表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

483/756

476 でも魔道具のご本にはできるって書いてあったよ?


「ふむ。その顔からすると、やはり良い魔道具を知っておるのじゃな」


 お家に置いてある魔道具の事を思い出したらね、そんな僕を見たロルフさんがこんなこと言ったんだよ。


 だから僕、教えてあげる事にしたんだ。


「あのね、僕んちにはパンケーキを焼くためのホットプレートって言う魔道具があるんだ」


「ほう、ほっとぷれいととな。して、それはどのような魔道具なのじゃ?」


「だからパンケーキを焼く魔道具だって言ってるでしょ」


 そう、僕が思い出した魔道具っていうのはホットプレートの事なんだ。


「フライパンやお鍋を火にかけると、すっごくあっつくなっちゃうでしょ? でもパンケーキってあんまり熱すぎるとこで焼くと焦げちゃうんだ」


「なるほど。そのほっとぷれーとっていう魔道具は、パンケーキを焼くのに丁度いい温度になる魔道具なのね」


 バーリマンさんは僕のお話を聞いて、ホットプレートがどんな魔道具か解ってくれたみたい。


 でもね、それを聞いたロルフさんは不思議そうなお顔で僕に聞いてきたんだよ。


「ほっとぷれーとがどのような魔道具かは解ったが、パンケーキを焼くという事はそれ相応の温度まで上がるという事であろう? ルディーン君、それをどのように使ってセリアナの油を溶かすつもりなのじゃ?」


「あのね。僕、お家にあるホットプレートをそのまんま使うんじゃなくて、油を溶かすホットプレートを作ったらいいんじゃないかなぁって思ってるんだ」


「そうか。パンケーキを焼くのに適した温度にできるというのなら、セリアナの油を溶かすのに適した温度にもできるという事なのね」


 ホットプレートはね、火の魔石の魔力の強さを抵抗の魔道回路図で調節する事で焼くとこの温度を変える事ができるでしょ?


 だからバーリマンさんの言ってる通り、セリアナの実の油が溶けるくらいの温度にだってできるはずなんだよね。


「まさか、そのような魔道具が存在しておったとは。して、ルディーン君。その魔道具は簡単に作成できるのかな?」


「えっとね、材料があればすぐに作れるよ」


 ホットプレートはお家で使うやつとか村のみんなが食べるパンケーキを焼くおっきなやつとかを作った事があるから、材料があったらすぐに作れるんだよね。


 でもさ、ここは錬金術ギルドでしょ?


 だからそんなもんは無いだろうから、お外に買いに行かなきゃって思ったんだ。


 でもね、


「どんな材料がいるの? 大体のものならすぐに揃うと思うわよ」


 バーリマンさんがこんなこと言うもんだから、僕、すっごくびっくりしちゃった。


「え~、なんで? お薬を作る材料とは全然違うもんだよ?」


「パンケーキを焼くための魔道具って言う話だもの、そんな事は解ってるわ。鉄板や銅板を作るための金属材がいるのでしょう?」


 バーリマンさんはね、そう言うと何でそんなのが錬金術ギルドにあるのかを教えてくれたんだ。


「このギルドの入口には、私が作ったアミュレットが置いてある机があるでしょ? あれは主にこのギルド内で作っているのよ」


「それにわしやギルマスは、このギルド内で簡単な魔道具を作成する事もあるのじゃよ。ここにはそのための材料として、いろいろなものが置いてあるのじゃ」


 流石に武器や防具を作るくらいおっきな材料は置いてないけど、薄い鉄板とか銅板だったらいろんな大きさのが置いてあるんだって。


 だからそれを使ってホットプレートを作ったら? ってロルフさんとバーリマンさんは言うんだよね。


「わしらと違って、ルディーン君は金属を加工するクリエイト魔法が使えるからのぉ。必要な厚さや大きさのものが無かったとしても、いくつか組み合わせれば作れるじゃろう?」


「うん! 今回のはセリアナの実の油を溶かしてベニオウの実の皮で作った粉を溶かすのに使うだけでしょ? だったらそんなにおっきなのは要らないから大丈夫だよ」


 ここは錬金術ギルドだから、魔道リキッドの原液はあるよね。


 それに火の魔石に変える無属性の魔石は僕のポシェットの中に入ってるもん。


 だから後はセリアナの油を溶かすとこのと魔道リキッドを入れるとこに使う銅板さえあれば、それだけでもう作れちゃうんだ。


「それならばすぐに出してくるから、そのほっとぷれーとという魔道具、作ってもらえるかしら?」


「いいよ!」


 バーリマンさんに銅板や他にいるいろんな材料を出してもらった僕は、早速ホットプレートを作り始める事にしたんだ。



「どうやら構造自体は、それほど複雑なものではないようじゃな」


「ですが、回路図そのものを発動体にすると言う発想は、かなり斬新ですわよ」


 僕がセリアナの実の油を溶かすために作った取っ手のついてない銅製のちっちゃなお鍋みたいなのに魔道回路図を描いてたらね、それを見たロルフさんたちがこんな事を話してたんだよ。


 でもね、その中にいっこおかしな事があったもんだから、僕は回路図を書くのをやめてバーリマンさんに聞いてみたんだ。


「ねぇ、バーリマンさん。回路図を発動体にするのって普通じゃないの?」


「えっ? ええ、少なくとも私は知らなかったわ」


 これを聞いた僕は、すっごくびっくりしたんだ。


 だってこのやり方、最初にホットプレートを作った時にご本を読んで知ったんだもん。


「でもでも、魔道具のご本には属性魔石の魔力は、火とか氷に変えなくったってそのまんま使えるって書いてあったよ? 僕、あれを見て冷蔵庫とかはこうやって作るんだろうなぁって思ったもん」


