表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

459/756

452 そう言えば米粒くらいの魔石ってあんまり使わないんだっけ


 スイッチを入れたらちゃんと空気を吸い込んだって事で、お水を汲み上げる魔道具は完成。


 あとはこれを僕んちに持ってって井戸にくっつけてくれる職人さんに渡すだけなんだけど、これを作るお勉強に結構な時間がかかっちゃったでしょ?


 だから僕んちに持ってく前に、お昼ご飯を食べる事になったんだ。


「おや、魔道具の勉強は終わったのかな?」


「はい。ですからこれをルディーン君の館へ運ぶ前に、お昼を取ろうと思いまして。ところでお二方はもうお済みですか?」


「いや、まだじゃよ」


 ロルフさんとお爺さん司祭様はね、僕たちのお勉強が済むまでお昼ご飯を食べずに待っててくれたんだって。


 だから僕たちはみんなでいっしょに、お昼ご飯を食べる事にしたんだ。



 ご飯を食べてる時にね、僕はロルフさんやお爺さん司祭様にどんな事を教えてもらったのかをお話してあげたんだよ。


 そしたら二人とも、にこにこしながらそれを聞いてくれたんだ。


「なるほど、そんな事を習ったのじゃな」


「うん。あとね、今日は風の魔石の魔道回路記号を教えてもらったけど、今度は別の属性魔石の記号も教えてくれるんだって」


 こんな風にいろんなお話をしながらご飯を食べてたんだけど、そしたら僕、その途中である事を思い出したんだ。


「そう言えば僕が作った魔道オーブン、あれも火の魔石の回路記号を使ったらもっと簡単に作れたのかなぁ?」


 僕がお家で作った魔道オーブン、お店屋さんが使ってるのみたいにおっきなのが作れないからって、米粒くらいの魔石をいっぱい並べた筒ん中に風を通す事でかまどの中があっつくなるようになってるんだよね。


 でもさ、もしかしたら僕の知らない魔道回路記号でもっと簡単におんなじ事ができるかもしれないでしょ?


 だから僕、バーリマンさんに聞いてみる事にしたんだ。


「ねぇ、バーリマンさん。ちょっと聞いていい?」


「いいわよ。何が聞きたいのかしら?」


「あのね、僕が作った魔道オーブンなんだけど、これをもっと簡単に作れる魔道回路図ってあるのかなぁって思ったんだ」


「ルディーン君が作った魔道オーブン?」


 僕はね、普通の魔道オーブンだとすっごくおっきなものになっちゃうから、お家でも使えるくらいの大きさにするために、米粒くらいのちっちゃな魔石をいっぱい使って作ったんだよって教えてあげたんだ。


「これだと活性化させる魔石の数を変えるだけで温度が変わるでしょ? だから抵抗の魔道回路図を使った時と違って温度によって使う魔道リキッドの量が変わるんだよ」


「なるほど。温めた空気をまた別の魔石でさらに温めているわけね」


「うん。でもさ、もしかしたらこんな事しなくっても、僕の知らない魔道回路記号を使えばもっと簡単にできるんじゃないかなぁって思ったんだ」


 僕、今まで属性魔石に使う魔道回路記号のお勉強をしてなかったんだよね。


 だからどんなのがあるか知らないけど、バーリマンさんだったらいろんなのを知ってるはずだもん。


 もっと簡単におんなじ事ができるのがあったら、きっと教えてくれるよねって思ったんだよ。


 でもね、お話を聞いたバーリマンさんは、何でか知らないけどう~んって考えこんじゃったんだ。


「もしかして、バーリマンさんでも解んないの?」


「ああ、そういう訳じゃなくて……とりあえずさっきの質問だけど、ルディーン君が考えたものと同じような効果を出す魔道回路記号は無いと思うわよ」


 そっか、バーリマンさんが無いって言うんだったらきっと無いんだね。


 でもさ、だったらなんでさっき、バーリマンさんはう~んって考えこんじゃったんだろう?


