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465 ロルフさん、忘れてたんだって


 カテリナさんの紹介が終わったって事で、早速魔道コンロの試運転のためのお菓子作りを始める事になったんだ。


「それで、ルディーン君。一体何を作るつもりなのかな?」


「えっとね、クッキーでもいいんだけど、せっかく新しいコンロを使うんだったらお祝いにもっと豪華なケーキっていうお菓子を作ろうって思ってるんだ」


「ケーキ? 名前が似ているけど、俺たちが手伝うって事は、パンケーキとは違うものなのかな?」


 ノートンさん、ケーキって聞いてさっきのロルフさんとおんなじこと言うんだよね。


 だから僕、ノートンさんにもケーキがどんなのか教えてあげたんだけど、


「なるほど。今話題のスポンジケーキを作るのか」


 そしたらその途中でこんなこと言い出したもんだから、僕、びっくりしちゃったんだ。


「ノートンさん。スポンジケーキ、知ってるの?」


「ああ。信じられないほどふわふわな菓子として女性だけでなく、料理人の間でもどうやって作っているのかと話題に上がってるほどだ」


 このスポンジケーキ、前にアマンダさんのお店のオーナーさんから、これをお店に出してもいい? って聞かれた事があるんだよね。


 その時、このスポンジケーキは僕が考えたわけじゃないから別にいいよって答えといたでしょ?


 そしたらほんとすぐにお店に出したみたいで、今、すっごい人気になっちゃってるんだってさ。


「ああ、それならおら……私も知っているのです。売り出してすぐに大人気になって、予約しないと買えないらしいなのですよ」


「その予約も、数日前にしないとダメらしいな」


 クッキーとかと違ってスポンジケーキはぷぅ~って膨らむし、そのせいで型に入れて焼くもんだから一度にいっぱい作れないでしょ?


 それに他のお菓子も作んないとダメだから、欲しい人がいっぱいいてもそれだけ作る事ができないんだって。


 だからそのせいで最初のうちは欲しい人がみんな買えないからって、お店に開くよりもずっと早い時間から並ぶ人がいっぱい来きちゃったみたいなんだよね。


 でも、そんなに早くから人が並んでたら近くの人は困っちゃうでしょ?


 そんな訳で、今はお店に来た人に何日なら買えますよって書いてあるちっちゃな木の板を渡して、それと引き換えで買えるようにしたそうなんだよ。


「しかしえらく画期的な菓子だなぁだと思ったら、そうか、ルディーン君が出どころだったのか」


 ノートンさんはね、今までに見た事もないこんなお菓子を一体どうやって考え付いたんだろうって、他の料理人さんたちとお話してたんだって。


 でもね、僕が作り方を教えたんだったら納得だって、うんうんって頷いてるんだよね。


「何故、ルディーン君だと納得なのでございます?」


 でもね、カテリナさんはなんでノートンさんが納得してるのか解んないみたい。


 だから何で? って聞いたんだけど、


「ああそれはな、これまでにも何度かこんな事があったからなんだ」


 そしたらノートンさん、これが初めてじゃないからなんだよって教えてあげたんだ。


「何度か?」


「ああ。さっきも話に出たパンケーキ、これもルディーン君が情報元なんだぞ」


 その他にも雲のお菓子を例に挙げながら僕がいろんなお菓子を作ってるんだよって言ったもんだから、カテリナさんはびっくり。


 よくそんなにいろんなのを作れるねって、不思議そうなお顔で僕の方を見ながらそう言ったんだ。



 僕が教えてあげたお菓子のお話が終わったって事で、今度こそお菓子作り開始しようって事になったんだけど、


「さて、それじゃあ早速、スポンジケーキを作るとしますか」


「違うよ。これから作るのはケーキだってば」


 ノートンさんがスポンジケーキを作ろっかなんて言うもんだから、僕は違うよって教えてあげたんだ。


 でもね、それを聞いたノートンさんはよく解んなかったみたい。


「ん? だからスポンジケーキを作るんだろ?」


「そうなんだけど、ケーキは違うもんなの!」


 ノートンさん、さっきケーキのお話が途中でスポンジケーキのお話に変わっちゃったもんだから、僕がスポンジケーキの事をケーキって言ってるんだって思ったみたいなんだよね。


 でも、ケーキはスポンジケーキも使うけど違うもんでしょ?


 だから僕、その違いを教えてあげる事にしたんだ。


「ケーキってのはね、そのスポンジケーキを土台にして生クリームを塗ったり、甘い果物をのっけたりして作るお菓子なんだよ」


「スポンジケーキを土台にするですか!? すっ、凄いお菓子なのです」


 スポンジケーキだけでもみんなおいしいって言ってすっごく売れてるのに、それを材料に使うんだよって聞いたカテリナさんはびっくりしたみたい。


 でもね、ノートンさんはそれとは別の事が気になったみたいで、変なお顔して聞いてきたんだ。


「えっと、甘い果物は解るんだが……生くりーむってのはなんだ?」


「あっ、そっか! 生クリームって、僕が勝手に言ってるだけだっけ」


 この生クリーム、僕がイーノックカウの露店で見つけた時はお店の人がバターの材料って言ってただけで、特に名前はついてなかったみたいなんだよね。


 それなのに、いきなり生クリームって言っても解んないか。


「という事は、俺が知っているものなんだな?」


「うん。生クリームってのはね、牛乳とからとれる、バターを作るのに使うとこの事なんだよ」


 僕は露店のおじさんが言ってた、生クリームの使い方をノートンさんに教えてあげたんだ。


 そしたらそれなら解るってノートンさんが言ったんだけど……あれ? そう言えば生クリームの事、前にお父さんがロルフさんとバーリマンさんに話しちゃったって言ってなかったっけ?


