつおっきくなる? あした? あしたならやっていい?」


 ねぇねぇって言いながら、いつおっきくなるの? ってヒルダ姉ちゃんのスカートをつかんで揺らしながら聞いてくるスティナちゃん。


 これにはさすがに困ったみたいで、ヒルダ姉ちゃんは助けてってお顔で僕の方を見てきたんだ。


 でもなぁ。


 試しにスティナちゃんのステータスを見てみたんだけど、MPが6しか無かったんだよね。


 僕が初めて自分のステータスを見た時、僕とおんなじくらいの子のMPを調べたら少ない子でも12~13はあったもん。


 スティナちゃんはその半分だから、多分今魔力を動かす練習をしようと思ってもできないんじゃないかなぁ?


 そう思った僕は、スティナちゃんにその事を教えてあげる事にしたんだ。


 だってそうしたら、スティナちゃんだって魔力を動かす練習はまだできないってきっと解ってくれるはずだもん。


「スティナちゃん。魔力ってのはね、ちっちゃいうちはちょびっとしかなくって、おっきくなるとだんだん増えてくんだよ」


「いっぱいになるの?」


「うん。スティナちゃん、まだちっちゃいでしょ? だから魔力がちょびっとしかないんだ」


 僕はね、魔力が少ないと動かすのも難しいんだよってスティナちゃんに教えてあげたんだ。


「例えばお庭の砂で遊ぶ時だって、いっぱいあったらいろんなもんが作れるけど、ちょびっとしかなかったらちっちゃなお山も作れないでしょ?」


「おにわのすなとおんなじなの?」


「うん。ちょびっとしかないと、何にもできないんだ。だからもっとおっきくならないと、魔力を動かす練習はできないんだよ」


 ここまでお話してあげたらね、スティナちゃんも何となく解ってくれたみたい。


 でもね、そこで話は元に戻っちゃうんだ。


「じゃあ、スティナ。いつになったらまりょくのれんしゅ、できうの?」


 さっきヒルダ姉ちゃんに聞いたみたいに、僕にいつになったらできるのって聞いてきたんだよね。


 でも僕、さっきからずっと考えてたから、もうその答えは出てるんだ。


「あのね、僕が初めて魔力の練習をしたのは4歳になった日なんだ。だからスティナちゃんも4歳になったら」


「よんちゃい? よんちゃいっていつ?」


「えっとね、今スティナちゃんは2歳だから、いっぱい寝て起きて、あと2回お誕生日が来たら4歳だよ」


「そっかぁ。おたんじょうび、にかいかぁ」


 スティナちゃんはちっちゃなおてての指を使って1・2と数を数えてから、


「ルディーンにいちゃ。よんちゃいだよ! わすれたらめっ! だからね」


 僕に向かってちょっと怒ったようなお顔しながらそう言ったんだ。



 さて、スティナちゃんも解ってくれたって事でヒルダ姉ちゃんのお勉強なんだけど……。


「なるほど。これが魔力ってやつなのね」


 キャリーナ姉ちゃんの時とおんなじようにおててをつないで体の中の魔力を動かしてあげたらね、すぐにどうやって動かしたらいいのか解っちゃったみたいなんだ。


「えっと、魔法を使うのには確か、体の中にこの魔力を循環させればよかったのよね? ルディーン。キャリーナが最初に教わったって言う、あれ。指に明かりをつける魔法ってなんて言ったっけ?」


「指に明かりをつける魔法? ライトだよ」


「ライトね、解ったわ。”ライト”」


「わぁ。おかあさんのおゆび、ぴかぴかしてう」


 それにね、本で読んでて知ってたからなのか、僕が呪文を教えてあげたらすぐ体に魔力を循環させてライトの魔法を使っちゃったんだもん。


 これには僕、すっごくびっくりしたんだ。


「子供じゃないと魔法は覚えられないって書いてあったけど、やってみたら案外できちゃうもんね」


「そんな事無いよ。だってルルモアさんも、魔法を覚えるのはすっごく難しいんだよって言ってたもん」


「ルルモアさんって、冒険者ギルドの受付をやってる人よね。あのエルフの。そっか、じゃあ私には元々、魔法の素質があったのかな?」


 ヒルダ姉ちゃんはそう言って笑うとその後もライトの練習を続けて、その日のうちに10本の指、全部にライトをつける事ができるようになっちゃったんだ。



 読んで頂いてありがとうございます。


 ヒルダ姉ちゃん、やっぱりチートキャラでした。


 設定としては、子供の頃に動かす練習をしていないと魔力が停滞して体の中に循環させることが難しくなるので、大人は魔法を使えるようにはならないという事になっています。


 ただ、ヒルダ姉ちゃんは取得経験値上昇なんてチートスキルを持っているので、一度コツをつかんでしまえば魔力循環もあっという間に習得してしまいました。


 そして魔法はその魔力循環ができれば使える訳で……このまま練習を続ければあっと言う間に見習い魔法使いや見習い神官の一般職をカンストし、ジョブとしての魔法使いや神官になってしまうんじゃないかなぁ?


 まぁそこまで続ける事は無いでしょうから、そんな日は来ないと思いますけどね。


 さて、先日も書いた通り、これから年末までは出張が続きます。


 そして今週もその出張があるので、申し訳ありませんが次の金曜日もお休みさせてください。


 と言う訳ですので、申し訳ありませんが次の更新は来週の月曜日になります。


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― 新着の感想 ―
[一言] あー……そっか、まだ2歳かー…… ま、4歳から始めても将来有望、なのかな?(レベルキャップ次第 でもまあ、戦士系の村に魔法文明の継続導入の未来図が! 「甘味文明では」 確かに。
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