 そう思った僕はその事を聞いてみようと思ったんだけど、そしたらその前にロルフさんがこんな事を言い出したんだよね。


「まったく。この子は本当に突拍子もない事を思いつくのぉ」


「突拍子もない……って、それなに?」


「ああ、ちと難しい言い回しじゃったか。そうじゃのう、普通では考え付かないというような意味じゃな」


 ロルフさんはそう言ってね、僕が考えたちっちゃな火の魔石を並べてオーブンの中を温めるなんて普通は考え付かないんだよって教えてくれたんだ。


「そうなの?」


「うむ。属性魔石というものはとても高価じゃからのぉ。魔道具には通常一つくらいしか使わぬ。大型の物を作る時は稀に複数使う事もあるやもしれぬが、それでも君が作った魔道オーブンのように数多くの魔石を使おうなどと思いつく者はまずおらぬよ」


 そう言えば属性付きの魔石って、持ってる魔物があんまりいないから昔はとってもめずらしかったんだよね。


 だから前はとっても高かったって話だし、今はその属性の魔法が使える錬金術師さんだったら作れるようになったけど、それでも作ってもらうのにお金がいっぱいいるんだよって前に教えてもらったっけ。


 僕、自分で作れちゃうもんだから、その事をすっかり忘れてたんだ。


 それにね、ロルフさんが言うにはもう一個、普通じゃない事があるんだって。


「なんか変なの?」


「変と言うか……前に話した事は無かったかのぉ? 君が使ったという大きさの魔石は内包魔力が少なすぎて、普通は属性魔石に変換するどころか魔道具に使う事さえまずないものなのじゃよ」


 そう言えば米粒くらいの魔石って、魔道具にするにはちっちゃすぎるから普通は魔道リキッドの材料にしちゃうんだっけ。


 ロルフさんはね、そんなのを魔道具に使ったって聞いてびっくりしたんだってさ。


「しかし、この発想自体は面白いのぉ」


「はい。流石に市販する魔道具を作るためにそんな小さな魔石をわざわざ属性変換させて使おうとは思いませんが、この発想から新たな魔道具が生まれる可能性はありそうですわね」


 ロルフさんとバーリマンさんはね、すぐには思いつかないけどおんなじ方法でなんか別の魔道具が作れるようになるんじゃないかなぁって言うんだよ。


 だからさ、この方法も一応魔道具大全に載せられないか聞いてみるって言うんだよね。


「流石にこれまでルディーン君が見つけてきた物たちのように、これだけで一つの功績とされる事は無いじゃろう。しかし魔道具の歴史の小さな分岐点になりそうな発見ではあるからのぉ」


「そうですわね。これを知っている事で生まれる魔道具も出てくるかもしれませんから」


 そう言って盛り上がるロルフさんとバーリマンさん。


 でもね、僕はその時、全然違う事を考えてたんだ。



 魔道オーブンを作った時にね、その実験だって米粒くらいの魔石を火の魔石に属性変換して、それをまぁるい筒の中にぶら下げたもんを作った事があるんだよね。


 そしたらさ、それを見たお母さんが、髪の毛を乾かす魔道具を作ったんだねって勘違いしちゃったんだ。


 その時お母さんが言ってたんだけど、僕たちが泊まってる『若葉の風亭』のお風呂にも髪の毛を乾かす魔道具があったんだって。


 でもそれは冷たい風が出るだけだったから、そのあったかい風が出てくる筒を見て、宿屋さんのお風呂で使いながらこんなのが欲しいなぁって思ってたんだよって教えてくれたんだ。


「そっかぁ。普通は米粒くらいの魔石を魔道具なんかに使わないから、だぁれもドライヤーを作んなかったんだね」


 普通の魔道具に使うような魔石を火の魔石に属性変換して使ったりしたら出てくる風が熱くなりすぎちゃって、きっと髪の毛が燃えちゃったりちりちりになっちゃったりしちゃうもん。