 だから僕、ちょっと離れたとこでこっちを見てたロルフさんとバーリマンさんに、こっち来てって言ったんだよ。


「ねぇ、ロルフさん。前にお父さんが僕に生クリームの事をロルフさんとバーリマンさんに話しちゃったって言ってたんだけど、なんでノートンさんが知らないの?」


「ん? 何故と問われてものぉ……そもそも、生クリームとは何じゃ?」


 でね、ロルフさんになんでノートンさんが知らないの? って聞いてみたんだけど、そしたらなんとロルフさんまで生クリームの事を知らないって言うんだもん。


 だから僕、すっごくびっくりしてバーリマンさんを見たんだ。


 だってもし本当に知らないんだったら、お父さんがウソを言ったって事なんだもん。


 でもね、それを横で聞いてたバーリマンさんは、呆れたようなお顔でロルフさんにこう言ったんだよ。


「伯爵。お忘れですか? 前にカールフェルトさんがお一人で来られた時に、生クリームの事をお聞きしたではありませんか」


「ん? そうじゃったかのぉ」


 バーリマンさんが言うにはね、お父さんはちゃんと生クリームの事を教えてたみたいなんだ。


 でもロルフさんは、その事をすっかり忘れてたみたい。


「そう言えば伯爵、ベーキングパウダーの事もお忘れになっていましたものね。そう考えると、きっと料理の事には興味が無いから忘れてしまっていたのでしょう。ですがこう言えば思い出すのでは? 卵のビネガーソースを誰でも作れるという魔道具、それをルディーン君が持っているという話の流れから話題が出た品の事ですわ」


「おおそう言えば、村ではパンケーキにバターやジャムだけでなく、何やら特別なものを載せて食べておると話しておったような気はするのぉ」


 ロルフさん、自分でお料理しないでしょ?


 それに甘いものよりお酒の方が好きだからなのか、この話を聞いてもお家の人に生クリームを作ってって言わなかったもんだからすっかり忘れてたみたいなんだ。


「なんと、では旦那様は生クリームをご存じだったのですか?」


 でもね、それを聞いたノートンさんがすっごく怒っちゃったんだよね。


 何でかって言うと、今まで僕が作り方を教えてあげたものが全部美味しかったから、それも絶対においしいんだろうなぁって思ったからみたい。


「これまでもルディーン君の発案した菓子や料理は、そのすべてが革新的であり美味であることは旦那様もご存じではありませんか」


「あっ、いや。それは解っておるのじゃが、ルディーン君の親御さんの話ではその生クリームとやらは魔道具が無ければ作るのに卵のビネガーソース並みの労力がいるようでな。それもあって話さずにいるうちに忘れてしもうたのじゃよ」


 卵のビネガーソースって、作れるってだけですごい料理人だって言われるくらい作るのが大変なお料理でしょ?


 だからそんなに大変なら食べなくってもいいかなぁ? って思ったんだよって言われて、ノートンさんはおっきなため息をついたんだよ。


 でもね、その後ロルフさんを見てこう言ったんだ。


「旦那様。そのお話が領……御孫様の耳に入るような事になれば、かなり機嫌を悪くなされると思いますよ」


 ロルフさんのお孫さんはね、おいしいものが大好きなんだって。


 それなのに生クリームの事を知ってて教えてくれなかったって聞いたら、そのお孫さんはきっとすっごく怒っちゃうよってノートンさんは言うんだ。


「そっ、それは……確かにそうじゃのぉ」


 それを聞いたロルフさんはしょんぼり。


 でもね、そんなロルフさんにバーリマンさんは、にっこり笑いながらこう言ったんだよね。


「大丈夫ですわ、伯爵。なにせこれからケーキという、その生クリームを使って作られるとても美味しいお菓子をルディーン君が教えてくれるそうなのですから」


「そっ、そうじゃな。それを持っていけば、我が愛しの孫もきっと喜んでくれる事じゃろう」


 ロルフさんはそう言うとね、胸に手を当てながらすっごくほっとしたお顔をしたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 なんと、まさかまた今回もお菓子作りまで行かなかったとはw


 さて、ロルフさんはベーキングパウダーに引き続き、生クリームの事もすっかり忘れていました。


 その上今回は周りに教える事さえ忘れていたのですから、ノートンさんも怒るはずです。


 なにせ彼の言う通りルディーン君が持ってくる情報は料理に限らず、そのすべてが大事になるものばかりなのですからね。


 実際にアマンダさんのお店が大変な事になってるみたいだしw


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― 新着の感想 ―
[良い点] ルディーン君が出所で知ってる人はみんな納得w どんなケーキにするのか楽しみですね。 [一言] 錬金術関係や権利関係だけでも大変だったから 料理やお菓子にまで気が回らなかったのかな? 仕方な…
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