404 すっごい魔法でやっつけちゃうもんね
「あっ、いた!」
森の中を走ってくと、前の方に緑っぽい灰色のちっちゃな人型の魔物が10匹くらいいるのが見えたんだ。
えっと、人型って事は亜人って言うタイプの魔物だよね?
お父さんが教えてくれた亜人、確かコボルトってのは犬みたいな顔してるって言ってたから、あれはゴブリンってやつなのかなぁ。
そいつらはね、おっきな木を背にして剣を構えてるお姉さんの周りをギャアギャア言いながら囲んでるんだ。
あれは多分お姉さんの方が強いから、ちょっと離れたとこから見てるんだろうけど……でも、あれ? 確か冒険者さんの反応って3人だったよね?
「もしかして、僕が来る前にやられちゃったの!?」
そう思った僕は一瞬すっごくびっくりしたんだけど、よく見たら剣を構えてるお姉さんの後ろに二人のお姉さんが座り込んだまま剣を周りのゴブリンに向かって構えてるのが見えたんだ。
「よかった。ちゃんと間に合ったみたい」
死んじゃってたらどうしようって思ったけど、まだ大丈夫だったみたいだから一安心。
でもゴブリンに囲まれてるのに座ったまんまなのはちょっと変でしょ?
だからきっと、後ろの二人はどっかケガをしてるんじゃないかな。
って事はさ、早く助けないと大変な事になっちゃうかも?
そうは思ったんだけど、でもゴブリンはいっぱいいるからこのまんま突っ込んでったら流石にちょっと危ないよね。
「弱っちい魔物みたいだけど、僕とおんなじくらいの大きさだもん。遠くから魔法でやっつけよっと」
僕はステータスの魔法のページを開くと、そこの中からマジックミサイルを指定したんだ。
何でかって言うとね、それは一度に撃てる数を増やすため。
ドラゴン&マジック・オンラインの魔法の中には、レベルが上がると便利になるものが何個かあるんだよ。
でね、マジックミサイルもその一つで、この魔法の場合は撃ち出す場所を変えたり、一度に撃てる数を増やす事ができるんだ。
そしてその数は、覚えるレベルから5つ上がるたびに一個ずつ増えてくんだよね。
「今の僕は12レベルだから、最大の3発まで増やしてっと」
射出数がちゃんと3になってるのを確認した僕は、体に魔力を循環させてから、ちっちゃな声でマジックミサイルって唱える。
そしたら頭の上んとこに3つの光の弾が浮かんだから、僕は間違って剣を構えてるお姉さんに当たっちゃわないようにってちょっとずれてるとこにいるゴブリンたちをめがけて発射したんだ。
「やった! 三匹いっぺんにやっつけれた!」
ゴブリンたちはみんな剣を構えてるお姉さんの方を見てたでしょ?
だからまっすぐ飛んでったマジックミサイルは、よけられるなんて事もなく3匹のゴブリンに命中!
僕のマジックミサイルって、とっても強いブラウンボアにだって当たればおっきなケガをさせる事ができるんだよ。
そんなのが当たったもんだから、弱っちい魔物のゴブリンはその一発だけで吹っ飛んじゃった。
でもさ、これでやっつけられたのはまだ3匹だけなんだよね。
「すぐにこっち来るだろうから、次の魔法を準備しなきゃ」
僕、レベルが上がっていろんな攻撃魔法を覚えたんだけど、そう言うのは威力がありすぎて狩りで使うと全部素材をダメにしちゃうからいつもは使えないんだ。
でもゴブリンは亜人だから、解体して素材にするなんて事ないでしょ?
だから今日は、安心して使う事ができるんだ。
「僕に向かってきたら、範囲魔法のアクアスプラッシュで一気にやっつけちゃうもんね」
そう思って僕はふんすと気合を入れてたんだけど……あれ? ゴブリンたち、何でか知らないけど全然こっちに寄ってこないや。
「ここにいるの、ゴブリンたちからも見えてるよね?」
僕ね、冒険者さんたちを助けるために、わざわざ周りからよく見える位置を選んでマジックミサイルを撃ったんだよ。
だから絶対ゴブリンたちからも、僕が見えてるはずなんだけど……。
なのにさ、何でか知らないけどゴブリンたちはこっちに来ないで、近くに生えてる木の陰に隠れてこっちから見えないようにするんだもん。
もう! これじゃあすっごい魔法が使えないじゃないか!
「いいもん。僕、隠れてたってやっつけられるんだからね」
そう思った僕は、マジックミサイルの設定を複数攻撃から射出位置設定に変更して、
「マジックミサイル」
小さな声で力ある言葉を唱えてから、ゴブリンの一匹が隠れてる木の向こうっ側に発射位置を設定したんだ。
木の後ろに隠れてたって、こうすればマジックミサイルで攻撃できるからね。
「クスクス。これを撃ったら、隠れてても意味ないって解って僕の方に走ってくるよね」
魔法を撃ったらすぐに魔力循環を始めなきゃって思いながら、僕はマジックミサイルを発射!
そしたら無事、そこにいたゴブリンをやっつける事ができたんだけど。
「あれ、なんでだろう? 冒険者さんたちのそばにいるのまで、隠れちゃった」
マジックミサイルは狙ったとこにちゃんと飛んでく魔法なんだけど、もしゴブリンたちが飛んでくるのを見て直前でよけたりしたら外れちゃうかもしれないでしょ?
だから僕、間違ってお姉さんたちに当たっちゃわないようにって、そっちの方にいるゴブリンは狙わないようにしてたんだよね。
なのに何でか知らないけど、そんなゴブリンたちまで木の陰に隠れてこっちを見始めちゃったもんだから、僕はなんでかなぁって頭をこてんって倒したんだ。
だってさ、そんな事したら……。
「このぉー!」
「ああ、やっぱり」
冒険者のお姉さんは、目の前にいるゴブリンにいつでも斬りかかれるように剣を力いっぱい握ってたでしょ?
なのにそれを無視して僕から見えないとこに逃げようとしたもんだから、そのゴブリンはお姉さんに後ろから斬られて簡単にやっつけられちゃた。
あっでも、これで今度こそゴブリンたちは木の陰に隠れてられなくなっちゃったって事か。
「だったらきっと、何匹かはこっちに向かってくるはずだよね」
だから僕、今度こそすっごい魔法でみんなやっつけるんだ! って思ったんだよ。
そう、今度こそって思ってたんだけど……。
「ああっ、何で逃げてっちゃうの!」
ゴブリンたちはね、僕とも冒険者のお姉さんたちとも違う方向に向かってバラバラに逃げてっちゃった。
もう! これじゃあ魔法が撃てないじゃないか!
読んで頂いてありがとうございます。
急に予定が入ってしまったために、書く時間が無くて今回はちょっと短め。
本当はもうちょっと先まで書くつもりだったんですけどね。
さてルディーン君ですが、今現在賢者が12レベルなので結構強い魔法が使えたりします。
でも倒せば素材をドロップするゲームと違ってここは現実世界、そんな魔法で攻撃すれば皮も肉もボロボロになってしまうので使う事ができないんですよ。
もう少しレベルが上がると氷系の魔法が使えるようになるのですが、それでも使ったら皮は大丈夫でも肉はやはり味が落ちてしまいます。
なのでルディーン君の言うすっごい魔法は亜人くらいにしか使えないんですけど……獣じゃないんだからそりゃ逃げますよね。一度の攻撃で仲間が三匹も一度にやられたらw