 だから簡単に作れるはずなのに、だぁれも思いつかなぁったのか。


 そう思った僕は、一人でうんうんって頷いてたんだよね。


 でもそしたら、それに気が付いたバーリマンさんがどうしたの? って。


 だから僕、魔道ドライヤーの事を教えてあげたんだけど、


「えっ! 髪の毛を乾かすための、暖かい風が出てくる魔道具を作ったですって!?」


 そしたら急におっきな声出すもんだから、僕だけじゃなくって、近くにいたロルフさんやお爺さん司祭様までびっくりしちゃったんだよね。


「ギルマスよ。一体何があったのじゃ? いきなりそのような大きな声を出して」


「聞いてください、伯爵。ルディーン君がいつの間にやらまた、画期的な魔道具を発明していたそうですわ」


 バーリマンさんが言うにはね、今みたいに暑い時はいいんだけど、冬になるとせっかくお風呂に入ってあったまったのに、髪の毛を乾かすだけで寒くなっちゃう事がよくあるんだって。


「ですから私の館では、髪を乾かす魔道具は暖炉のある部屋に置いてあるのです。しかしこの魔道具があれば寒い中を濡れた髪のまま移動しなくても、その場で乾かす事ができますもの。まさに夢の魔道具ですわ」


 頭におっきな布を巻いて、寒い中を歩いて別のお部屋まで行くのはとっても大変なんだよってバーリマンさんは言うんだよね。


 それにさ、こないだ僕が作った氷の魔石を使う魔道クーラーや簡易版魔道冷蔵庫と違って、これは錬金術師なら誰でも作れる火の魔石を使うでしょ? 


 その上、使う魔石は取れる魔物がいっぱいいる米粒くらいのちっちゃな魔石なんだもん。


 だから作り方さえ教えたら明日からでも量産できるわねって、バーリマンさんは大興奮。


「こうしてはいられません。伯爵、昼食が済み次第、商業ギルドに参りましょう」


 そう言って今にも走りだしそうな感じだったんだけど、それを見たロルフさんはちょっとあきれたようにこう言ったんだよね。


「ギルマスよ、ちと落ち着きなさい。昼食後は水を汲み上げる魔道具を持ってルディーン君の館に行く事になっておるではないか」


「あっ!」


「それにな、特許登録をするのであれば詳しい作り方を説明せねばならぬではないか。ならばまずはルディーン君に詳しい作り方を尋ね、商業ギルドにはそれから向かうべきであろう?」


「はい。確かにおっしゃる通りです」


 困った顔して叱るロルフさんと、しょぼんとしちゃうバーリマンさん。


 それを見た僕はね、なんだかすっごく可笑しくなっちゃって、ひとりでけらけら笑ってたんだ。


 読んで頂いてありがとうございます。


 ドライヤーと聞いてバーリマンさん大暴走w


 でも実際、冬場に脱衣場で冷たい風だけで長い髪を乾かしてたら、下手をすると風邪をひいてしまうかもしれませんからね。


 そう考えると夢の魔道具と言うのも、あながち大げさではないかもしれません。


 バーリマンさんのように貴族の館なら風呂場の近くに暖かい部屋があるかもしれませんが、若葉の風亭のような宿だとどうしても脱衣場で髪を乾かす必要がありますから。


 さて、今週末、また突然土日出張が決まりました。


 そして金曜日はその準備で書く時間が無いんですよね。


 と言う訳ですみませんが、月曜日のお休みして次回の更新は来週の金曜日にさせていただきます。 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ロルフさんが米粒大と言う言葉を使った回はこちらでした。
[良い点] 小さい魔石の利用法が広まれば、誰かが何か作ってくれるw きっかけって大事ですからね~。 [一言] 出張、頑張ってください!
[一言] (ドライヤーは今のところ、) 特許になりそうだが、 利益にはあんまりならなそうだなぁ。 ・魔石(米粒)の価格が低そうだし、 ・ドライヤーも需要が中規模の宿屋ぐらいで、必要数を満たしたら生…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