「えっと……確かに属性魔石の魔力は変換しなくても、その属性の効果は発揮するわよ。でもそれは活性化させることによってその魔力を発するという意味で書かれていたのではないかしら?」


「あっ!」


 そう言えば僕、こないだその方法でちっちゃな魔道オーブンを作ったんだっけ。


「でもルディーン君が今やったように、魔道回路図を発動体とする事で運んだ属性魔力を火に変換せずに使うというのは流石に聞いた事が無いわ」


「うむ。回路図はあくまで属性魔力を火や氷に変換するためのものと考えておったからのぉ。じゃが変換する作業を省いて魔力だけを放出すれば、このような事ができるのじゃな」


 魔石そのものが活性化したのと違って、移動させた属性魔力って火とかに変えないと周りにあんまり影響を与えないんだって。


 だからこんな使い方、誰も考えなかったみたい。


「回路図を描いたもの自体に影響を与えて属性の魔力を使う。この方法でしたら、このほっとぷれーとだけでなく、いろいろな魔道具に応用できそうですわね」


「うむ。すぐには思いつかぬが、広く知れ渡れば様々な用途に使われる事じゃろうて」


 この方法を使ったらいろんなのが作れるんじゃないかなぁ? って思ったロルフさんたちは、明日にでもこの新技術を僕の名前で登録しなきゃ! なんて言って大騒ぎしたんだ。



「うむ。触ってもほぉっと温かいだけじゃな。これならば熱で薬効が変質する事も無かろう」


 出来上がったあんまりあっつくならないホットプレート……どっちかって言うと魔道鍋かな? のスイッチを入れて、その中を触っても大丈夫だって解ったロルフさんは、早速セリアナの実の油をその中に入れたんだよね。


 そしたらすぐに溶けだして、ちょっとしたら透明な液体の油になっちゃったんだ。


「それではベニオウの粉を入れるぞ」


 でね、それを確認したロルフさんは、ベニオウの実の皮で作った粉をその中に入れて、木でできたおさじでゆっくりとかき混ぜ始めたんだよ。


 そしたらさ、溶ける前の油に入れたのと違って今度はベニオウの粉が溶け始めたもんだから僕、すっごくびっくりしたんだ。


「バーリマンさん。粉が溶けてくよ」


「ええ。まさか溶けてしまうとは」


「これはうれしい誤算じゃのぉ」


 入れる前は、よく混ざればいいなぁってしか思ってなかったでしょ?


 なのに溶けちゃったもんだから、ロルフさんとバーリマンさんはにっこり。


 これだったらきっと、ちゃんとお肌つるつるポーションになるねってお話してたんだ。


 でね、全部の粉が溶けるのを待ってから魔道具のスイッチを消すと、


「伯爵、固まったようですわよ」


「うむ。色が溶かす前と違って、少し赤みがかかっておるの」


 溶けてた油が固まって、そこにはベニオウの粉を混ぜる前と違ってちょっと赤っぽい色のものが出来上がってたんだ。


「それではルディーン君。ちゃんと出来上がっておるか、調べてもらえるかな?」


「うん、いいよ!」


 って事で、さっそく鑑定解析。


 そしたらさ、効果は僕の作ったのよりちょっと弱いけど、ちゃんとお肌がつるつるになるって出たんだ。


「で、どうじゃった?」


「あのね。僕が作ったのより弱いけど、ちゃんとお肌がつるつるになるって出てるよ」


「肌の若返り効果は?」


「えっとね……うん。ちゃんとあるみたい」


 こっちも僕が作ったのほどの効果は無いけど、ずっと使ってればちゃんとお肌が若返ってくみたいなんだよね。 


 だからそれを教えてあげると、ロルフさんとバーリマンさんは大喜び。


「ついに、ついに私たちだけで、肌用のポーションを作り出せましたわ」


「うむ。後は森の奥に生えておるベニオウの木の実を定期的に採取できるめどがつきさえすれば、この薬を売り出す事が可能になるのぉ」


 まだすぐにいっぱい作れるようになる訳じゃないけど、とりあえず僕がいなくっても作れることが解ったから一安心。


 これでいつ僕の商会を開いても大丈夫だねって、ロルフさんは嬉しそうに長くて白いお髭をなでたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 劣化版ですが、とりあえずお肌つるつるポーションは完成しました。


 ただロルフさんが言っている通り、今のところ実験に使ったベニオウの実はルディーン君にしか採取できないので完全に完成したわけではないんですけどね。


 しかし、それでも今まではルディーン君以外作る事ができないと思っていたものができたのですから、とりあえずは大成功と言ったところでしょうか。


 さて、前回の後書きにも書いた通り、大晦日である31日、そして1月3日はお正月という事で更新をお休みさせていただき、次回の更新は1月7日の金曜日となります。


 今年1年、お付き合い頂いてありがとうございました。来年も引き続き転生0を楽しんで頂けたら幸いです。


 それでは皆様、よい御年を。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ほぼ完成めでたい! あとは実の調達問題だけになりますね。 そして新たな登録案件の発覚。 広まればそれをみて閃く人も出るだろうから ルディーン君以外の人が閃いてくれたら・・・。 注目度が分散…
[一言] 更新お疲れ様です! 感想を書くタイミングを逃し続けた末、2年ぶりの感想となってしまいましたが、ずっと読み続けています。 遂にお肌つるつるポーションの廉価版が完成! ルディーン君が初めてこれ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